「58が出るコースに見えない」和合コースに挑む注目選手の戦略とは 中日クラウンズ2026
「58が出るコースには全く見えない――」。
プロゴルファーたちが口を揃えてそう語る難攻不落の舞台がある。日本屈指の難コースとして知られる名古屋ゴルフ倶楽部 和合コースだ。距離は短いが、小さく硬いお椀型のグリーンが選手たちを苦しめる。ちょっとした油断が命取りになるこのコースには、「和合の魔物」が棲むと言われている。
今回で66回目を迎える日本最古の民間トーナメント「中日クラウンズ」(4月30日開幕)。かつて「東洋のマスターズ」と呼ばれたこの伝統ある大会。過去には青木功が大会5勝を挙げ、ジャンボ尾崎(尾崎将司)も3連覇を含む5勝を記録するなど、日本ゴルフ史に名を刻むレジェンドたちが数々の名勝負を繰り広げてきた。

今年はゴルフ界の新たな時代を牽引する若き才能たちが集結する。和合の魔物に挑み、栄光の王冠(クラウン)を手にするのは誰か。熱き思いを胸に秘めた注目選手たちの意気込みに迫る。
地元の声援を背に、あの日の悔しさを晴らす――小木曽喬
「一番優勝したい試合ですし、地元で勝つっていうのは本当に一番の目標に挙げてやっています」。そう力強く語るのは、愛知県出身の小木曽喬(おぎそ・たかし)だ。昨年の最終戦、JTカップで劇的な優勝を飾り、賞金ランキング4位へと躍進した。今、最も勢いに乗る選手の一人である。
彼にとって、中日クラウンズは特別な意味を持つ。プロデビューを果たした思い出の地であると同時に、忘れられない悔しさを味わった場所でもあるからだ。2024年の第64回大会、小木曽は最終日を最終組で迎えながらも、勝利を逃した。「最終日トップから出て勝てなかったっていうのは今でも思い出せますし、すごく悔しい経験をしたなっていう思いが強いです」。
しかし、その敗北が彼を強くした。和合でのあのミスは何だったのか。考え抜いた末にスイングの改造に取り組み、それが昨年のJTカップ優勝へと繋がったのだ。
「あの悔しさっていうのは今に繋がってるなと思います。自分が今、ゴルフのキャリアの中ですごくいいときだと思っているので、そういうときに挑めるクラウンズというのはすごく楽しみです」。地元の熱狂的なギャラリーの声援を背に受けて、王冠を目指す。
攻めのゴルフで「58」の奇跡を追う――蟬川泰果
2025年の賞金ランキング3位、蟬川泰果(せみかわ・たいが)。海外ツアー挑戦中に肋骨骨折というアクシデントに見舞われながらも、復帰後に見事な優勝を飾り、そのポテンシャルの高さを見せつけた。
蟬川にとって中日クラウンズは、初出場で3位に入った相性の良い大会。しかし、和合コースの難しさは身をもって感じている。かつて石川遼が叩き出した「58」という驚異的なスコアについて触れると、彼は率直な思いを口にした。「58出るコースには全く見えないんで。仮に出せたらすごく自信になるなって思っている大会でもあるので、タフなセッティングで一番を取りたいですね」。

和合を攻略する鍵として、蟬川は自らの持ち味である「アグレッシブさ」を挙げる。
「マネジメントも大事ですけど、自分の持ち味のアグレッシブさっていうのは本当大事だと思うんで。いけるホールであれば果敢に攻めていく。その気持ちは忘れずやっていきたいです」。
「1日目からアクセルをずっと踏めるように頑張りたい」と語る蟬川。最終日には彼の勝負カラーである「黄色」のウェアで、リーダーボードの頂点に立つ姿が見られるかもしれない。
正確性を武器に魔物をねじ伏せる――生源寺龍憲
昨シーズン、開幕戦から勝利を重ね、賞金ランキング2位に輝いた生源寺龍憲(しょうげんじ・たつのり)。彼もまた、和合での戦いに静かな闘志を燃やしている。飛ばし屋が有利とされる現代のゴルフにおいて、生源寺の武器は卓越した「正確性」だ。そしてそれこそが、和合が選手に求める要素でもある。「距離よりも正確性を求められるコースなので、そこが自分のプレースタイルとマッチしてるのかなと思います。」

過去のクラウンズでも6位タイに入るなど、コースとの相性の良さは証明済みだ。そんな彼が優勝への鍵として挙げたのは「バンカーショット」だった。
「どうしてもピンチの場面が来ると思うので、そこでいかにセーブできるかっていうのが流れを切らない鍵になってくる。特に和合の場合はバンカーに入る確率がすごく高いと思うんで、そこをうまく乗り切れればいいのかなと思います」。
冷静にコースを分析し、頭を使ったプレースタイルで、生源寺は和合の魔物を手なずけようとしている。
新たな歴史の1ページへ
彼らだけではない。アマチュア優勝の経験を持つ愛知県高浜市出身の杉浦悠太(すぎうら・ゆうた)など、若く勢いのある選手たちが虎視眈々と頂点を狙っている。
「たくさんの方が応援に来てくれますし、一段と気合いが入る試合ですね」と杉浦が語るように、地元選手にとってクラウンズの舞台は格別だ。半世紀以上の歴史と伝統を受け継ぎながら、常に新たなドラマを生み出してきた中日クラウンズ。
距離の短さをあざ笑うかのように立ちはだかる和合の難セッティングを前に、若き才能たちはどのようなプレーを見せてくれるのか。春の陽気に包まれた名古屋の地で、新たな王者が誕生する瞬間を見届けたい。



