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医療法人の「事業承継」は株式会社とどう違う?

医療法人の「事業承継」は株式会社とどう違う?

少子高齢化により、中小企業や小規模事業者の後継者難が大きな経営課題となっています。そして、元気なうちに資産の管理や、次世代へのスムーズな承継について考えていく必要性も高まっています。CBCラジオ『北野誠のズバリ』「シサンのシュウカツにズバリ」では、事業承継と資産承継について専門家をゲストに学んでいきます。8月20日の放送では、「医療法人の事業承継」の「持分ありorなし」について北野誠と松岡亜矢子が三井住友信託銀行 財務コンサルタント 大橋基充さんに伺いました。

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医療法人の「持分」とは

今回は「持分あり医療法人の事業承継」について取り上げる大橋さん。「持分」とは何でしょうか?

大橋「持分とは、医療法人の解散時等に、医療法人に蓄積された残余財産の分配を出資額に応じて受ける権利のことを言います」

「持分」には株式会社の「株式」と同様に財産的価値があるので、相続税の課税対象となります。

北野「持分のない医療法人もあるんですか?」

大橋「平成18年の医療法改正で、平成19年(2007年)4月1日以後に設立された医療法人には、持分はなくなりました」

持分なしの医療法人の場合、「解散時の残余財産は国や地方公共団体等のものになる」と続けます。

持分の有無の比率

北野「現在の持分ありと持分なしの医療法人の比率はどれくらい?」

厚生労働省の統計によると、令和7年3月末時点の医療法人数は59,419法人になりますが、全体の6割は持分あり(35,766法人/60.2%)、4割は持分なし(23,653法人/39.8%)だそうです。

北野「医療法人と言うと、規模の大きな病院のようなイメージですか?」

大橋「そうとは限りません。昭和60年の医療法改正で医師が1人でも医療法人を設立できるようになりました」

昭和60年以前の医療法人には3人以上の医師が必要だったため、医師1人の診療所は個人の開業医でした。
現在は医療法人全体の8割程度が医師1人の医療法人になるとのこと。

北野「そうすると医療法人全体の6割が持分ありで、そのうち医師1人が8割とすると、持分ありの1人医師医療法人が全体の半分近くになる?」

大橋「そうですね。そのような医師の方の事業承継が今回のテーマです」

株式会社との違い

持分ありの医療法人の出資金は相続財産の対象について「非上場会社の株式のようなもの?」と北野。
大橋さんは「イメージとしては近い」としつつ、株式会社と違う点を下記に挙げました。

まずは「配当」。
株式会社は配当ができるので、出資者である株主は配当金を受け取ることができますが、医療法人は医療法で配当が禁止されているため、出資者は配当を受け取ることができません。

次に「議決権」。
株式会社は保有している株式数に比例して議決権の数で決定します。
一方医療法人の議決権は出資者の多数決で決まります。具体的には、株式会社の株主に相当する人を医療法人では「社員」と言いますが、その「社員」は出資割合に拘わらず、1社員1議決権となります。

北野「では、出資金の半分以上を出資していても、他の人に反対されたら医療法人の意志決定が思うようにできないということ?」

大橋「そうですね。医療法人の後継者と経営方針が違う『社員』がいると面倒なことになりかねません」

持分ありの場合の注意点は

最後に「持分ありの医療法人の事業承継対策で注意しておくこと」について尋ねた北野。

大橋「持分あり医療法人の出資金の相続税評価額は、税理士等の専門家に概算額を確認いただき、理事長の個人資産に占める出資金の評価額の割合がどの程度になるか、把握しておくことが重要」

出資金の評価額が高額になっていると、後継者が相続税を払えない可能性があるので、その場合は納税資金対策が必要になると続けます。

前述した議決権を考えると、持分あり医療法人の出資金は、可能な限り後継者の相続人に集約することが望ましいとのこと。
「そのために理事長が遺言を作成しておく必要がある」とアドバイスした大橋さんでした。
(野村)
 

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