10~15人に1人が?珍しくない「産後うつ」

4月下旬、埼玉県戸田市で生後4か月の男児が亡くなりました。中日新聞などが報じたところでは、殺人の疑いで逮捕された母親が「産後うつだった」と供述しています。厚生労働科学研究によれば、児童虐待による死亡事例は生後間もないこどもが多くを占めているとのこと。その背景には、母親の社会的経済的な問題や精神疾患など、妊娠時や出産時の親の問題が関与していると言われています。7月5日放送のCBCラジオ『北野誠のズバリサタデー』では、愛知医科大学看護学部母子看護学准教授の山本弘江先生が、産後うつについて解説しました。聞き手はパーソナリティの北野誠と加藤由香アナウンサーです。
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「産後うつ」は自殺に至る症例もあり、諸外国でも妊産婦の死亡原因で上位を占めているそうです。
決して珍しいものではなく、10~15人に1人が産後うつを発症するとされています。
最近では父親の育児参加も進んでいるせいか、男性の発症も知られています。
その他にも産前、つまり妊娠中にうつ病に罹るケースもあります。
山本先生によれば、これは「抑うつ症状」というもので、気分が落ち込んだり、これまで楽しいと思えたことが楽しめなくなったり、やる気が出なかったり、子育てがうまくいかないという焦燥感など、精神的な症状が見られるとのことです。
また身体的な症状として食欲が出ない、眠れない、疲れるといったケースも。
中には「自分はダメな母親だ」と思い込み、自死や心中を考えることもある危険な病気です。
男性も産後うつになる原因
産後うつの原因はハッキリしていません。
発症が多い時期は、帰宅して本格的に育児を始める1か月から数か月ぐらいで、子育てをどうしたらよいかわからず悩む時期といえます。
すでに子育てを終えた世代には「誰もが子育てには悩む時期があって、時間が経つと解決する」と考える人も多いですが、産後うつの場合、重症化すると治りにくくなってしまいます。
また、男性の産後うつについては、育休を取りやすい環境が整ったことも背景にあります。
育児参加がしやすくなった一方、夫婦だけの子育てで「妻とこどもを守らねば」とプレッシャーがかかりやすくなります。
そのため育休が終わっても、夜中に子育て、昼間は会社での勤務という生活がつらくなることもあります。
海外では、すでに男性の産後うつも注目されてきているとのことです。
どこに相談したらいい?
産後うつを予防することはできるのでしょうか?
「できるだけ早くにサインを受け取り、育児の環境を整えたりサポートしたりすることで重症化を防ぐことはできる」と山本先生。
夜中に眠れずに起きている、食欲がない、涙を流している、といった小さなサインを見逃さないことが重要とのことです。
また、育児はひとりや夫婦だけでできるものではなく、周囲に助けてもらいながら行う心構えが必要です。
そして、夫はもちろん、複数の人に相談するのが良いそうです。
子育てに悩むお母さんは多いのですが、家でひとりでいると、ネットで育児の動画やブログを見がちです。
そんな時「他の人はすごい子育てをしている」と感じてしまうことがあります。
山本先生は「自分だけじゃないんだ、助けてもらっていいんだ、と考えることが大事」と語りました。
いきなり心療内科で診察してもらうのに抵抗があれば、出産した産院の助産師さんや、地域の保健センターに連絡して、保健師さんにつないでもらったり、育児支援センターがあればそれを活用するのも良いとのことです。
(岡本)
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