300万ページの衝撃「エプスタイン文書」公開で波紋拡大
少女への性的虐待や買春などの罪で起訴され、2019年に拘置所で死亡したアメリカの富豪、ジェフリー・エプスタイン氏。このほど公開された捜査資料、いわゆる「エプスタイン文書」に多くの有名人の名前が含まれていたことから、世界的なスキャンダルとなっています。2月16日放送の『CBCラジオ #プラス!』では、CBC論説室の石塚元章特別解説委員が、エプスタイン氏の人物像から文書公開の背景、各国への影響まで解説しました。
関連リンク
この記事をradiko(ラジコ)で聴く謎に包まれた経歴
エプスタイン文書には海外の要人をはじめ、多くの有名人の名前が登場しています。ただし、名前が出てきただけで問題があるわけではないと石塚は注意を促します。
エプスタイン氏は島を所有し、各地に別荘を持ち、パーティーを開いて有名人を集めるような大富豪でした。しかし、なぜそれほどの大金持ちになったのかは知られていません。
元々は労働者階級の出身で、家が裕福だったわけではありません。一流の高校で数学を教えていたものの、正式な教員免許を持っていなかったともいわれています。
その後、教え子の親の紹介などをきっかけに大手の投資銀行に入り、優良顧客を任されるようになりました。そこから富裕層との交流が広がっていったとみられますが、なぜ若くして重要な顧客を担当できたのかなど、いたるところに謎が残る人物です。
少女虐待の疑惑と謎の死
エプスタイン氏が問題視されているのは、少女への性的虐待の疑惑です。別荘や自宅の近所で、裕福でない家庭の少女たちに金銭を渡して言葉巧みに誘い込み、よからぬことをしていたのではないかと指摘されています。
さらに、自分の交友関係にある人々にも少女を斡旋していた疑いも浮上しました。かつて被害に遭ったという女性たちが次々と証言を始めたことで事件が表面化し、逮捕・起訴に至ります。
最初の逮捕は2008年頃。このときはアメリカの司法取引制度を利用して1つの罪を認め、比較的早期に釈放されました。
しかし、その際に取引に応じた検察側の人間がのちに政権で要職に就いていたことから、取引自体に裏があったのではないかという疑念も残ります。
結局、2018年から2019年にかけて新たな被害が明らかになり、再び逮捕されて裁判を待つ身となりましたが、ニューヨークの拘置所で命を落としました。
公式には自殺とされていますが、有名人のスキャンダルを数多く握っていたことから、口封じのために殺害されたのではないかという見方も根強く残っています。
膨大な捜査資料が公開
エプスタイン氏は何度も捜査の対象となってきたため、FBIや警察が長年にわたって集めた証拠や捜査資料は膨大な量に及びました。通常は公開されるものではありませんが、政治家や有名人が関わっているのではないかという声が高まり、アメリカ国内で「資料を公開すべきだ」という動きが強まりました。
公開をめぐっては、資料が出ると困る政治家と、出た方が有利になる政治家の間で駆け引きもあったといいます。当初ドナルド・トランプ米大統領は署名を拒んでいましたが、議会で公開法案が可決されると署名に応じました。
2025年12月頃から順次公開が始まり、先月には動画や写真を含む300万ページ以上の資料が一気に公開されました。こうした膨大な捜査資料をまとめて「エプスタイン文書(エプスタインファイル)」と呼んでいます。
エプスタイン氏の別荘や島には隠しカメラが多数設置されていたとされ、招いた客の問題行為を撮影して脅迫の材料にしていたのではないかという疑惑も出ています。ただしこれもあくまで「疑惑」の段階です。
米政権にも飛び火
文書にはトランプ大統領や民主党のビル・クリントン元大統領の名前や写真が含まれており、クリントン元大統領はエプスタイン氏の島に何度か訪れていたとされています。
石塚「ただパーティーに行っただけなら何も問題ないわけですよ。例えば少女買春みたいなことに関わっていたかもしれないし、エプスタイン氏のために政治的に便宜をはかっていたかもしれない。そこはわからない」
クリントン元大統領は今月末に議会で証言する見通しだといいます。
特に大きな問題になっているのがハワード・ラトニック商務長官です。ラトニック氏はエプスタイン氏と2005年に会ったが「変なやつだと思った」として、それ以後は会っていないと説明してきました。
ところが文書が公開されると、2005年以降もエプスタイン氏と会っていた記録が次々と判明。少なくとも2012年に島を訪れて一緒に食事をしていたことが明らかになり、ラトニック氏は虚偽だったことを認めました。嘘をついていた人物が閣僚でいいのかという批判が高まり、辞任を求める圧力にさらされています。
この問題は日本にとっても無関係ではありません。ラトニック氏は日米貿易交渉で赤澤亮正経済産業大臣の交渉相手を務めている人物で、交代すれば日本側にも影響が及ぶ可能性があります。
英王室にまで及ぶ波紋
アメリカ以上に揺れているのがイギリスです。チャールズ国王の弟であるアンドルー元王子は、以前から女性関係の評判がよくない人物でした。エプスタイン氏とも非常に親しく、島にも何度も訪れていたとされています。
こうした関係が明るみに出たことで全ての称号と勲章を剥奪され、現在は「元王子」という立場になりました。公開された資料からは、イギリス政府の極秘情報をエプスタイン氏に漏らしていたのではないかという疑惑も浮上し、王室スキャンダルに発展しています。
イギリスではほかにも、前の駐米大使だった人物の下着姿の写真が資料に含まれていたことが問題になっています。この人物をキア・スターマー首相が重用していたことから、「知っていて任命したのではないか」という任命責任を問う政治的圧力が強まっています。
経済界の著名人の名前も出てきており、波紋は世界中に広がっています。
政治利用の懸念
当初、エプスタイン文書の公開はトランプ政権にとって不利になるとみられていましたが、実際に公開が進むと、民主党関係者やいわゆるエリート層の資料も多数含まれていることが判明しました。
現在は、かつてエリートとして政治を仕切っていた人々が実は悪事を働いていたのではないかという文脈で、ポピュリズム的な立場の人々やヨーロッパの極右政党などがこの文書を利用する傾向が出てきていると石塚は指摘します。
石塚「メディアが一生懸命、調査報道的に調べているけど、最終的に証明できないものもきっといっぱいある。今、政治的に利用しようとする人たちがすごく多いので、そこはちゃんと冷静に見ていかなきゃいけない」
興味深い資料が続々と公開されていることは間違いないものの、未確定の情報を鵜呑みにせず冷静に見極める姿勢が重要だと石塚は強調しました。
(minto)
番組紹介
読んで聴く、新しい習慣。番組内容を編集した記事からラジオ番組を聴いていただける”RadiChubu”。名古屋を拠点とするCBCラジオの番組と連動した、中部地方ならではの記事を配信する情報サイトです。



