送りバント「1球で決めろよ」川上憲伸と谷繁元信の出会い
CBCラジオ『ドラ魂キング』「川上憲伸、挑戦のキセキ」は、野球解説者の川上憲伸さんが、自身のプロ野球人生を「挑戦」という視点から振り返るコーナーです。12月3日の放送では、現役時代の女房役・谷繁元信さんについて伺いました。敵として対戦した頃の第一印象や、ルーキー時代に放ったホームラン、そして頭部死球を与えてしまった試合のエピソードです。聞き手は宮部和裕アナウンサーです。
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谷繁さんは横浜ベイスターズの正捕手として活躍していた選手。川上さんにとって、最初は敵チームのキャッチャーとして対峙する存在でした。
初めて横浜戦で打席に入った時のことを、川上さんは鮮明に覚えているといいます。それは送りバントの場面でした。
「挨拶した時に、ちょっと雰囲気のある人だなって感じましたね」
打席に入る際には、年下でも年上でも、キャッチャーには挨拶をするのが慣例だそうです。その時、谷繁さんから思わぬ言葉をかけられました。
「『頼むからお前、1球で決めろよ』みたいなことを言われて」
川上さんは頷きながら、当てやすい球が来るのかなと期待したといいます。ところが実際に来たのはスライダー。結果はファールになってしまいました。
「『おいおいおい』って、なんか喋るんですよ。それだったらもっとやりやすい球にしてくださいよ、と思いながらも」
こうしたマスク越しのちょっとした会話があるキャッチャーだったと、川上さんは振り返ります。
ホームランを打った瞬間の「あっ
印象的だったのは、川上さんがホームランを打った場面です。横浜の川村丈夫投手が投げたストレートかシュートを、川上さんはスタンドに放り込みました。
ボールが川上さんのバットに当たった瞬間、谷繁さんから「あっ」という低い声が漏れたのです。
「それも会話です。僕の中では。『打つの?』『打てるの?』みたいな感じだったと思うんですけどね」
忘れられない頭部死球
ただ、川上さんが谷繁さんとの対戦で最も記憶に残っているのは、別の出来事です。
川上さんが怪我でシーズン途中まで投げられず、復帰登板となったのが横浜スタジアムでの試合。まだ序盤、谷繁さんが打席に入った時のことです。
「インコースのストレートが抜けて、ヘルメットに直撃したんですよ」
当然、当てられた谷繁さんは川上さんを睨みつけます。しかし、ヘルメット越しに流血しているのが見えていました。頭部への死球で川上さんはそのまま退場。谷繁さんも即座に病院へ向かいました。
頼みの綱は立浪さん
当てた側として、川上さんは非常に不安だったといいます。
「大丈夫かなとか、選手生命に傷をつけてしまったかなとかって思ったので」
どこの病院に行ったのかもわからない状況で、川上さんは考えました。ドラゴンズの誰か関係者で、谷繁さんと連絡が取れる人はいないだろうか。そこで思いついたのが、立浪和義さんでした。
敵同士から始まり、やがてドラゴンズでチームメイトとなるふたり。頭部死球という出来事が、その後の関係にどう影響したのか。川上さんと谷繁さんの物語は、まだ始まったばかりです。
(minto)
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