9月1日施行、「AI新法」の目的は?

9月1日、政府は人工知能AIの研究開発、活用を推進しつつ、偽情報などのリスク対応を強化するために人工知能戦略本部を設置しました。これは今年5月に成立した「AI新法」に基づくもので、石破茂総理大臣を本部長に全閣僚が参加します。とはいったいどんなものでしょうか。9月9日放送の『CBCラジオ #プラス!』では、光山雄一朗アナウンサーが、アディーレ法律事務所弁護士の正木裕美先生へ「AI新法」について尋ねます。
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9月1日に施行された「AI新法」。これによって人工知能戦略本部も設置されました。
これまでAIに関して取り締まる法律はなかったのでしょうか?
正木「そうです。初のAI分野に特化した法律です。世界的に見ると日本は遅れていますが、日本を最もAIの開発、活用がしやすい国にしようということで、AIの開発やリスク対応を目指していこうと設けられた法律です。
この法律の中では、国や自治体に対するこういう形で進めてくださいね、という基本的な施策を定めているのがメインになります。
これらをうけて人工知能戦略本部が今回設置されました。AIの研究開発、活用の施策を推進していこうというのが現段階です」
人工知能基本計画
人工知能戦略本部には総理大臣が本部長、全閣僚も参加します。内閣がリスクなどへの対応方針を作ったりしていくのでしょうか?
正木「そうですが、ただ結局、専門的な内容は多岐にわたりますので、それは専門家の意見を聞きながら、という形になると思います。
政府が人工知能基本計画というものを定めると法律で決まっています。これに関してはまだ具体的なものは決まってないです。
以前石破さんは今年の冬までにとりまとめる予定だとおっしゃっていたので、まだ揉んでいるところかなと思います」
生成AIの利用が少ない日本
日本はAIは遅れているということでしたが、海外はどこまで進んでいるのでしょうか。
正木「民間の投資額、利用率は海外の方が進んでいます。例えば民間投資額(推計)は、1位はアメリカ約10兆円、日本は世界12位で6億8000万円(2023年)です。むちゃくちゃ少ないです。
個人に『生成AIを利用したことがありますか?』というアンケートを実施した結果ですが、昨年、アメリカ68%、中国81%とかなり多くの方が利用しています。日本では26%強とかなり少ないです。
日本人はAIに対して積極的かというと、いろいろなトラブルを聞いたりするし、怖いというところもあって、不安が強いところがあります。そういうところから国際競争力が弱いので、今回開発も進めたい、リスクも対応したいということでこの法律を作りました」
著作権の侵害
AIが原因となる問題はどんな例があるのでしょうか?
正木「例えば『ディープフェイク』とか聞いたことがあると思います。
また、AIで問題になりやすいのが、著作権との関係です。AIは学習をしますが、その際著作権法という法律が日本にはあって、AIが学習すること自体は否定はしていないですが、著作権者の利益は大切なので、それを不当に害するようなものに関してはだめだと規制しています。
ただAIというのは、ある情報をどんどん吸収していくものなので、人間側が制限をしない場合は著作権にかかわるものも学習してしまいます。
実際今年の8月にはアメリカの生成AIを利用した検索サービスを展開している会社に対して、読売新聞などが記事の無断利用を理由に訴訟をしているという報道もあります。
勝手に著作物を利用されたということで訴訟が世界中相次いでいるという状況にあります」
ソフトロー
アメリカで生成AIに自殺の方法を聞いて実際に自殺したというケースがあったそうです。確かにリスクはありますね。
正木「生成AIにもいろいろなソフトがあります。どういうものを学習させるか、どういうAIに育てるかは、人間の関与がすごく大きいです。そこでちゃんとした制御ができないと悪い形で利用ができてしまうおそれがある。これからどういう形で制限をしていくのか。
アメリカやEUなどはリスクを考慮して、AIに対する法律的な制限を強くしているところが多いです。
一方、日本はそこはソフトローという形で基本的には制限はしない、問題があればそこの制御を増やそうという形で、かなりゆるくなっています。
今後、日本のAI制度も時代とともに変わってくるのかなとも思います」
(みず)
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