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国際ルールも崩壊なのか?米トランプ政権によるベネズエラ攻撃の衝撃

国際ルールも崩壊なのか?米トランプ政権によるベネズエラ攻撃の衝撃
イメージ画像:「ホワイトハウス」(写真ACより)

遠く離れた日本にいても、正月気分が吹き飛ぶようなニュースだった。米国が南米のベネズエラで大がかりな軍事作戦を展開し、大統領を拘束した。世界に衝撃をもたらした出来事だった。

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他国のトップを強制連行

それは深夜の“電撃作戦”だった。トランプ大統領の指示を受け、現地時間の2026年(令和8年)1月2日から3日にかけて、150以上の米軍機などが出撃して、ベネズエラの首都カラカスを中心に攻撃を行った。ニコラス・マドゥロ大統領夫妻を滞在先から拘束、まず軍艦によって米国内に移送した上、空路でニューヨークに移し、拘置所に収容した。米国はすでに、マドゥロ大統領をコカインなど麻薬の密輸などの罪で起訴していたが、国家が軍隊を使って、他国の政権トップを“強制的に連行する”という事態に、驚きを禁じ得ない。

「ベネズエラ」という国は?

イメージ画像:「ベネズエラ周辺の地図」(写真ACより)

ベネズエラは、正式名称を「ベネズエラ・ボリバル共和国」と言う。カリブ海をはさんで南アメリカ大陸の最北端に位置する。打者としても監督としても、日本のプロ野球で活躍した“ラミちゃん”こと、アレックス・ラミレスさんは、ベネズエラのカラカス出身である。外務省の資料によると、国の面積は日本の約2.4倍で、人口およそ2,600万人(2025年4月現在)。19世紀初めにスペインの支配から独立した国である。

ノーベル平和賞にも影響

マドゥロ大統領は2013年に大統領に就任した。しかし、政権が長くなると共に、極端なインフレなど国民は物価高に苦しみ、リーダーへの批判は根強い。喫緊の2024年の大統領選挙は、その透明性に国際社会からも批判が出ていて、日本政府も情報公開を求めている立場だ。昨年秋にノーベル平和賞に選ばれたマリア・コリナ・マチャドさんが、受賞式のために国を“脱出”したニュースは記憶に新しい。

よみがえる「モンロー主義」

そんな政情不安な国であるベネズエラだが、他国から軍隊がやって来て、リーダーを拘束するという事態は、やはり一線を大きく超えたと言わざるを得ない。今回の軍事作戦を受けて、トランプ大統領は「ドンロー主義」なる言葉を使った。これは「モンロー主義」と、大統領自らのファーストネーム「ドナルド」を合わせたものだ。

「モンロー主義」とは、19世紀の初めに、第5代米国大統領であったジェームズ・モンローが宣言したもので、米国がヨーロッパの紛争に干渉しない代わりに、ヨーロッパも南北アメリカ大陸の問題に立ち入らないという“外交方針”である。今回の事態で、200年前の歴史がよみがえってきたことも重い。

攻撃の背景にある「石油」

攻撃後、トランプ大統領の口から「石油」という言葉が出た。「麻薬テロ」を防ぐという大義名分と共に、石油利権というもうひとつの大きな目的が背景にあるようだ。ベネズエラは、原油の埋蔵量が世界一とされる。しかし、この原油を十分に生かし切れていない。今回、トランプ大統領は同時に「運営」という言葉も使って、ベネズエラにある石油資源を、米国がマネジメントしていく考えも明らかにした。「買いたい国には売る」とも語った。“ビジネスマン”ドナルド・トランプの横顔が垣間見られた瞬間だった。

米国を批判できない国々

米国がどんな理由を主張するにせよ、国際秩序は雲散霧消した。「武力行使の禁止」を明文化した国連憲章に照らし合わせても、今回の軍事作戦は、国連憲章に背いた行為だろう。しかし、ここまでの国際法違反を目の当たりにしても、ロシアや中国の他には米国に対する批判の声は高まっていない。

国連またも機能せず

国連のグテーレス事務総長も「深い憂慮」を表明したものの、そこから国連としてどう踏み込んでいくのか、大国アメリカを前に安全保障理事会も歯切れが悪い。G7に参加するヨーロッパ各国、ましてや日本政府からも表向きの「批判」はない。米国高官が言ったように、力を持つものが正義なのか。今回のベネズエラ攻撃は、世界史においても、将来に禍根を残す前例を作ってしまった。

ロシアによるウクライナ侵攻からまもなく4年。一方、中国は台湾周辺での軍事圧力を強めている。ベネズエラに軍事介入した米国に、ロシアや中国を批判することは、もはやできない。いや、トランプというリーダーなら、そんなことはおかまいなしなのだろうか。ベネズエラという国も、そして国際社会も、次なる歩みが見通せない、混沌とした新年となった。

【東西南北論説風(658)  by CBCマガジン専属ライター・北辻利寿】

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