CBC松本道弥アナが三重の米農家を取材。豊作なのに「過去一苦しい」理由
今年のお米は豊作でした。ところが、三重県で米農家を取材している松本道弥アナウンサーが耳にしたのは、「過去一苦しい」という言葉。そこには、天候や買い取り価格、資材の値上がりといった事情が重なっていました。9月26日放送のCBCラジオ『アナののびしろ』で、米農家の現状を伝えました。
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この記事をradiko(ラジコ)で聴く暑さ控えめな8月
7月末には岐阜県多治見市や三重県桑名市で、40度を超える酷暑日を記録した今年の夏。ただ、8月は暑さが少しやわらぎ、気象庁のデータを見ても、猛暑日の数は昨年の半分ほどでした。
こうした暑さや気温と密接に関係しているのが農業、なかでも主食のお米を育てる農家です。
松本は1年ほど前から、三重県東員町にある「斉藤來洲(ライス)」の代表、齋藤啓太さんに取材をしています。
斉藤來洲では、バンテリンドーム7個分ほどにあたる34ヘクタールの敷地で米を、さらに別の30ヘクタールで麦や大豆を育てています。
この夏について尋ねると、齋藤さんは、やはり8月は涼しくてよかったと話しました。体力仕事の農作業にとって、暑さが控えめなのは本当にうれしいことだったといいます。
雨不足と暑さで品質低下
しかし、農家の目線では、天候がよかったとはいえません。何より影響が大きかったのは、雨の少なさです。
秋になって急に雨が増えましたが、思い返せば8月はほとんど降らず、水不足に悩まされた夏でした。
生育中の稲が一部枯れかけたほか、強い日差しを浴び続けて米が黒くなる焼け米(やけまい)も増えました。雨が降れば表面が冷えて防げますが、今年はその雨がなかったのです。
また、7月末の酷暑日の影響で、米が白く濁ってしまう高温障害も出ました。
令和8年産の米は豊作でしたが、品質があまりよくないそうです。といっても、手元に届くお米がおいしくないわけではありません。
例えば100キロ収穫しても、その玄米を精米して商品になる米が少ないのです。量は多いのに出荷できる分が限られるため、収益は減ってしまいます。
「苦しい夏だった」と、齋藤さんは振り返っていました。
買い取り価格が半分に
さらに衝撃的な変化があったのが、概算金です。JAが米農家から米を一括で買い取る時の金額で、大まかに言えば農家の給料にあたります。
「斉藤來洲」のある東員町は、JAみえきたのエリア。昨年はコシヒカリ60キロの買い取りが3万5000円でしたが、今年は1万8000円ほどまで下がりました。前年の半分強です。
松本「これ皆さんの生活に置き換えてみたらどうですか。いきなりですよ、いきなり給料が半分に下がる。極端ですけど、そういうことなんです」
苦しいですかと尋ねると、齋藤さんは、昨年が異常なほど高すぎたがゆえの落差だと話します。ただ、60キロ1万8000円はやはりあまりにも少ないと、本音も明かしました。
コンバインが倍の値段に
実は、米や麦、大豆を育てる肥料の一部は、天然ガスが原料です。その天然ガスが十分に入ってこず、値上がりが続いています。
例えばある肥料は、昨年は20キロ2,500円でしたが、9月現在は500円アップの3,000円。資材の価格も高騰し、トラクターやコンバインはここ5年で倍の値段になっています。しかも、小さな額の倍ではありません。
松本「コンバインなんか1300万円が2600万円になっているんですよ。これ、とんでもない負担なんですね」
中東情勢という重しもあり、齋藤さんは「過去一苦しい」と話していました。
お米を食べてほしい理由
「消費者の我々としてはどうしようもないですよね」と尋ねた松本に、齋藤さんは「とにかくお米を食べてほしい」と答えました。
農家から直接買っても、スーパーで買ってもかまいません。高級なお米でも古米でも、何でもいいそうです。
なぜなら、昨年の令和7年産のお米が、今たくさん余っているからです。今年も軒並み豊作で、令和8年産の新米の在庫も多くなっています。つまり、消費者の手に届くお米の量が、これまでより圧倒的に多い状態です。
ところが、米の価格が高いというイメージから、米離れが起きています。この米離れが止まらなければ、来年、令和9年産の米が出ても米余りは続いたままに。
在庫が積み上がって、市場が「じゃぶじゃぶ」の状態になると、米の価格はさらに下がってしまうのです。
食べる選択が未来に
消費者からすれば、安ければ安いほどうれしいのが正直なところ。しかし生産者にとっては、価格が安定しなければ、生活も給料も安定しません。
一番怖いのは、生活が保障されないと次の世代の農家が育たず、今いる農家もどんどん辞めてしまうことです。結果的に、将来お米の価格がズドーンと上がってしまいます。
これはお米だけの話ではありません。野菜もお肉も、すべての食品は、生産者がいなくなれば消費できなくなります。
もちろん、消費者が購入する適正価格もあります。そして、生産者の利益も守らなければいけません。
松本「これは本当に大げさではなく、皆さんが夕食に朝食に昼食に何を食べるかというその選択肢一つで、生産者の未来を左右しかねないということなんですね」
(minto)
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