CBC web | 中部日本放送株式会社 / CBCテレビ / CBCラジオ

MENU

東野圭吾さんに捧ぐ~『秘密』『容疑者Xの献身』『幻夜』どれも大好きで選べない

東野圭吾さんに捧ぐ~『秘密』『容疑者Xの献身』『幻夜』どれも大好きで選べない
イメージ画像:「本を読む男性」(写真ACより)

大好きだった作家を失うことが、これほどショックだと痛感する2026年(令和8年)の盛夏となった。東野圭吾さんが亡くなった。享年68。あまりに早すぎる旅立ちに呆然としている。

関連リンク

【画像ギャラリー】東野圭吾さんに捧ぐ~『秘密』『容疑者Xの献身』『幻夜』どれも大好きで選べない

『放課後』からの作家人生

東野圭吾さんとの出会いは、デビュー作である『放課後』(1985年・講談社)だった。筆者はミステリー作品が好きで、毎年必ず、江戸川乱歩賞の受賞作品を購入して読んでいた。東野さんの『放課後』は第31回乱歩賞を受賞した。女子高校で起きた密室殺人を描いた内容で、東野さん自身が大学時代に所属していたアーチェリーの部活動も舞台として登場する。とにかくみずみずしい文章に圧倒され、ミステリーを読んだと同時に、青春小説を読んだ思いだった。

遠藤周作さんが絶賛

デビュー作『放課後』初版本:筆者私物

手元にある『放課後』初版本、ハードカバーなのに「定価1000円」という価格にも時代の流れを感じる。そして、あらためて驚くのは、帯(オビ)の推薦文を書いているのが、芥川賞作家である文豪・遠藤周作さんなのだ。「こわいぞ。読んでごらん」というフレーズと共に、こう紹介されている。

「登場する女子高生たちは、いずれもイキイキとしています。(中略)彼女たちが、大人の先生たちの想像をこえて動く-そこが、とりわけ興味深かった。」

東野さんは後に直木賞を受賞するが、当時から注目された新人作家だったのだろう。

100冊以上の作品群

筆者の自室にある書棚には、2段を使って“東野圭吾コーナー”を設けている。スペースの関係から前後に重ねて2冊ずつ入れているのだが、それでも作品が増える度に置き場所がなくなっていく。縦に並べるだけではなく横に寝かせて置いても足りず、書棚の3段目も使い始めた。『放課後』から最近の『あなたが誰かを殺した』(2023年・講談社)まで、ぎっしり並ぶ作品群を前に、あらためて淋しさがこみ上げてくる。

『秘密』は嗚咽しながら読む

最も好きな作品は『秘密』(1998年・文藝春秋)である。スキー旅行のバス事故で妻の心が娘の身体に乗り移るという、何とも奇想天外なシチュエーションながら、家族愛と夫婦愛、男女の愛が見事に紡がれている。ラスト10ページは、嗚咽しながら読んだ思い出がある。読書しながら感動して泣いたのは、これが初めての経験だった。

『容疑者Xの献身』の衝撃

直木賞を受賞した『容疑者Xの献身』(2005年・文藝春秋)には“ぶったまげ”させられた。物理学者である湯川学(ガリレオ)シリーズ初長編。そこで描かれた殺人事件のトリックは、それまでも古今東西のミステリー作品をいろいろ読んできた自分も、あっと驚かされるものだった。正直、言葉が出なかった。そして、犯罪のトリックだけでなく、そこに至るまでの人間の“業(ごう)”と“深い愛”が描かれた。

『幻夜』で描く男女の人生

松本清張の名作『砂の器』を彷彿させるような大河ストーリー『白夜行』(1999年・集英社)も面白かったが、同じ空気感の『幻夜』(2004年・集英社)が好きだ。阪神・淡路大震災から始まる物語は、主人公の女性の“野心”と、影のように彼女を支え続ける男性の“忠誠”が軸となる。その男女の登場シーンのバランス、ラストの余韻は「これぞ小説!」と拍手を送りたいほどだった。

“加賀恭一郎”への思い

イメージ画像:加賀恭一郎シリーズ・「麒麟の翼」の舞台となった日本橋(写真ACより)

デビュー2作目で初登場し、その時はまだ大学生だった“加賀恭一郎”は刑事となり、『眠りの森』(1989年・講談社)、『赤い指』(2006年・講談社)、『新参者』(2009年・講談社)などを経て、『あなたが誰かを殺した』で久しぶりに連続殺人の謎を解く。加賀恭一郎シリーズは、ドラマ化されて阿部寛さんが演じた。その後、東野さんの小説の中で、加賀について「彫りの深い顔」「背が高い」などの描写が出てきた時は、ドラマを意識して書き始めたのかなと読んでいて楽しくなったこともある。それだけ、阿部さんのキャスティングは、東野さんのお眼鏡にかなったのかもしれない。

わが読書人生からの感謝

イメージ画像:「積まれた本と読みかけの本」(写真ACより)

東野さんの訃報に接し、どの作品について思いを書こうかと、完全に隘路(あいろ)に入ってしまう。それほど面白い小説ばかりなのだ。そして、『放課後』のデビューから40年余り、この間ずっと、自分の読書人生を楽しませ彩ってくれたことに、今はただ感謝の気持ちでいっぱいである。同時に、それ以上の喪失感と寂寥感も味わっている。

先ほど、馴染みの書店を訪れ、最新刊、ガリレオ・シリーズの『永遠の記憶』(2026年・文藝春秋)を予約した。そしてそれを読了した後は・・・これまでの名作たちを、書棚から1冊ずつ出して、読み直すことになるのだろうか。作家・東野圭吾との“読書旅”はこれからも続いていくと信じて。

【東西南北論説風(707)  by CBCマガジン専属ライター・北辻利寿】

この記事の画像を見る

オススメ関連コンテンツ

PAGE TOP