沖縄で参戦サザン熱きライブ!琉球の踊りに染まった『神の島遥か国』【アリーナ編】

公式ファンクラブのチケット抽選で当選したのは、暮らしている名古屋ではなく沖縄だった。サザンオールスターズに会いに春の沖縄へ飛んだ。2025年(令和7年)の年明けからスタートした6年ぶりの全国ツアーは、各地のアリーナから始まり、後半は5大ドームへと展開された。ツアー中盤の3月14日、沖縄アリーナでのステージに“参戦”した。
10年ぶりの沖縄ライブ

沖縄でのライブは「おいしい葡萄の旅」ツアーから、実に10年ぶりだった。その時も沖縄に駆けつけ、宜野湾市にある沖縄コンベンションセンターの会場にいたことを、懐かしく思い出す。サザンとの縁、同時に沖縄との縁に感慨深く浸りながら、今回の会場である沖縄アリーナへ。前夜からの雨も上がり、3月の太陽が蒸し暑さを運ぶ。まるでサザンの来沖を祝うかのように、このアリーナを本拠地とする琉球ゴールデンキングスが、バスケットボールの天皇杯を制した。まさにその同じ日に、ステージが幕を開けた。
『逢いたさ見たさ 病める My Mind』で開演
「生まれ故郷の沖縄に帰ってきました~!」。毎回恒例となった桑田佳祐さんの“ご当地挨拶”。注目の1曲目は今回も予想が当たらなかった。何と『逢いたさ見たさ 病める My Mind』だった。1982年(昭和57年)発売のアルバム『NUDE MAN』からの選曲。筆者はこの年に学生生活を終えて、社会人として歩み出した。歌詞を味わいながら、究極のラブソングに酔いしれて、自らの歩んできた日々をちょっぴり懐かしむ。サザンの歌にはそんな力がある。だからこそ、多くのファンが年を重ねても愛し続ける。
『ジャンヌ・ダルクによろしく』を弾く
公式ファンクラブ会報『代官山通信』によると、今回のライブツアーは16作目のオリジナルアルバム発売もあって、新曲と歴史ある曲とのセットリスト選びには、相当頭を悩ませたとのことだった。2曲目に2024年(令和6年)のパリ五輪に合わせての新曲『ジャンヌ・ダルクによろしく』が続いたことからも、新旧おり交ぜてのステージであることを予感させる。この曲では、早くも桑田さんのギターテクニックが満開だ。
『ラチエン通りのシスター』の郷愁
3曲目からの序盤は懐かしい歌が続く。『せつない胸に風が吹いてた』『愛する女性とのすれ違い』『海』と、桑田さんのロマンチックな歌詞に酔った後に『ラチエン通りのシスター』が来た!デビュー翌年の2作目のアルバム『10ナンバーズ・からっと』の収録曲である。小粋な歌詞に、優しいメロディーライン。スクリーンには茅ケ崎にあるラチエン通りの風景が映し出されて、サザンが歩んできた歴史を、聴く人の心に映し出す。
『別れ話は最後に』に酔う
懐かしい曲の極めつきは、生ギターによるアコースティックコーナーで歌われた『別れ話は最後に』だった。1978年(昭和53年)のデビューアルバム『熱い胸さわぎ』で『勝手にシンドバッド』に続く2番目に収録されたラブソングである。原曲よりも少しスローに、噛みしめて語りかけるような歌声に酔う。今回のステージは、出会いや別れ、そして愛を歌った曲が目立つことに気づく。それが新曲の『桜、ひらり』へ繋がっていくのだろうか。
『桜、ひらり』優しきメッセージ
デビュー47年目、古希前後のメンバーにしてのオリジナルアルバム発表には拍手を送るしかない。翌週に発売される『THANK YOU SO MUCH』と名づけられた16作目のアルバムから、次々と新曲も披露された。『桜、ひらり』は、能登半島地震の被災地へ思いを馳せて、桑田さんが作った新曲である。悲しい歌詞、しかしそこには愛があふれている。「あれからしばらくは生まれたこの場所が嫌いになったよ」と綴る。今回のツアーは、震災のあった石川県から始まった。そこにサザンの力強いエールがある。そして同時に、この新アルバム、そして、このツアーの温かい心がある。
『神の島遥か国』で踊る
盛り上がり続ける沖縄アリーナ、中盤の最高潮は『神の島遥か国』だった。沖縄を舞台にしたこの歌は、サザンメンバー自身も大好きなのか、これまでもかなりの頻度でセットリストに登場してきた。オリオンビールはじめ、沖縄ゆかりの固有名詞が続々と飛び出す。さらに、サビの部分では、両手を上げて前後左右に揺らす振り付けを、会場一体となって楽しむ。沖縄民謡に合わせての踊り「カチャーシー」なのだが、やはり本場は違う。沖縄アリーナ全体に広がる「カチャーシー」は、両手の動きやリズム感なども生き生きとしていて、歌っている桑田さんもノリノリだった。その後に披露されたジョン・レノン『イマジン(Imagine)』の替え歌タイトルにもなった“ウチナーpeople”のパワー炸裂だった。
『希望の轍』いつまでも続く

クライマックスは、今回も怒涛のラインナップだった。『LOVE AFFAIR〜秘密のデート』『マチルダBABY』『ミス・ブランニュー・デイ (MISS BRAND-NEW DAY)』そして『マンピーのG★SPOT』と続き、会場の興奮は最高潮に到達した。これがサザンだ、そして、これがバンドの歴史なのだと、ステージ上からのパワーが半端ではない。
アンコールの2曲目『希望の轍』の時に、メンバー5人の写真がステージバックのスクリーンに映し出される。思わず目頭が熱くなる。学生バンドとして歩み始めて、今や「国民的」と称されるロックバンドになったサザンだが、その原点は今も変わらないことを確信した。それは歌を愛する心、人に対する優しさなのだ。そして、その“真心”を、世代を越えて大勢のファンが愛しているのだろう。
『THANK YOU SO MUCH!!』と名づけられた全国ツアーは、この後、全国5大ドームツアーへと続いていく。沖縄アリーナを出た時は、再び雨が降り始めていた。歩き始めると、彼方にある北谷町の港から週末恒例の花火が打ち上がるのを見た。サザン、10年ぶりの沖縄ライブに「本当にありがとう(THANK YOU SO MUCH)」と語っているように。
※「サザンが全国ツアー完走!“万華鏡のような”セットリストに酔った夜【ドーム編】」も合わせてお読み下さい。
【東西南北論説風(585) by CBCマガジン専属ライター・北辻利寿】