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「泣けてくるホームラン」…川上憲伸が挑んだ20年前のパーフェクトゲーム

「泣けてくるホームラン」…川上憲伸が挑んだ20年前のパーフェクトゲーム

5月14日放送のCBCラジオ『ドラ魂キング』では、「川上憲伸、挑戦のキセキ」のコーナーでCBC野球解説者・川上憲伸さんがプロ野球人生を「挑戦」という切り口で振り返りました。今回のテーマは「セ・パ交流戦」です。2005年の交流戦元年、川上さんがあと一歩でパーフェクトゲームに迫りながら、イ・スンヨプ選手に打たれ「泣けてくる」と表現したホームランの瞬間と、その当時の心境を語りました。聞き手は宮部和裕アナウンサーです。

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交流戦元年、栄光と挫折の記憶

近鉄球団の消滅、選手会によるストライキ、東北楽天ゴールデンイーグルスの誕生など、日本プロ野球界に大きな変革があった翌年、2005年に「セ・パ交流戦」がスタートしました。
2020年はコロナの影響で開催されませんでしたが、2025年の今年は制度導入から節目の「20周年」を迎えます。

この交流戦元年、5月20日の千葉ロッテマリーンズ戦で川上さんは「もう少しで完全試合」という素晴らしいピッチングを見せました。

その一方で、同年5月6日の交流戦初戦では7回を投げて自責点6という結果に終わっています。交流戦への挑戦に対して、川上さんはどのような思いを抱いていたのでしょうか。

パーフェクトに近づいた一戦

5月20日のロッテ戦について、川上さんは「なんかいい風が吹くというか、気候がいいというか」と振り返ります。

川上「パーフェクトとかそういうのができるとは、もちろん試合前は思ってはいないんですよ。でも妙に体調が良くなってきた感じがしました。マウンドに上がる瞬間からは、すごく清々しい感じで入っていけたのが良かったと思います」

落合博満監督は試合後、「川上はパーフェクトゲームやれると思った」と語っていたそうです。

2002年、川上さんは東京ドームでの読売ジャイアンツ戦でノーヒットノーランを達成していましたが、この日はさらに上を行く完璧な投球へと歩みを進めていました。

パーフェクトゲームへの挑戦

川上「途中ぐらいから、ヒットを打たれないというより、カウントと勝負し始めるんですよ。カウントを常に攻めておきたいので、ストライク先行で行きたいというのはあるんです」

ノーヒットノーランと完全試合では投球に対する考え方が根本的に異なるといいます。

ノーヒットノーランなら、際どいコースを攻めてバッターが振ってくれなくても仕方ないという割り切りができ、特に後半はすべて勝負球で勝負できます。

一方、パーフェクトゲームでは四球も許されないぶん、勝負球ばかりに頼ることはできません。カウントを思い通りに運べるとは限らず、ジレンマが生まれます。

川上「ツーボールとかで、あれ、ってなってきた時。振ってくれるはずの変化球を振ってくれなかった時に、その変化球を投げる勇気がないんですよ」

「泣けてくるホームラン」

スリーボールワンストライク。そんな極限の状況で、川上さんが選んだ投球は「頼れるストレート」。しかし、それが運命の分かれ道となりました。

川上「バッターがどう見てもストレート1本で読んでるんだろうけど。振ってくるとこに投げなきゃいけない」

その結果、イ・スンヨプ選手にホームランを打たれてしまったのです。

川上「後にも先にもあんな打球は見たことないような。ロケットの打球でホームラン打たれました」

この一打は、これまでにない「泣けてくるホームラン」だったそうです。

川上「悔しいんじゃなくて、終わってしまった…みたいな感じの。こんなことでよかったんだろうかというような」

パ・リーグの打撃哲学

川上さんは「一瞬、立ち直れないと思った」と語りますが、それでも試合展開を考え、「抜かずに頑張ろう」と気持ちを切り替えたといいます。

結果的にこの試合、打たれたヒットはそのホームランだけという驚異的な内容で、スタメン全員から三振を奪い、四球も与えないという素晴らしいピッチングでした。

川上「それはそうとしてもやっぱり悔しかったですよね」

川上さんは両リーグの野球スタイルの違いも感じていました。パ・リーグ打者相手に自分のセ・リーグ流の細かいピッチングが通用するのか、という不安があったといいます。

川上「ストライクの出し入れ、変化球多めがセ・リーグで、パ・リーグはストレート1本で行けという感じのフルスイング。セ・リーグはヒットの延長が偶然ホームラン、パリーグはホームランの打ちミスがヒットというスタイルと受け止めていたので」

そのため、初めての交流戦に「ちょっと苦手意識はあった」と振り返りました。

交流戦初戦の「誤算」

また、交流戦初戦となった5月6日のオリックス・バファローズ戦には予想外の展開がありました。

その日の天気予報は、100%の確率で雨。オリックスの仰木彬監督をよく知る森繁和ピッチングコーチは「仰木さんは試合始まる寸前までやる雰囲気で、雨の予報の時は必ず急遽中止にする。今日はリラックスして。スライドで行くから、あさってな」と川上さんに話していたそうです。

しかし、全く雨が降る気配はありません。

川上さんはバスでの移動中も、練習中も、ブルペンに入る直前も、森コーチに「今日雨降るんですかね」「そろそろブルペン行くんですかね」と確認していましたが、「仰木さんはほぼほぼ中止にするから。ブルペンでそんな一生懸命作るな。ブルペン入ってしばらくたってから中止っていう可能性がある」と言われていたといいます。

川上「そしたら全然、そのまま試合が始まったっていうね。森繁さんが悪いわけじゃなくて。とにかく向こうの作戦が色々やってくるというのが分からずに、どんどん進んでいってしまった」

結局、中止になるという言葉を信じて万全の準備ができていなかった川上さんは、本来の力を発揮できず、7回を投げて自責点6という苦しい展開になってしまったのです。

あのホームランから20年

「泣けてくる」「立ち直れない」という、普段は前向きな川上さんから、珍しくネガティブな言葉が飛び出した今回。パーフェクトゲームに挑んだあの日の衝撃がいかに大きかったかが伝わってきます。

今年も交流戦の季節が近づいてきました。セ・パ交流戦20周年を迎えるこの夏、どんな名勝負が生まれるのでしょうか。

次回は川上さんによる2006年シーズンの振り返りをお届けします。
(minto)
 

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