ドラゴンズ岡林勇希は「イヤなタイプ」ー レジェンドにもらった最高の褒め言葉とその“根拠”

ドラゴンズ岡林勇希は「イヤなタイプ」ー レジェンドにもらった最高の褒め言葉とその“根拠”

開幕1軍生き残りをかけて、野手の誰もが欲しいのは、結果。つまりヒットだ。

しかし、その目先の結果よりも強いインパクトを魅せる、19歳をむかえたばかりの若者がいる。その名は岡林「勇希」。まさに彼は、ドラゴンズ近未来の「勇気」と「希望」だ。

3月3日福岡でのオープン戦、連続日本一のホークス二保投手との対戦で、2球続けてカーブを見送ってからの3球目。速球を振り抜き、右中間へ三塁打。

岡林選手本人から、その時の心境を聞いた。

「緩い球が続いたので、次の速球に刺されないようにだけ意識していました。刺されると、次の球の時まで惑わされるので、ストレートに振り負けないように、前で捉えようとしたのがヒットになりました。“高めの速球をうまくかぶせて”叩けました」

レジェンド2人の褒め言葉

活躍直後、SNSなどネット上にあふれるファンのつぶやき。印象的な「天才岡林」のフレーズが踊る。そして、ドラゴンズのレジェンドからも、まさに!という言葉が出てきたのだ。

「彼は、イヤですね」

福岡での三塁打が出る直前のCBCラジオ生放送「ドラ魂キング」で、川上憲伸さんが口にしたひと言だ。「岡林選手の最大の魅力は?」と問いかけた私宮部の質問に、大エースだった彼だからこその、マウンド上での感性を言葉にしてくれた。

「投球リリースの瞬間、ただなんとなくボールにぶつかってくるバッターのタイプと、ボールをしっかり呼び込んでくるタイプと、投げていて違いを感じます。岡林くんは後者。ピッチャーの方へ向かってくるけど、自分の軸がぶれていないバッターって、イヤ、ですね。あーっしまったという失投をバットで下からこすってファウルにしてくれると助かります」

「さすがにボク、2球続けて甘い球は投げないですから、次で打ち取れます。その点で、岡林君は、下からではなく、上からしっかりかぶせてスイングしているので、ファウルではなくフェアゾーンへのライナーになる。たとえアウトは取れても、次の対戦が、イヤです」

「サンデードラゴンズ」より立浪臨時コーチと岡林勇希選手©CBCテレビ

確かに岡林選手は、オープン戦高打率ではないが、凡打の中身、当たりが鋭いものも多い。そしてその言葉に対し、岩瀬仁紀さんもこう語った。

「ケンシンの見方、分かりますね。毎年この時期、初対戦の若い打者が、一軍のオープン戦に出てきて、イヤだなと思うのは、ストレートに刺し込まれないスイングをされた時です。やはり、投手として、自分のストレートが速いなってイメージを植え付けておきたいものですから」

その点でも、岡林選手は、ファーストストライクに対して、しっかり自分のスイングができている。

レジェンド2人が揃って褒める、この溢れるポテンシャルは、どこで培われてきたのだろうか。コロナ禍で直接取材ができない今、代わりに、2年前のドラフト指名入団会見時の自分の取材ノートを広げてみた。

岡林勇希“根拠”のルーツ

「サンデードラゴンズ」より入団当時の岡林勇希選手©CBCテレビ

三重県の菰野(こもの)高校時代は、まるで劇画のような「エースで4番」。右投手としてMAX153キロの本格派。野手としては、高校通算21本塁打、50メートル走5秒台の俊足、遠投120メートルの強肩。まさに三拍子揃ったプレイヤー。

ドラゴンズ入団会見のひな壇では、二刀流を表明し、

「人と同じことをしても注目されません。可能性がいくつもあるなら、それを活かしたいです」

と、自分の言葉も持ち合わせている。直後の沖縄キャンプ時には、野手一本での勝負を決意し、昨年のルーキーシーズン初出場で即、プロ初ヒットに繋げた。

ドラフト指名のかなり前から獲得に動いていた、ドラゴンズ清水昭信担当スカウトも、当時から野手としての可能性を見抜いていた。

その清水スカウトから教わった話だが、お父様と岡林選手は、同じ野球遍歴だという。父親は、社会人野球の名門、サンジルシ醸造の名選手だったそうだが、投手から野手に転向して活躍されたそうだ。学生野球での野手転向は、さほど珍しくなくとも、プロというトップレベルでの決断は、親子といえども数奇な運命を感じる。

ちなみに、そのお父様が、息子「勇希」の名付け親。地元松阪市の八雲神社で指南をいただいたそうだ。その父親から岡林少年が、幼い頃から一貫して教わってきた打撃のポイントは、1つだと言う。

「左打席から見て、相手のショートの頭を目がけて打つこと」

それは、スイング時の体の開きを防ぐ、という“根拠”も同時に教わっていたそうだ。

***

「サンデードラゴンズ」より岡林勇希選手©CBCテレビ

いよいよ開幕を数日後に控えた今、川上さんや岩瀬さん、そしてこれまで彼の野球センスを見抜き、育ててきたお父様や指導者の方々の期待を胸に、岡林選手は“根拠”を持った「相手がイヤがる」スイングで、開幕1軍切符をつかもうとしている。

思えば、球団初の連覇から、もう10年の月日が経つ。常勝・落合時代の真骨頂は、「相手がイヤがる」野球だった。ならば、再び。彼が活躍するであろう、ドラゴンズの近未来が楽しみだ。燃えよ!ドラゴンズ!

【CBCアナウンサー 宮部和裕 CBCラジオ「ドラ魂キング」水曜(午後4時放送)他、テレビ・ラジオのスポーツ実況担当。生粋の元少年ドラゴンズ会員。早大アナウンス研究会仕込の体当たりで、6度目の優勝ビール掛け中継を願う。】

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