どっちが好き?どっちが辛い?味仙・台湾ラーメンの2つの調理法を食べ比べ!~大竹敏之のシン・名古屋めし

熱狂的ファンを魅了する名古屋めしの裏番
名古屋めしの代表格のひとつ、台湾ラーメン。ご存じ中華料理店「味仙」発祥の激辛ラーメンで、ホットな味わい同様にファンの熱量もとびきりアツい一品です。
熱狂的ファンがいる一方、辛いものが苦手な人ではとても食べられず、かつ他の地方ではほぼ食べられない料理。そのため名古屋めしの人気投票を行うと意外と票が伸びなかったりするのですが、好きな人の熱量は他のグルメを寄せつけない、名古屋めしの裏番的存在といえるでしょう。
味仙 今池本店はトッピング式でスープすっきり
「味仙」は名古屋市内を中心に16店舗がありますが、5兄妹がそれぞれ別々で経営していて、いわゆるチェーン店ではありません。そのため店によって微妙に味が異なることは、ファンの間では知られた事実です。
名物の台湾ラーメンも、調理法からして店ごとに違いがあります。そのポイントは台湾ミンチとスープの合わせ方。台湾ミンチを麺の上に盛りつけて最後にスープをかけるトッピング式、台湾ミンチをあらかじめスープに混ぜておくミックス式、このふたつのパターンに大別されるのです。
「味仙 今池本店」(名古屋市千種区)は1962年に長男・郭明優さんが創業。台湾ラーメンは、明優さんが台湾の坦仔麺(タンツーメン)にヒントを得て昭和50年代に開発しました。同店の調理法はトッピング式。「スープは鶏ガラベースですっきりしているんです。辛み、うまみ、香りは全部台湾ミンチの中に凝縮されていて、上からスープをかけることでそれが全体に行き渡ります」と明優さんの妻の郭美英さん。
いざ実食。麺を口へ運んだ瞬間、「か、辛いッ・・・!」。何度も食べて分かっているはずなのに一口目の辛さのインパクトは強烈です。スープは、最初は透明感がありますが、台湾ミンチの辛みがとけ出して徐々に赤さが増してきます。ミンチは粗挽きでジューシーな肉感十分。辛さの中に肉のうまみ、甘みも感じられます。口の中がヒリヒリするほど刺激的なのですが、それでも箸が止まらなくなるのは、甘みとうまみが後からやって来て、ただ辛いだけではない深みと奥行きがあるからです。
発祥の店の調理法なのですから、もともとはこのやり方が基本ですが、他の兄妹が経営する店が異なる調理法を取っていることは、郭さんも承知しています。
「どの店も料理人がイチから料理を作っているから、みんながそれぞれ工夫して自然とそうなっちゃった(笑)。その場で手作りした方がおいしいものができると思ってやっているから、チェーンみたいにどこで食べても同じ、というよりいいんじゃないかしら」


矢場味仙はミックス式。ガツンと来るがシャープな味わい
今池本店とは異なるミックス式の代表格が「矢場味仙」(名古屋市中区)です。同店は明優さんの妹である長女の黎華さんが1981年に味仙下坪店(名古屋市千種区、現在は休業)を出店して独立したのが始まりです。
「嘘か本当か、母(黎華さん)は夢で『もっと辛くしなさい』という声を聞いて、さらに辛くしたと言っていました(笑)。その後で激辛ブームが来て人気が出たので、本当にお告げだったのかもしれません」とは現・店主の早矢仕朋英(はやしともえ)さん。
台湾ミンチをあらかじめスープに混ぜて仕込む方法は下坪店の開店当初から。肉のうまみがスープにとけ込んで一体感が出る、という理由でこのやり方にしたのだといいます。
「最初は『こんな辛いモノ食べられるか!』とお客さんに怒られることも。でも、そのお客さんがまた食べに来るんです(笑)」と、辛いのにクセになる味仙マジックはこの当時からいかんなく発揮されていたようです。
台湾ラーメンは唐辛子たっぷりで赤みが鮮やか。辛さは本店以上にガツンと強烈ですが、味の輪郭がはっきりしていてシャープな印象です。ミンチは本店よりやや細かく、濁り気味のスープは意外やすっきりしています。


見た目は異なるが味の違いは意外にも・・・
今池本店と矢場味仙と、できるだけ違いが分かるよう二日続けて食べてみました。写真を並べてみると見た目は結構違いがあり、唐辛子が多い分、矢場の方が辛みが強いことは確か。しかし、味わい自体は意外や見た目ほど大きな違いはなく、それぞれちゃんと「味仙の台湾ラーメン」の味になっていると感じました。「とにかく辛ウマい!」という強烈なインパクトが、微妙な違いを吹き飛ばしてしまうのです。
どこの店で食べても、何回食べても、そのたびに刺激と辛ウマさを体験できる味仙の台湾ラーメン。「この店が一番!」とマイフェイバリットを見つけるもよし。「どれも好き!!」といろんな味仙を食べ歩くもよし。ファンの数だけ味わい方、楽しみ方があるのです。
味仙グループ各店の台湾ラーメンの調理法一覧
【トッピング式】
・味仙今池本店(系列/JR名古屋駅店、大名古屋ビルヂング店)
・郭政良 味仙 日進竹の山店(系列/焼山店、八事店、豊田店、東京神田店、東京神田西口店、東京ニュー新橋ビル店)
・味仙 大阪駅前第2ビル地下1階店(系列/刈谷店)
【ミックス式】
・矢場味仙(系列/中部国際空港セントレア店)
・味仙藤が丘店(系列/味仙名駅店)
※記事内容は配信時点の情報です
#名古屋めしデララバ
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