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エラー直後に「ビーストロング」川上憲伸が語るタイロン・ウッズの迷場面

エラー直後に「ビーストロング」川上憲伸が語るタイロン・ウッズの迷場面

CBCラジオ『ドラ魂キング』「川上憲伸、挑戦のキセキ」は、野球解説者の川上憲伸さんが、自身のプロ野球人生を「挑戦」という視点から振り返るコーナーです。10月8日の放送では、マウンドに集まる選手たちの声かけや、タイロン・ウッズ選手との思い出深いエピソードについて伺いました。聞き手は宮部和裕アナウンサーです。

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ピンチの時の声かけ

マウンドに選手が集まるのは、勝利の瞬間だけではありません。ランナーが溜まってピンチの時に、内野手たちが集まる場所でもあります。

川上さんによると、当時は出来上がった選手が多く、「勝手にどうぞやってください」と各自で判断して進めることが一般的でした。しかしドラゴンズの選手たちは、ピンチの場面では頻繁にマウンドに声をかけに来てくれたといいます。

「学校の先生みたいに生徒を教えるように、落ち着きなさいとか、時には元気付けさせるとか、いろんなことを声かけてくれる人が多かったなっていう感じしますね」

荒木雅博選手は派手に話しかけてくるタイプではありませんでしたが、マウンドに来るタイミングを見計らっていたそうです。

「井端(弘和)選手が、このタイミングでマウンドに行くのかなっていうのを、多分二遊間で見ると思うんですよ。行かなかったら、よし、じゃあ今度俺が行こうとかいう感じで荒木選手が来てましたからね」

タイロン・ウッズのエラーで満塁

タイロン・ウッズ選手からの励ましも、ここぞという時にはありました。川上さんが忘れられないのは、タイロン選手がファールフライを取りそこなってしまい、大ピンチになった時のことです。

ベンチから森繁和コーチが来て「おい、しっかり。大丈夫か」と声をかけましたが、川上さんが警戒しすぎてストライクが入らず満塁になってしまいます。

その時、タイロン選手がマウンドに来ました。

「僕のケツにグローブをポンって叩いて、最後、胸に手を当てて『ビーストロング』って言うわけですよ」

後から知った本当の意味

川上さんはその時、タイロンが発した言葉の意味がよく分からなかったといいます。

試合後、通訳の人が「タイロンが珍しく声かけてきましたね」と言ってくれたので、川上さんが「ビーストロング」と言われたと明かし、その意味を聞くと、「逃げるな、お前は自分で強いんだと思え」ということだったそうです。

川上さんは笑いながら振り返ります。

「いやいやいや、ちょっと待てと。それ知ってたら、マウンドでまた意味が変わってたぞ。あなたがあのファールフライを変に拝み取りみたいにして、雑に扱って落ちたんでしょう、みたいな感じで。でも、声をかけて来てくれてうれしいですし」

日本シリーズでの珍プレー

「タイロン・ウッズは僕からしたらおもしろい存在でしたよ」と語る川上さん。日本シリーズの対北海道日本ハムファイターズ戦でも、タイロン選手の印象的なプレーがあったといいます。

ランナー1塁で田中賢介選手が送りバントをして、ボールはタイロン選手の前に転がりました。川上さんがベースカバーでファーストに向かっている途中、普通はベースに向かう方向にトスするところを、タイロン選手は川上さんが走ろうとしているところにストップをかけるように返してきたといいます。

「僕、びっくりして!」

そんな練習は、もちろんしたこともありません。

「記録はヒットじゃないですか。エラーでもなく。ノーアウト1塁ですよ」

荒木選手からの異例の申し出

それを見たセカンドの荒木選手がこんな提案をしてきました。

「憲伸さん、タイロンに取らせるのやめましょう。タイロンが取るゴロは、僕が取りに行きますから。憲伸さんはそのままファーストベースに行ってください。もし憲伸さんが取れるんだったら、そのまま取ってベースを踏んでください」

通常、バントの時はセカンドがファーストベースカバーに行くのが基本ですが、荒木選手は「僕は直接ホームベース方向に猛ダッシュで行きます」と、異例の守備を申し出ました。

つまり、タイロン選手はいないものとして、ふたりで対処するという「いびつなシフト」を組んでいたのです。

「荒木さんに聞いてもらったら、全部そうなってます。だって、野球になんないですよ。ファーストに送りバントされて、マウンド上の僕にトスをポンって渡されたら…」

エラーも珍プレーも、豪快な打撃がすべて帳消しにしてくれた。タイロン選手はそんな特別な存在だったようです。
(minto)
 

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