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ドラマ『サインはV』の思い出~バレーボールの“必殺技”に夢中になった時代

ドラマ『サインはV』の思い出~バレーボールの“必殺技”に夢中になった時代
イメージ画像:「バレーボール」(写真ACより)

「VICTORY(勝利)」という英語の意味を知ったのは、かなり早かった。小学生の時代である。きっかけは『サインはV』というバレーボールを舞台としたスポーツ根性ドラマだった。ここに出演していた女優・中山麻理さんの訃報が届いた。享年77だった。

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主人公の宿命のライバル役

『サインはV』は漫画を原作とした実写ドラマで、立木製作所が持つ「立木大和」という女子バレーボールチームが舞台だった。そのチームの選手、岡田可愛さん演じる朝丘ユミが主人公だった。そんなユミのライバルが、中山麻理さん演じる椿麻理だった。最初は同じ「立木大和」のチームメートだったが、ユミと戦うために「レインボー」というチームに移籍する。まさに宿命のライバル、それを中山さんは見事に演じて、強烈な印象を残した。当時は馴染みのなかった言葉で表すならば、まさに「クールビューティー」だろうか。

昭和のバレーボール熱

イメージ画像:「女子バレーの試合」(写真ACより)

ドラマは、1969年(昭和44年)から1970年(昭和45年)にかけてTBS系のチャンネルで放送された。名古屋地区では、毎週日曜日19時半からの放送だったので、休日の夜の大きな楽しみだった。同じ時期の19時から、フジテレビ系では『アタックNo.1』という、これも女子バレーボールをテーマとした人気アニメが放送されていた。日曜日の夜はまさに“バレーボール尽くし”だった。2つの番組は呼応し合って、バレーボール熱を盛り上げた。

必殺サーブ「稲妻落とし」

『サインはV』の魅力は、何と言っても、現実では考えられないような“必殺技”だった。今でもすぐに名前が出てくる。「稲妻落とし」と「X(エックス)攻撃」である。「稲妻落とし」は、主人公の朝丘ユミが打つ変化球サーブ。ユミが相手コートに背を向けて、右腕をぐるぐると回し、ボールを天井高く打ち上げる。すると、落ちてくるボールは稲妻のようにジグザグに変化して相手選手を襲うというものだった。サービスエースを狙う必殺サーブである。

離れ技「X(エックス)攻撃」

「X(エックス)攻撃」は、2人がペアになって繰り出す攻撃技である。朝丘ユミと、もうひとり、范文雀(はんぶんじゃく)さんが演じたジュン・サンダースによる“変則アタック”だ。2人はネットに沿ってお互いに向かってダッシュし、ジャンプする。ネットを越えるほど高い空中で「X」の字のように交差してボールを打つ。相手は、どちらが打ってくるか分からないため、ブロックで防ぐことができない。まさに“離れ技”だった。

試してみる小学生

「稲妻落とし」と「X(エックス)攻撃」、ドラマの世界だとは分かっていても、試してみたくなるのが子供心である。小学生の自分も、何とかこの技をできないかとチャレンジした。まず「稲妻落とし」である。後ろを向いて、腕をぐるぐると回し、ボールを打ち上げる。ここまではできる。しかし、当然のことながら落ちてくるボールはジグザグにならない。もっとも、高いところからのボールを相手がレシーブし損ねてくれることもあった。「X(エックス)攻撃」は、すぐに諦めた。そもそもドラマのように、ネットを越えるほどの高さまでジャンプできない。夢は夢、やはりテレビドラマの中にこそ“ある”のだと知った。

天に昇ったドラマ出演者

イメージ画像:「バレーボール」(写真ACより)

中山麻理さんの訃報が届いた2025年(令和7年)7月、バレーボールは「ネーションズリーグ2025」の熱い戦いが、男女共に繰り広げられ、大勢のファンを沸かせている。ドラマで朝丘ユミの同僚だったジュン役の范文雀さんは、すでに2002年(平成14年)に、また、彼女たちを指導した厳しくも愛情あふれる牧圭介コーチ役だった中山仁さんも、2019年(令和元年)に、それぞれこの世を去っている。

目の前のコートで続く現実の熱戦の中、かつて主人公の強力なライバル役を演じた中山さんを偲ぶ。今ごろ、天の上でも“椿麻理”が加わって、バレーボール人気がますます高まっているかもしれない。そんな思いで夏の夜空を見上げてみる。

【東西南北論説風(606)  by CBCマガジン専属ライター・北辻利寿】

※『北辻利寿のニッポン記憶遺産』
昭和、平成、令和と時代が移りゆく中で、姿を消したもの、数が少なくなったもの、形を変えたもの、でも、心に留めておきたいものを、独自の視点で「ニッポン記憶遺産」として紹介するコラムです。

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