井上ドラゴンズ“裏切り”の交流戦失速、なぜクリーンアップに代打を出すのか?
4連勝を喜んだら、それを上回る5連敗。サヨナラ勝ちで沸いたら、次の試合は逆転負け。竜党の応援が裏切られ続けている。2026年(令和8年)セ・パ交流戦、井上竜は12試合を戦って5勝7敗、今季の借金は最多の17となった(成績は6月7日現在)。リーグ最下位を脱け出せず、5位の背中が次第に遠ざかり始めている。(敬称略)
ホークス打線の鋭いスイング

それでも応援のために、本拠地バンテリンドームのスタンドに通っている。6月2日、福岡ソフトバンクホークスとの初戦を観戦した。台風6号が近づいている雨の日だった。先発のカイル・マラーは、ここ最近の好調ぶりを継続していて、ヒットは打たれながらも、ホークス打線を抑えていた。
しかし、それを上回るのが、日本一チームの打者たちだった。その振りの力強さは、素人目にも十分に分かる。気持ちいいほどのスイングで、安打が積み重なり、得点も入る。左投手のマラーなのに、ホークス打線は2番から7番まで左打者が並ぶ。右も左も関係ない強力打線なのだ。
あわや完全試合か?

一方のドラゴンズ打線は、ホークス先発投手の大津亮介に手も足も出ない。150キロを超えるボールはないものの、その球速がマラーよりも速く感じる。5回を終えても、6回を終えても、ひとりのランナーも出せない。「パーフェクトゲーム」という空気感が、ドームに漂い始め、スタンドの近くの席からも「ひょっとして完全試合?」というファンの声が聞こえてきた。
松中コーチはホークスOB
ドラゴンズベンチは円陣を組むこともなく、一度だけ構えを見せた村松開人以外はセーフティバントで揺さぶることもなく、淡々と大津に打ち取られていった。7回裏の1死から2番の田中幹也がヒット、ドームは何とも複雑なため息に包まれた。ドラゴンズの松中信彦打撃統括コーチは、ホークス出身であり、鷹のユニホームを着て三冠王も取った強打者だったはずだ。古巣相手にベンチの指導が実を結ばないことが、竜党として何とも歯がゆい。
3番に代打を出す疑問采配
ベンチ采配には疑問が残った。7回裏、田中がヒットで出塁した後に、3番に入っていた板山祐太郎に替えて、福永裕基を代打に送った。大津は、左打者の板山の方が嫌だったのではないか。それ以上にクリーンアップの「3番打者」に、わずか2打席だけで代打を送る策には首を傾げる。以前の試合でも、1番に入れた大島洋平に3打席目で早々に代打を送ったことがあったが、何のためのスタメンなのだろうか。ファンはもちろん、交代させられた打者のモチベーションは大丈夫なのだろうか。
ライオンズには・・・・・・
試合は、大津に1安打1四球で、プロ初完投初完封を許してしまった。大津は2022年(令和4年)のドラフト2位投手であり、その年の竜ドラフト1位である仲地礼亜は、現在2軍である。同期投手の現状を比べると、それもまた、ファンとしての悔しさが募る。「牛耳られた」と井上一樹監督が述懐したこのゲームからホークスには3連敗し、前カードのオリックス・バファローズから5連敗となった。続く埼玉西武ライオンズとの3連戦も1勝2敗と負け越した。
石川と鵜飼、起用し続けるべき

交流戦の収穫を挙げるならば、石川昂弥と鵜飼航丞だろう。厳密に言えば「収穫になるはず」であろうか。これまでなかなか成長の一線を越えられなかった“未完の大砲”2人が打ち始めてきた。しかし、なぜ継続してスタメンで起用しないのだろうか。「収穫」もこのままでは“未完”に終わってしまう。
5番・石川の代打だった阿部寿樹がサヨナラヒットを打った試合、もちろんファンとして勝利は嬉しい。しかし、あのような勝負どころは、石川にまかせてほしかった。目先の1勝が欲しいことは理解できるものの、ドラゴンズには“明日”に向けての長期的な目線が、あまりにも欠けていやしないか。
過去には6連敗の“鬼門”

ライオンズとの試合でも、延長11回裏2死満塁のサヨナラ勝ちのチャンスで、致命的なけん制アウトがあった。相変わらずミスは多く、竜の野球はベンチ采配も選手のプレーも、隙(すき)だらけだ。
交流戦は残り2カード、千葉ロッテマリーンズ、そして、北海道日本ハムファイターズとの6連戦である。すべて敵地での戦いであり、2022年(令和4年)の立浪和義監督1年目は、同じシチュエーションで6連敗した“鬼門”である。ミスをしていては、その門を無事に通り抜けることは到底できない。
バンテリンドーム3階にある「ドラゴンズミュージアム」では、球団創設90周年を記念して写真展が開かれている。ゲーム観戦の前に訪れたが、過去の素晴らしい戦いの名場面が、あまりに眩しかった。そして、井上竜の現状を目の当たりにして悲しくなった。雨の中の家路は足が重すぎた。
【CBCマガジン専属ライター・北辻利寿】
※中日ドラゴンズ検定1級公式認定者の筆者が“ファン目線”で執筆するドラゴンズ論説です。著書に『愛しのドラゴンズ!ファンとして歩んだ半世紀』『竜の逆襲 愛しのドラゴンズ!2』(ともに、ゆいぽおと刊)『屈辱と萌芽 立浪和義の143試合』(東京ニュース通信社刊)ほか。











