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サザンが全国ツアー完走!“万華鏡のような”セットリストに酔った夜【ドーム編】

サザンが全国ツアー完走!“万華鏡のような”セットリストに酔った夜【ドーム編】
「サザンオールスターズ全国ツアー・名古屋公演」:筆者撮影

今や“国民的”という肩書きに誰もが納得するバンド、サザンオールスターズ6年ぶりの全国ツアーが東京ドームで大団円を迎えた。能登半島地震で被災した石川県から始まり、2025年(令和7年)1月から5月まで全国13か所26公演を駆け抜けた。そんなステージの灼熱をふり返る。

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過去を凌駕する盛り上がり

名古屋会場のバンテリンドームは、開演前から異様とも言える“熱”に包まれていた。4月23日の水曜日、平日にもかかわらず、ドーム北側のグッズ売り場は開演前から大変な混雑だった。すでに正午頃にはドーム半周ほどのファンの列ができたという。今回のツアーは、過去と比べ物にならないほどの、異様とも言える盛り上がりになっている。

前夜からの雨もお昼前には上がり、4月には不似合いなほどの蒸し暑さが、サザンを名古屋に迎えた熱い空気感を倍加させているようだ。3月に沖縄アリーナでも“参戦”したが、広いドーム球場でのライブはまた違った魅力がある。開演と共に、桑田佳祐さんらメンバーをステージに迎えた時の歓声とどよめきは、ドーム全体を揺れ動かした。

懐かしい名曲に感涙

ライブ注目の1曲目は『逢いたさ見たさ 病める My Mind』。1982年(昭和57年)発売のアルバム『NUDE MAN』からの選曲だった。2曲目の『ジャンヌ・ダルクによろしく』以外は、『せつない胸に風が吹いてた』『愛する女性とのすれ違い』『海』『ラチエン通りのシスター』と続く、懐かしい曲の“波状攻撃”は、デビュー以来47年間、サザンと共に歩んできたファンを感涙させるラインナップだった。と同時に、新しい若きファンたちにも、新鮮な魅力だっただろう。

大ヒットした新アルバム

『愛の言霊 ~Spiritual Message~』まで続いた懐かしい名曲の数々の後は、16作目のオリジナルアルバム『THANK YOU SO MUCH』からの作品披露となった。3月の沖縄アリーナは、アルバムの発売前だったため、ほぼ1曲ずつに桑田さんからの曲の説明コメントが付いた。しかし、発売から1か月、この日のステージでも桑田さんが照れくさそうに紹介したように、「オリコン1位」を獲得した大ヒットアルバムとなった。言葉は不要だったのだろう。『桜、ひらり』から一気に、“令和のサザン”に突入し、歌が続いた。メンバー5人の平均年齢は69歳を超えた。そんな“アラ古希”のロックバンドが、全14曲のオリジナルアルバムを引っさげて、全国ツアーを敢行することの凄さと尊さを噛みしめる。

純粋無垢で“企みない”曲たち

「企み(たくらみ)がないアルバム」だそうだ。MBS(毎日放送)制作の番組『日曜日の初耳学』で、林修さんに対して、ゲスト出演した桑田さんの言葉を思い出す。自らの曲作りについて桑田さんはこう語っていた。

「企み始めるとバレる。でも、意図しないものは強い。純粋無垢で企みがない時は、それ
なりのものを作ってきた」

そんな「企みがない」のが『ごめんね母さん』など、今回のアルバム『THANK YOU SO MUCH』に収録された曲たちなのだと言う。

「万華鏡のようなアルバムだね」

メンバーのひとりで、パーカッションを担当する野沢“毛ガニ”秀行さんは、このアルバムについて「万華鏡のようなアルバムだね」と桑田さんに伝えたそうだ。公式ファンクラブ会報『代官山通信』のインタビューで語った。その「万華鏡」という表現について、野沢さんは「色々な曲があって、色々な角度から楽しめる」と分析している。

たしかに、この日ステージで披露された『史上最恐のモンスター』はアンニュイなメロディーに風刺の効いた辛口の歌詞が乗る。原由子さんが歌う『風のタイムマシンにのって』は軽やかに故郷の茅ケ崎などの風景を描く。『ミツコとカンジ』は、桑田さんが愛してやまないプロレスの英雄、故・アントニオ猪木さん(本名:猪木寛至)と元妻だった倍賞美津子さんの名前を持つ男女2人の青春物語。『夢の宇宙旅行』はとても軽快で楽しいポップな曲である。サザンの万華鏡は、鮮やかに歌模様を描き続ける。この日のスタンド席から見た照明などステージ演出も、まさに万華鏡の美しさだ。

47年間の曲が輝くステージ

「サザンオールスターズ全国ツアー・名古屋公演」:筆者撮影

ステージでは、デビューアルバムの名曲『別れ話は最後に』をアコースティックギターで披露するコーナーもあり、長年のファンをさらに感激させた。『LOVE AFFAIR〜秘密のデート』『マチルダBABY』『ミス・ブランニュー・デイ (MISS BRAND-NEW DAY)』『マンピーのG★SPOT』と続くクライマックスで、ドームの熱狂は最高潮。アンコール3曲の締めくくりは『勝手にシンドバッド』だった。47年前のデビュー曲を、令和時代のコンサートのラストで歌い、会場すべてを納得させる。今さらながら恐るべきサザンの底力だった。アルバムだけではない、今回のツアー、28曲のセットリスト全体がまさに「万華鏡」の魅力だった。

およそ2時間30分のステージが、歓喜と歓声の中で終わる。帰路につく人々の表情は誰しも幸せそうだ。アルバム名に「!!」を付けて『THANK YOU SO MUCH!!』と名づけられた全国ツアー、しかし、それは私たちファンからサザンオールスターズの5人やサポートメンバーたちにお返しする言葉でもある。THANK YOU SO MUCH!!(本当にありがとう!)と。

※「沖縄で参戦サザン熱きライブ!琉球の踊りに染まった『神の島遥か国』【アリーナ編】」も合わせてお読み下さい。
      

【東西南北論説風(584) by CBCマガジン専属ライター・北辻利寿】

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