社会への関わり方やお金の不安…事業を承継した後の人生設計はどうすればいい?

昨今、少子高齢化で中小企業・小規模事業者の後継者難が大きな経営課題の一つとなっています。「人生100年時代」の今だからこそ、元気なうちに資産の管理やスムーズな承継について考えていく必要性が高まっているのです。CBCラジオ『北野誠のズバリ』「シサンのシュウカツにズバリ」では、事業承継と資産承継について専門家をゲストに学んでいきます。9月24日の放送では、必要な「保険」見分け方について、北野誠と松岡亜矢子が三井住友トラストグループ 株式会社経営承継支援 植田駿一郎さんに伺いました。
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この記事をradiko(ラジコ)で聴くM&A後の会社との関わり方は3パターン
今回植田さんが解説したのは、M&Aをした後のセカンドライフやお金との過ごし方などについて。
北野「会社への関わり方としてはどんなパターンがありますか?」
植田さんは「当事者の年齢や社会への関与度合いによって状況が変わる」としつつ、以下の3つのパターンに分かれるといいます。
1, 引継ぎ業務完了後に引退するケース
2, 体が元気なうちは非常勤の顧問や会長として残るケース
3, 社長や社員として引き続き残るケース
一番多い「引退するケース」
まず「引退するケース」は最近一番多く見られるそうです。事例を紹介する植田さん。
とある製造業を営んでいた50代半ばの社長は、M&Aを実行した後に身を引き、買い手企業に会社をしっかりと任せたいという考えでした。
自身は売却代金で趣味のスポーツ観戦や旅行に時間を費やしているとのこと。
植田「前の社長が残ると、現場の社員は前の社長と新社長の間に挟まれてしまい、やりにくい場面も多くなる。きれいさっぱり、という意味ではこの方法が望ましい」
ただ、この方法でM&Aを進めていくためには、ある程度会社を組織化しておくことが必要になります。社長が抜けたら会社がまわらないとなると、買い手企業は引き受けができなくなってしまいます。
明確な業務範囲が重要なケース
続いての「顧問や会長として残るケース」ですが、非常勤で週に1回か2回、会社に顔を出すという形です。
とある建設業を営んでいた社長は、月に何度か会社に顔を出して、お小遣い程度の報酬をもらいながら、ゴルフ三昧の日々を送っています。
前社長の籍が残っていることで、不測なトラブルにも速やかに対応できるなど、取引先や従業員に対しても説明がしやすい方法です。
植田「注意点としては、旧社長がいるという安心感からか、なかなか引き継ぎが進まずにM&Aをしたのに今までと変わらない、という状況になり得るということ」
このようなことにならないように「業務範囲を明確にしておくことが重要」と続けます。
イチかバチかのケース
最後の「引き続き、社長が社員として残るケース」の事例です。
植田「個人的に一番難しいケースかと思っていますが、上手くいくと絶大な力を発揮できる方法」
植田さん曰く「社長同士が上手くやれるかどうか」がポイントですが、上手くいくコツは買い手側、つまり後任の社長の力量にあるとのこと。
植田「どれだけ上手く売り手側社長さんを使いこなせるか、という点にポイントがある」
今まで植田さんは、うまくいっている事例も見てきていますが、一方で「関係性が厳しい」と感じた事例もあったといいます。
お金が減っていく恐怖
北野「お金の部分も気になると思いますが?」
植田「M&Aで会社を売却すると、今までのような収入はなくなるので、『お金が減っていく恐怖』と戦うことになります。これが皆さんの心配しているポイント」
しかし植田さんは「話は意外と簡単」と続けます。
会社の経営におけるお金の勘定を個人にも当てはめて考えれば済むだけのこと。
毎月の出費、趣味への投資、老後資金、相続などの今後発生し得ることを見積れば、おおよその必要になる資金を計算できます。
「投資に回すお金」「使ってもいいお金」と分けて考えれば、おのずと無駄な不安を感じることなく進められると続けます。
植田「このようなシミュレーションを一緒にすることもあるんですが、経営者とは違った意外な一面があることに気付くこともあるんで、面白いんですよ」
北野「なるほど。確かに会社の金勘定は得意だけど、個人のことはめっきり、みたいな社長は多いイメージですね」
植田さんは、M&Aをした後の会社への関与方法、お金の問題と切り分けて整理していけば必ず答えは見えてくるので、ぜひ検討してほしいと促しました。
(野村)
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