帯状疱疹ワクチンで認知症のリスクが65%減?

痛みを伴う水ぶくれが皮膚に現れる帯状疱疹。実は今年度から予防ワクチンについて、65歳の人を対象に費用の一部が公費で助成されているのをご存知でしょうか? 実は日刊ゲンダイDIGITAL版が報じたところによると、このワクチンが認知症のリスクも減らすそうです。さらにインフルエンザ、肺炎球菌のワクチンも同様な効果があるのだそうです。5月16日放送のCBCラジオ『北野誠のズバリ』では、心療内科本郷赤門前クリニック院長で医学博士の吉田たかよし先生が、帯状疱疹ワクチンと認知症リスクの関係について解説します。
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この記事をradiko(ラジコ)で聴く二種類の帯状疱疹ワクチン
まずは相談者のメールです。
「日刊ゲンダイのDIGITAL版で“帯状疱疹ワクチンで認知症が2割減”という記事を目にしました。どうして帯状疱疹ワクチンで認知症が減るのでしょうか?」(55歳・Aさん)
北野もこの記事を読んで驚いたとか。そもそも帯状疱疹ワクチンとはどんなものなのでしょう?
吉田「これは2種類あります。ひとつは以前から広く使われているゾスタバックスというもの。
これはこどもが水疱瘡の予防で使っているワクチンとまったく同じです。帯状疱疹というのはこどもの頃かかった水疱瘡のウィルスが体内に潜んでいて、それが高齢になったり、免疫力が低下したときに再び暴れだすものです。
だから、水疱瘡の予防のゾスタバックスをおとなに注射したら帯状疱疹の予防効果があるということです。
もうひとつシングリックスという新しいワクチンも開発されました。これは遺伝子組み換え技術を応用したワクチンです。値段は高いですがより強力に帯状疱疹を抑えてくれます。また、高齢になった後もより長く効果が持続するというメリットもあります」
帯状疱疹ワクチンで認知症が21%減
帯状疱疹のワクチンが認知症の予防に役立つというのは本当ですか。
吉田「帯状疱疹のワクチンを打った人とそうでない人とで認知症の発症率を比較した研究は以前からたくさん論文が出ています。
そのうち医学界で評価が高いのは5つくらいの論文です。もっとも評価されているスタンフォード大学の論文では、帯状疱疹のワクチンを打った人は認知症の発症率がだいたい21%低いというデータでした。
ではふたつのワクチンのうち、どちらが効くかですが、やはりシングリックスの方がより認知症を強力に予防してくれるというのが論文の主流です。
帯状疱疹自体を強力に抑えてくれるし、認知症は高齢者が発症しやすいので、より高齢者にききやすいシングリックスの方が認知症予防にも高い効果が出やすいのです」
なぜ認知症を予防するのか
なぜ帯状疱疹予防のワクチンが認知症予防に効果が高いのですか?
吉田「帯状疱疹を発症すると皮膚だけでなく、脳の神経細胞も炎症を起こしやすくなります。その結果、脳の中で免疫をになっているミクログリア、これは病原菌を排除するというのに役立つものですが、これが活性化しすぎて、本来は攻撃しなくていい正常な神経細胞にもダメージを与えてしまう可能性があります。
もうひとつ大きいのは帯状疱疹を発症したら、血管が炎症を起こして詰まりやすくなります。
その後、1年間脳卒中や心筋梗塞のリスクが2倍以上になるというデータが出ています。ごく軽い脳卒中でも脳の神経細胞は死滅して、これを繰り返すと、認知症の原因になるとわかっていて、それを防ぐ点でもワクチンを打って、帯状疱疹を防ぐことが認知症の予防につながるということです」
65歳から国の補助金が出る
50歳を超えたら打った方がいいですね。
吉田「そうなんです。認知症の予防のためにワクチンを打つべきだといえるほどには十分なデータとはいえません。
ただ、帯状疱疹の予防だけでもワクチンを打つことを強くおすすめします。
帯状疱疹は50歳を過ぎると、年齢とともに発症はどんどん増えますし、発疹とともに出てくる激痛がつらいですが、もっとつらいのは帯状疱疹後神経痛といって、発疹が治った後も痛みだけ数か月、数年も残り、それで日常生活が困難になることもあります」
現在は補助金が出ています。
吉田「国レベルで今年度から始まりました。チャンスは65歳以上の5歳きざみ、65歳、70歳、75歳、80歳…100歳以上は全員。帯状疱疹ワクチンを打つと費用の一部を公費で負担してくれる制度がはじまりました」
インフルエンザと肺炎球菌のワクチンも
他の病気のワクチンでも認知症の予防に効果はあるのでしょうか?
吉田「あります。インフルエンザのワクチンと肺炎球菌のワクチンでも認知症予防の効果が見つかっています。
65歳以上を対象に分析した研究だと、インフルエンザワクチンを1回打つと認知症の発症リスクが13~15%下がるというデータ。3年連続してワクチンを打つと最大40%認知症になりにくいというデータが出ています。
肺炎球菌のワクチンについては、認知症の発症リスクが20~28%下がるというデータが出ています。
理由は帯状疱疹のワクチンと同じで、インフルエンザも肺炎も喉とか肺だけ炎症が起こるのではなくて、脳の神経細胞とか脳の血管に炎症が起きていて、その積み重ねで認知症のリスクを上げているのです」
3つのワクチンで認知症が65%減
それでは、帯状疱疹、インフルエンザ、肺炎球菌、全部のワクチンを打ったらどうなるのでしょうか。
吉田「調べてみました。アメリカのセントルイス大学の研究論文には認知症リスクを65%も低下させるという驚きの計算結果が出ていました。
帯状疱疹のワクチンの効果を中心にした研究で効果の断定はできませんが、3つのワクチンを打つことが認知症予防に関係するというデータがでています。これはみなさん打った方がいいです」
帯状疱疹のワクチンも国が補助してくれるなら打ちやすいですよね。
吉田「インフルエンザのワクチンは毎年打つ、50歳過ぎたら帯状疱疹のワクチンは打つ、65歳過ぎたら肺炎球菌のワクチンも打つ、この三つは絶対やるべきです」
(みず)
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