経営者の体調不良で企業価値が下がる?M&Aに必要なもの

少子高齢化により、中小企業や小規模事業者の後継者難が大きな経営課題となっています。そして、元気なうちに資産の管理や、次世代へのスムーズな承継について考えていく必要性も高まっています。CBCラジオ『北野誠のズバリ』「シサンのシュウカツにズバリ」では、事業承継と資産承継について専門家をゲストに学んでいきます。9月10日の放送では、東海地方で運送業をしていた会社のM&Aについて、北野誠と松岡亜矢子が三井住友トラストグループ経営承継支援 植田駿一郎さんに伺いました。
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この記事をradiko(ラジコ)で聴く後継者不足と体調不良
今回植田さんは、東海地方で運送業をしていた会社の事例を紹介しました。どのような会社だったのでしょう?
植田「売上は年間5億円でドライバーの数は50名ほど。主に仕事の内容としては、自動車の部品を運んでいました」
売り上げは順調な中、なぜM&Aを選択したのでしょうか?
植田「社長は2代目で65歳と高齢。他にも後継者不在とご自身の体調不良を理由に譲渡を決意されました」
買い手にはどのような会社が手を挙げたのでしょうか?
植田「関東地区にある物流の会社さんで、売上は20億円ほど」
理由は、東海地区の拠点を構えたいこととドライバーの確保のため手を挙げました。
社長の体調不良で頓挫
その後、M&Aはスムーズに進んだのでしょうか?
植田「それが、当初、売り手社長さんからご相談をいただいたのは2019年頃で、体調不良を理由にM&Aを検討し始めたんですが、社長さんの体調が悪化して」
その後、入退院を繰り返す日々が続きM&Aを進められなくなりました。
北野「そこまで悪化しちゃたんですね。そのあと回復されたんですか?」
植田「はい、なんとか回復してM&Aを再開しようとしたんですけど、、、」
今度は、両親に相続の手続きなどが発生し、再度M&Aは中断。いろいろと落ち着いてM&Aを正式に再開できるのには、約4年の年月がかかったと植田さん。
4年は長い月日です。M&Aも頓挫してしまい、会社の業績は悪化しなかったのでしょうか?
植田「やはり、売り手社長さんの体調不良が判明してからは業績が低迷しまい、この4年間で、かなり企業価値が下がってしまいました」
そして、業績の低迷によりドライバーのモチベーションも低下してしまい、一部のドライバーの流出も始まりました。
植田さんが依頼を受けてから、買い手企業の探索は、かれこれ1年くらいかかったといいます。
植田「300社くらいに声をかけてやっと見つかったのが先程お話した会社だったんです」
北野は、売り手社長が体調不良となると「話を進めにくかったんじゃない?」と懸念すると、植田さんは同意します。
売り手社長は、体調回復後も入退院を繰り返していた為、本来であれば直接面談して聞きたいようなことがあっても面談が出来ない時期もあり、買い手企業からすると不安になる場面もあっただろうと推察します。
北野「病院も今は面会の制限時間もありますからね」
M&Aは「時間」「体力」「精神力」
北野が今回の事例のポイントを伺いました。
植田「後継者がいない場合は、お元気なうちにM&Aの準備を始めることをおすすめします」
今回の事例のように、病気などご自身の体調に何かあってから動くと、自社の価値が下がってしまったり、買い手企業さんが見つかりにくくなったりと、M&Aのハードルが高くなってしまいます。
植田さん曰くM&Aは「時間」「体力」「精神力」が必要。経営者として適切な判断ができるうちに準備に入ることが大切だと促しました。
北野「M&Aを始めようと思っても、少なくとも2年くらいはかかる」
植田「引継ぎも考えると時間がかかります」
植田さんは情報収集からでもいいので、早めに始めてほしいと念を押しました。
(野村)
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