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ドラゴンズ温故知新!05「一塁手」編~ビシエドに期待する「恐怖の4番打者」

ドラゴンズ温故知新!05「一塁手」編~ビシエドに期待する「恐怖の4番打者」

中日ドラゴンズは2020年に球団創設84年目を迎える。伝統あるその球団史は数多のスター選手に彩られ、熱き戦いの記録と記憶をファンの心に刻みつけてきた。筆者が独断で選んだ歴代ベストナインと現役選手を比較しながら、7年続くBクラスからの脱出に向けて、新たなシーズンへの期待と応援を届ける連載企画である。
第5回のテーマは「一塁手」。(敬称略)

中日のファーストは「強打者」

ドラゴンズの歴代一塁手は、強打者が多いイメージだ。古くは初代「ミスター・ドラゴンズ」と呼ばれた西沢道夫。投手として20勝、別のシーズンに打者として40本塁打を記録した。背番号「15」はドラゴンズに2つしかない永久欠番である。3度の三冠王をひっさげてドラゴンズ入りした落合博満も、中日時代の後半は一塁を守った。台湾出身の先輩である王貞治の「一本足打法」を見習った大豊泰昭も記憶に残る一塁手だ。ホームラン王にも輝いたが、病のため51歳で急逝した。最近では、タイロン・ウッズ、トニ・ブランコという落合監督時代の“黄金期”を支えた豪打の“助っ人”もファーストだった。

歴代ベストナインは「谷沢健一」

居並ぶ強打の一塁手の中、歴代ベストナインに選んだのは谷沢健一だ。早稲田大学からドラフト1位で入団すると、ルーキーだった1970年(昭和45年)に左翼手としていきなりレギュラーになる。4年後の1974年、ドラゴンズが讀賣ジャイアンツの10連覇を阻止してリーグ優勝をした時には、ポジションは一塁手だった。
谷沢健一というスラッガーの歩みは2度の首位打者に集約される。最初は入団以来の背番号「14」を「41」に替えて心機一転のぞんだ1976年シーズンだった。巨人の張本勲との激しい首位打者争いの末、打率3割5分4厘8毛4糸、わずか6糸の差で初めてのタイトルを獲得した。
2度目の首位打者はケガから復活しての感動的なものだった。大学時代から悩まされていたアキレス腱痛、ほぼ1年にも及んだ治療からグラウンドに戻った1980年に、ヤクルトスワローズの若松勉を破り、3割6分9厘という高い打率でタイトルを獲得した。

ベストナイン選考理由

谷沢健一は、近藤貞雄監督が“野武士野球”を掲げてリーグ優勝した1982年(昭和57年)には「4番ファースト」だった。応援歌『燃えよドラゴンズ!』では、1974年の優勝時は「5番」として「クリーンヒット」、1982年の優勝時は「4番」として「ホームラン」と歌詞で紹介されている。一塁手としてのベストナインは4度獲得した。「谷沢スマイル」と呼ばれた笑顔と共に、チャンスには必ず打ってくれた勝負強く頼もしい打者だった。

ビシエドで安定ポジションだが・・・

2016年シーズンから4年間、ドラゴンズの一塁を守っているのはダヤン・ビシエドである。入団早々の開幕戦からの3試合連続ホームランは、ウッズそしてブランコといった強打の一塁手“助っ人”を彷彿させた。3年目の2018年8月には月間最多安打47本のセ・リーグ新記録を達成した。イチローの持つ48本の日本記録には及ばなかったが、この年は首位打者とシーズン最多安打のタイトルも獲得した。2019年も4番打者として全試合に出場しリーグ2位の打率を残した。ベストナインにも2年連続で選ばれた。しかし、一方で併殺打は22もあった。好機での度々の凡退に、ファンとして何度もため息をついたシーズンだった。

2020年シーズン展望

現時点では開幕戦で「4番ファースト、ビシエド」が場内アナウンスされるであろう。
31歳で迎えるシーズン。複数年契約も続いており、本人も腰を据えてプレーに打ち込める環境だ。息子ジュニア君も名古屋の小学校に通い、またビシエド本人も11月の「ファンフェスタ」にも外国人選手としては異例の参加をするなど、ドラゴンズブルーに染まっていて頼もしい。現時点でビシエドに代わって、ファーストでスタメン出場できそうな選手はいない。だからこそ、ビシエドの好不調がチーム成績に大きく影響する。一塁手という守備位置はいいとして、最近のビシエドはホームラン打者というより「巧打者」のイメージである。ビシエドに代わって「4番」を打つことができる打者の登場が、ドラゴンズに課題のひとつであろう。あるいは、ビシエド自身のさらなる覚醒か。ドラゴンズを、そして本拠地である名古屋の町を愛してくれている選手だけに、大活躍だった2018年シーズンを上回る打撃爆発に期待したい。

【CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】

※中日ドラゴンズ検定1級公式認定者の筆者が“ファン目線”で執筆するドラゴンズ論説です。著書に『愛しのドラゴンズ!ファンとして歩んだ半世紀』『竜の逆襲  愛しのドラゴンズ!2』(ともに、ゆいぽおと刊)ほか。

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