“悔しさしかない”投手転向5年目、中日・根尾昂が体感した侍ジャパンでの“濃密なる3日間”
【ドラゴンズを愛して半世紀!竹内茂喜の『野球のドテ煮』】CBCテレビ「サンデードラゴンズ」(毎週日曜日12時54分から東海エリアで生放送)
寂しい野手選出ゼロの現実
日本全国どこもかしこもWBC話で大盛り上がり。普段野球に無関心な人までも熱心に語る姿を見ては、やはりひとりのスーパースターのおかげだなとあらためて“大谷翔平人気”の凄さを感じる。と同時に、高橋宏斗(※「高」は「はしごだか」)、金丸夢斗両投手が代表入りしているものの、ドラゴンズ野手陣がひとりも選出されていないことに寂しさを感じているドラファンは多いはず。思い出すのは、2006年第1回WBC準決勝の韓国戦。福留孝介選手が放った一発で日本中が歓喜したあのシーン。日本人としてはもちろんのこと、ドラファンとして誇りに感じたものであった。そんな身震いする思いをいつか再び細川成也、岡林勇希両選手ら実力ある野手の力で味わいたいと願うばかりである。
さて今回のサンドラは、WBCサポートメンバーとして日本代表に初招集。阪神タイガースとの強化試合において危なげないピッチングを披露し、今シーズンの飛躍が期待される根尾昂投手の特集。今年でプロ8年目、投手へ転向して5シーズン目を迎え、奮闘を続けている。侍ジャパンのユニホームに袖を通した3日間、根尾投手は何を思い、何を感じたのか。そして得たものは何だったのか?彼の胸中に迫った。
悔しさしかない

“ピッチャー 根尾”
3月3日、WBC開幕を目前に控えた侍ジャパンの強化試合最終戦。1点リードの9回、最終回のマウンドにその名がコールされ、スタンドから大歓声が上がった。
プロ8年目、根尾昂投手。思い描いた形ではない日の丸を背負ったかつては世代ナンバーワンと称されたスター。侍ジャパンの正式メンバーではなく、サポートメンバーとして招集が決まったのは沖縄春季キャンプの最中。しかし調整する場所は二軍の読谷。さぞかし複雑な心境でこの一報を耳にしたに違いない。率直な思いを吐露した。
根尾投手「若手も入ってきますし、自分が投げられるチャンスで結果を求めないといけない。そこでピッチングがアピールできれば信頼も積み重なっていくと思うので、まずそれが一番かと」
口にした“若手”という言葉。それは自身が今年4月で26歳を迎え、投手に転向して早5年。過ぎ去る時の流れを感じさせた。そしてその時の中で変わった彼の立ち位置。根尾投手は侍ジャパンのサポートメンバーとして選出された。“正式”ではなく“サポート”。投手としてしっかりとした成績を残せていない中での招集をさぞかし複雑な思いで受け止めたに違いない。
根尾投手「悔しさが一番ありました」
アピールの場と割り切ったとはいえ、込み上がる悔しい気持ち。甲子園を沸かせ、同じドラフト1位でプロの世界へ飛び込んだ広島東洋カープ・小園海斗選手を始め、同学年が本メンバーとして選出されている中での自分が置かれている立場。根尾投手は正直な気持ちを口にした。
根尾投手「(正式メンバーでない)悔しさしかない」
未来でも見たい“輝く姿”

かつての世代トップがこぼした偽らざる胸の内。自身の役割の変化に抗う25歳は3月1日、侍ジャパンに帯同した。大谷翔平選手、山本由伸投手(共に ロサンゼルス・ドジャース)ら錚々たる顔ぶれが集まる日本代表の中で根尾投手の扱いはあまりにも切ないものだった。
これが偽らざる根尾昂、今の立ち位置。
それでもスポットライトが当たるチャンスが訪れる。3日、阪神タイガースとの強化試合。1点リードの9回。試合を締めくくるこの場面。マウンドには根尾投手が立っていた。正式メンバーの調整がすでに終わっていたのかもしれない。少しでも経験値を積み重ねさせたいという井端弘和監督ならびに吉見一起コーチの温情。この起用には様々な推測が頭に浮かぶ。しかし、そんなことはとうでもいい。根尾投手はただ無心に右腕を振り、わずか9球でプロ初セーブという結果でこの起用に応える働きを見せた。プロの投手として初めてといっても良い“輝き”。願わくはこの先の未来でも見てみたい。そんな思いにかられる瞬間でもあった。
濃密なる3日間

登板の翌朝。サポートメンバーとはいえ日本代表のユニホームを着ての登板について感想を求めると、心も身体もクールダウンしたのか、落ち着いた口ぶりで答えた。
根尾投手「素晴らしい経験をさせていただきました」
しっかりと投げられたことはもちろん、投げていない時間でアドバイスを聞けたこと。内容は秘密。それが現時点では体現できないモノだとしても貴重な財産になったようだ。
根尾投手「今やっていることを継続するのはもちろんですけど、もっともっとよくなれるなと感じました」
これから根尾投手は帯同から離れ、同世代がこれからWBCの本戦で頑張っていく姿を見つめる立場へと変わる。それに対する悔しさはこれからも持ち続けることは何ら変わることはない。しかし根尾投手にとって濃密なる“日本代表としての3日間”は自身の野球人生にとって良い方向へ転じる変化点になったことだろう。
胸に染みついた悔しさを晴らすにはきっとひとつしかない。頭の片隅にわずかでも残っていた打者への未練を完全に断ち切り、投手としてプロの世界で輝くこと。そして次回のWBCでは同学年と世界一の座を目指して一緒に戦うことを目指す。
直近の課題としては開幕一軍入りを果たすこと。そして結果をひとつひとつ残すことに尽きる。それが敗戦処理など泥水をすするような役割でも。小さな輝きを重ねることにより、やがて大きくまぶしすぎる存在へと成長する根尾昂投手をわれらドラゴンズファンはいつまでも待っている。
がんばれ根尾!
がんばれドラゴンズ!
燃えよドラゴンズ!
竹内 茂喜










