ドラゴンズに“別れの季節”到来、大量19人の戦力外選手に思う

工藤公康新監督を迎えた中日ドラゴンズは、秋季キャンプをスタートした。その陰で、これまでに19人の選手に来季の“戦力外”が通告された。(敬称略)
最下位チームに粛清の風

これがプロ野球選手の宿命である。2026年(令和8年)シーズンの終了と共に、ドラゴンズでも、来季の契約を結ばない選手への通告を行ってきた。支配下選手の中には、育成選手としての再契約を打診された選手もいるが、リーグ最下位、さらにこの5年間で4度もの最下位と低迷するチームには、かつてない厳しい風が吹いている。戦力外となった選手たち。ファンとして見て納得する顔もあれば、驚きの顔もいる。
松木平の戦力外に驚く

19人の中、最も残念だったのは松木平優太投手である。2020年(令和2年)のドラフトで、育成3位の指名を受けて入団した右腕である。松木平は2軍で着実に力をつけて、4年目の2024年(令和6年)にはウエスタン・リーグ(当時)で実績を残し、7月に支配下選手となった。背番号も「69」と2ケタになった。3度目の先発で、見事にプロ初勝利を手にした。幼い頃から育ててくれた祖母への感謝を涙ながらに語ったヒーローインタビューの感動は忘れられない。
期待の背番号「29」だった
松木平の同期のドラフト1位は、高橋宏斗(※「高」は「はしごだか」)である。この時も球場に駆けつけていた。この2024年のドラフトで、金丸夢斗と吉田聖弥の左腕2人が入団し、宏斗と松木平と合わせて左右4人の“同学年”投手が、これからのドラゴンズを背負っていくものと期待したものだ。翌年から松木平は背番号「29」を背負うことになった。かつて、鈴木孝政さん、与田剛さん、そして山井大介さんら、名だたる右投手が付けてきた背番号である。今後は育成契約の打診を受けるのか、または他球団でのプレーをめざすのか、いずれにせよ、松木平は背番号「29」とわずか2年で別れを告げる。
ボスラーは駐米スカウトに

こういう形もあるのかと驚いたのは、ジェイソン・ボスラーだった。(ドラゴンズでは)2年間プレーしたが、現役を引退して、駐米スカウトに転身する。外国人助っ人選手にとって、33歳という年齢は「まだまだ」である。同い年のミゲル・サノーは来季もドラゴンズの主軸を担うことになるからだ。そんなボスラーにとって、思えば今季は不運だった。
来日1年目、主にファーストを守り打撃成績を残していたが、2年目は井上一樹前監督のベンチ采配によって、外野を守ったり、試合途中に内野に回ったり、本人も落ち着かないゲームが続いた。ひょっとしたら複数年契約だったのか、とも想像するが、穏やかな人柄であり、今後は良き選手を工藤竜に送りこんでもらいたい。
ほぼ姿を消す2023年ドラフト組

最も残念だったのは、立浪和義監督時代の2023年(令和5年)ドラフト組である。支配下6人、育成4人、合わせて10人が指名されて、竜のユニホームを着た。しかし、今回の戦力外通告によって、残るのは、ドラフト1位だった草加勝ただひとりとなる。この年のドラフトは、即戦力投手を中心にした指名かと思われたが、直前に立浪監督が、社会人外野手の度会隆輝の1位指名を公表。抽選の結果、度会は横浜DeNAベイスターズに入団した。ドラゴンズは一転、投手の草加を指名した。
編成方針を貫くドラフトを

度会の今季の活躍を見ると、その1位指名も「あり」だったかと思うものの、2位と3位で立て続けに内野手を指名するなど、方針が二転三転する不思議なドラフトだった。前年には、村松開人、田中幹也、そして福永裕基という内野手を3人も獲っていたからである。
この年のドラフト結果を“清算”したかのような、今回の戦力外通告とも言えそうだが、かつて星野仙一監督は「今後10年のチーム作りに影響する大切な場」として、ドラフト戦略ではスカウトの意見にもしっかり耳を傾けた。今年のドラフト会議では、工藤新監督が「スカウトにまかせる。あとはどう育てるか」と語っていた。
工藤新監督の檄(げき)

秋季キャンプを前に、工藤新監督は選手たちに、今季限りで戦力外となった多くの同僚選手を例にして「そうならないために、力をつけていかなければいけない」と檄を飛ばした。口調こそ優しいものの、内容は厳しく、しかしまったくその通りなのである。チームとしては選手獲得の方針をフロント中心にしっかりと見据えること、選手たちは“プロとして”野球を続けることができる喜びと厳しさを感じること、そんな秋になってほしい。
戦力外となった中には、育成を打診されながら秋季キャンプに参加している選手も松木平の他に複数いる。期間の長短はあるものの、ドラゴンズブルーのユニホームを着た縁がある19人。これからの人生に、竜党の立場からもエールを送りたい。
【CBCマガジン専属ライター・北辻利寿】
※中日ドラゴンズ検定1級公式認定者の筆者が“ファン目線”で執筆するドラゴンズ論説です。著書に『愛しのドラゴンズ!ファンとして歩んだ半世紀』『竜の逆襲 愛しのドラゴンズ!2』(ともに、ゆいぽおと刊)『屈辱と萌芽 立浪和義の143試合』(東京ニュース通信社刊)ほか。
















