建設現場で働く女性技術者の本音。体力差も、やりがいも、現場で見えてきたこと
建設業は、今も男性が多く活躍している業界というイメージがあります。しかし、近年は女性ならではの視点や強みを生かしながら活躍する技術者も増えています。
大有建設株式会社(以下、大有建設)で働く山田翔子さんもその一人。入社4年目の現場監督として、工事の進行管理だけでなく、協力会社や地域の方々との調整役として現場を支えています。規模の大きい仕事だからこそ欠かせないのが、人と人をつなぐコミュニケーション。相手の立場に寄り添いながら丁寧に関係を築く山田さんは、女性ならではの細やかな気配りや柔軟な対応力を生かし、体力面などの足りない部分は工夫を凝らしてフォローしています。
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令和7年度(2025年度)名古屋市子育て支援企業の最優秀賞を受賞した大有建設。今回は、同社で働く山田さんを中心に、子育てを経験しながら働き方を変えてきた先輩の石川智子さん、総務部の青木真琴さんにも話を聞き、これまで感じてきた戸惑いや、日々の工夫をたどりました。

現場を動かすのは、判断力とコミュニケーション

山田さんは現在、現場監督として高速道路の補修工事や、駐車場を造る工事などに携わっています。
現場監督と聞くと、力強く現場を引っ張っていく姿を想像する人もいるかもしれません。しかし、取材中の山田さんは、やわらかい雰囲気で、言葉を一つひとつ選びながら話す姿が印象的でした。
現場監督は、作業員、発注者、協力会社など、さまざまな立場の人のことを考えながら工事を進める仕事です。現場では、自分で判断しなければならない場面も多く、その判断が、実際の作業や現場の進み方に直結します。
山田さん:「自分の判断が現場につながることに、やりがいを感じます」
山田さんは入社前、建設業に対して「男性社会」というイメージを持っていました。作業員や職人に対しても、寡黙で少し怖い印象があったといいます。
しかし実際に働いてみると、その印象は変わりました。現場では、作業員も協力会社の人も、積極的にコミュニケーションを取っています。山田さんもさまざまな人から声をかけられることもあれば、工程や作業内容について自ら話しかける機会も多くあります。
山田さん:「先輩からもよく、コミュニケーションは大切だと言われています。これからも続けていきたいです」
大きな工事を動かす仕事だからこそ、丁寧に言葉を交わし、確認し合うことを大切にしています。
体力差はある。だからこそ、違う工夫を探していく

現場で働くなかで、山田さんが難しさを感じる場面の一つが男性との体力差です。
大規模な工事現場で扱う道具は、大きくて重いものも少なくありません。男性が軽く持ち上げる道具でも、山田さんにとっては重く、体に負担を感じることがあり、「同じやり方では難しい」と感じる場面もあるといいます。
ただ、山田さんは体力差を嘆くだけではなく、別の形でフォローできないか、自分なりに考えています。
山田さん:「できるように工夫することが大事かなと思っています。たとえば、重いものを一人で運ばないといけない場面では、台車を用意しています」
山田さんはできないことをマイナスに捉えすぎず、方法を変えながら仕事を進めています。無理して周りと同じ動きをしようとするのではなく、自身の特性や状況に合わせて工夫していくことで、現場での働き方を探してきました。
現場環境も女性が働きやすくなるよう、少しずつ変化しているといいます。大有建設では、工事現場ごとに女性用トイレを設置する現場が増えています。
ただ、最初から女性トイレの環境が十分だったわけではありません。
青木さん:「最初は、女性用トイレを設置したことで女性への配慮は充分とされていたんです。でも、実際は使いづらいという声がありました」
女性用トイレがあっても、男性用トイレと並べて置くだけでは、使いやすい環境とは言えませんでした。女性が一人しかいない現場では、誰がトイレに入っているか分かってしまうことがあり、女性社員にとっては入りづらいという気持ちが生じることがありました。
現在は、現場から少し離れた位置に設置したり、目隠し用のついたてを置いたりするなど、プライバシーや使いやすさに配慮している現場も増えました。
女性用トイレを置く場合、設置するだけではなく、どこに設置するか、入口が見えすぎないかまで考えること。そうした細やかな配慮も、現場で働く女性には大切な環境の一つです。

現場で生まれる地域の人との交流
山田さんは、道路工事に携わることもあります。道路工事の現場では、地域の人から声をかけられることがあるそうです。
「この工事はいつまでですか」
「ここは通れますか」
日々の生活に関わる工事だからこそ、地域の人にとっては気になることも多く、質問されることも少なくありません。山田さんは、女性だから声をかけられやすいのではないかと感じています。
山田さん:「ちょっとでも答えられると、地域貢献しているようで、すごくうれしいんです」
公共工事の現場は地域の日常とつながっています。山田さんはそのことを日々忘れず、目の前の仕事に向き合っています。現場で交わされる何気ない会話も、山田さんにとっては仕事のやりがいにつながっているようです。
現場で重ねた経験は、いつか自分を支えてくれる
山田さんは、現場監督として4年目を迎えました。
me:tone編集部:「今後、どのような技術者になっていきたいですか?」
山田さん:「同じ条件の現場は二度とないと、先輩からよく言われています。だからこそ、現場ごとに対応していかなくてはいけません。どんな環境でも臨機応変に対応していける技術者になりたいです」
大規模な工事を担うことが多い同社の現場では、まったく同じ内容の工事をすることは二度とありません。だからこそ、経験を重ねながら、その場に合わせて考える力が求められます。
山田さんは取材のなかで、かつて現場監督の仕事をしていた先輩の石川さんに聞いてみたいことがあると話しました。
山田さん:「現場監督時代の経験で、今に生きていることはありますか?」
石川さん:「全部だよ。今やっていることは、たとえ違う仕事をすることになっても生きてくるから」

石川さんは現場監督として経験を積み、出産を機に現場をサポートする部門に異動しました。現在はオフィスワークをしていますが、かつて現場で一生懸命取り組んだ経験の一つひとつが、今の仕事を支えていると話します。
現場は、発注者ごと、工種ごとに対応が違います。思い通りに進まないこともあれば、その場で判断を求められることもあります。その経験は、すぐに形になるものばかりではないかもしれません。それでも、現場で考えたことや判断したことは、別の仕事に向き合うときの手がかりになっていきます。山田さんが今感じている大変さも、将来の仕事の土台になっていくのでしょう。
一方で、山田さんには、これからライフステージが変わったときにも技術職を続けていけるのかという、まだ言葉にしきれない不安もあるといいます。
後半では、産休・育休を経て働き方を変えてきた石川さんの経験から、技術職として働き続けるための考え方や環境について考えます。
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