「仕事も子育ても諦めない」アナウンサーが選んだキャリアのかたち

出産・子育てとキャリアを両立し、育休を経て現場復帰を果たした夏目みな美アナウンサー。
日々の中で感じた悩みや葛藤、周囲との向き合い方、そして乗り越えてきたエピソードを、同僚の柳沢彩美アナウンサーと語り合いました。
2人とも家庭では子育て中のママ。アナウンサーという顔と、先輩・後輩という関係性から紡がれる”等身大のワーク&ライフバランス”に迫ります。
仕事と夢の両立!夏目アナの「覚悟」とは
「隣の女性」のリアルな本音を伝え「今」を生きる女性たちを応援したい――。そんな思いから、CBCテレビは「me:tone編集部」を立ち上げました。
同じ職場で働く女性として、me:tone編集部員が同僚の女性アナウンサー2人にインタビュー。出産後に子育てをしながら復帰し、さらに2人目を望みつつメインキャスターに抜擢された夏目アナの葛藤と奮闘を聞いてみました。
me:tone編集部:「実際に出産を経て、子育てとアナウンサーの仕事を両立するなかで、どんな苦労や思いがありますか?」
夏目:「私が1人目を産んだとき、アナウンス部にママの先輩は1人だけで、その方のお子さんはすでに大きくなっていました。なので、出産したら仕事はどうなるかと、すごく不安でした。」
それでも「子どもを持ちたい」という夢を優先した夏目アナは、「もしこれでアナウンサーとしての仕事がなくなっても仕方がない。その時はその時だ!」という覚悟を決めていました。
ちょうど同期や先輩の出産が重なり、会社としても人材不足に直面。そんな中で「どうすれば復帰できるか」を真剣に考えてくれた、と振り返ります。

me:tone編集部:「産休や育休を取る際の調整も容易ではなさそうですよね。」
夏目アナが特に悩んだのは、2人目の子どものタイミングでした。妊活を続けている最中に、夕方の情報番組『チャント!』のメインキャスター就任の打診があったのです。
夏目:「年齢的に2人目を先延ばしにするのは考えにくかったです。自分の中では、やっぱり2人目が欲しいという思いがありました。」
この正直な気持ちを隠さず、番組の担当者に「妊活中です」と伝えたうえで、キャスターを引き受ける決断をしました。ところが新体制が始まる直前に妊娠が判明。
夏目:「迷惑かけるなと思ったんですが、復帰前提で色々動いてくださって…」
そう語り、関係者への感謝をにじませます。
柳沢:「今だからこそ社内もフレキシブルに対応できるようになったけど、夏目さんのケースは会社にとっても初めてでした。」

「夏目アナはパイオニア」柳沢アナが涙ながらに語った感謝の理由
me:tone編集部:「メインキャスターの仕事と第二子を望む気持ち、どちらも大事にしたいという思いで、本心を伝えたそうですが、言い出しにくさはありませんでしたか?」
夏目:「“妊娠の計画があります”と伝えても、本当に妊娠できるかどうかはわからない。でも言っておいた方がいいかなと思ったんです。」
一般的には「妊娠初期」や「安定期に入ってから」職場へ報告することが多いもの。けれど夏目アナは、計画段階で自身の気持ちを共有していました。
仕事と育児か――女性のキャリア選択の中で、二者択一を迫られるように感じることがあります。もしキャスター就任の打診があったときに「2人目が欲しい」と心にあったなら、仕事をあきらめざるを得ない…。そんなふうに考えてしまったかもしれません。
しかし夏目アナは、妊娠計画について、仕事に対する思いを率直に言葉にした。その姿を見て、“ロールモデルが出来た”と柳沢アナは強く語ります。
柳沢アナ:「夏目アナを傍で見てきて、いろいろ犠牲になった部分もあることはわかっています。夏目アナは“パイオニア(先駆者)”だから」
夏目アナが見せてきた葛藤の姿に、自身の子育てと仕事での苦悩を重ね合わせた柳沢アナ。語るうちに声を詰まらせ、堪えていた涙がこぼれ落ちました。その姿は、同じ道を歩む者にしかわからない痛みと苦労を物語っていました。

時代とともに変化していく“働き方のマッチング”
夏目:「子育てと仕事の両立の難しさを感じるのは“イレギュラーな事態が起こった時”です。」
出産後は、子どもの急な発熱など予想外の出来事に振り回され、、業務に影響が出ることも。そのたびに引け目を感じた、と打ち明けます。
けれど今の環境を語るとき、夏目アナの言葉には感謝の気持ちがにじみました。
夏目:「私たちは子育てしながら仕事も両立して頑張っている!というよりも、穴を開けてしまうときや手薄になったところを埋めてくれる仲間がいるから、私はここで働けているんですよね。」
かつてアナウンサーは私生活を公に出さない風潮がありました。しかし自体が進み「多様性」という価値観が浸透するにつれて、ライフスタイルとキャリアを抱えたまま番組の顔を務めることも当たり前になりつつあります。キャスターという仕事を“人生ごと背負って立つ”ことを可能にしたのは、本人の覚悟だけではなく、支え合うスタッフや同僚の存在でした。
柳沢:「子育てだけではなく、介護や不妊治療などで両立に悩む人もいる。今度は私たちが、そうした人たちを支える番なんだと思いました。」
いまのアナウンス部では「休みたい」「早出したい」といった声も受け止め、部署全体で柔軟に調整しているといいます。

me:tone編集部:「(社内は)変わりましたか?」
夏目・柳沢:「とても変わったと思います!」
柳沢アナはこう続けました。
柳沢:「これは本当に、誰かが勇気を出して言わないとできなかったことです」
夏目アナも振り返ります。
夏目:「“仕事がなくなっても仕方ない”と自分だけで覚悟を決めるのは簡単でした。でも、その考えや個人のライフプランを受け止めてくれたスタッフがいたからこそ成り立ったんです。よく受け止めてくれましたよね(笑)」
その言葉に、柳沢アナは「勇気がある行動だった」と繰り返し讃えていました。
“まず言葉に出してみる”という一歩が、職場に新しい風を呼び込み、柔軟な体制や多様な働き方を後押しする。夏目アナの挑戦は、そんな未来への種まきだったのかもしれません。
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