開幕投手の発表、早すぎませんか?逆襲めざす井上ドラゴンズは柳裕也
2026年(令和8年)プロ野球ペナントレースの開幕が迫り、各球団の開幕をつとめる投手の名前も明らかになってきた。球団創設90周年でのV奪還をめざす中日ドラゴンズ、井上一樹監督は開幕投手に柳裕也を指名した。(敬称略)
柳はオープン戦で不安定
ところが、その柳がオープン戦でピリッとしない。開幕投手に指名されてから最初の登板だった3月5日の横浜DeNAベイスターズ戦は5回で4失点。散々だったのは3月13日の東北楽天ゴールデンイーグルス戦で、5回を投げて実に9失点の大乱調だった。最終テストとなった3月20日の千葉ロッテマリーンズ戦は、3回で2失点、三振を5つ奪ったとはいえ、投げた球数は79球。オープン戦3試合の成績は、ホームラン4本を含む15失点で防御率9.69だった。見守るファンとしては不安の残る内容だ。
各球団が続々と発表
このところ、ペナントレースの開幕を前に、各球団による開幕投手の発表が早くなってきている。新しい年を待たずに公表してしまうイメージがあるのは、北海道日本ハムファイターズの新庄剛志監督だが、それに触発されているのか、最近では次々と名前が挙がる。讀賣ジャイアンツでは、ドラフト1位ルーキーの竹丸和幸が阿部慎之助監督によって指名された。新人としては、「エースのジョー」と呼ばれた、1962年(昭和37年)の城之内邦雄さん以来、64年ぶりと言うから話題にもなっている。
早め指名のプラスマイナス
開幕投手を早くに指名するのはなぜか?その投手に対し、監督自らが「期待している」と自覚を促すこと、そして、シーズンを通して「ローテーションの柱」だと他球団やファンにアピールすること、そんな狙いであろう。しかし、それと勝利への戦略は、また違うものがあるはずだ。今は「予告先発」制なので、どんなに遅くても開幕前日には、開幕投手が明らかになるのだが、早めに開幕投手が分かれば、相手チームに対策の時間を与えてしまう逆効果もあろう。
「開幕投手は柳」の理由

今季の井上監督による「開幕投手は柳裕也」発表は、3月1日だった。春季キャンプ中から「今年は誰?」と注目された中、他球団に負けない早めの公表だった。開幕投手の本命と見られた2人、高橋宏斗(※「高」は「はしごだか」)と続く金丸夢斗が、WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)日本代表“侍ジャパン”に選ばれたこともあった。FA宣言をせずにドラゴンズに残留した柳が、沖縄のキャンプで好調だったこともある。しかし、チーム内で指名したとしても、早くに発表する必要はあったのだろうか。チームの状況が常に変化するからだ。
開幕投手を明かさない戦略
侍ジャパンのWBCでの戦いが、準々決勝で終わってしまい、高橋と金丸は、予想よりも早めに帰国してチームに合流できた。それに加えて、オープン戦で続く柳自身の不安定な投球である。帰国した高橋の「開幕に間に合わせます。開幕戦は柳さんだけど」という言葉が心に刺さる。
ドラゴンズは今季も“挑戦者”の立場であることを忘れてはいけない。立浪和義監督時代の3年連続最下位から脱け出したとはいえ、2025年(令和7年)も4位、12球団で最もクライマックスシリーズ出場から離れている“弱い”チームなのだ。何も他球団に倣って、手の内を明かす必要もないし、ぎりぎりまで開幕投手を明かさない戦略はなかったのか。
川上憲伸は開幕投手7度
ドラゴンズの開幕投手と言えば、川上憲伸さんの通算7回がトップである。明治大学の後輩でもある柳は今回がようやく2度目の開幕投手、いかに川上さんが素晴らしいエースだったかを物語っている。川上さんは、2005年(平成17年)から4年連続で開幕投手をつとめたが、その前の年、2004年の開幕投手には、衝撃が走った。川上さんではなかった。今も竜党の間で語り継がれる、川崎憲次郎さんの開幕登板だった。
落合監督の開幕戦略
まだ予告先発のなかった時代だった。このシーズンからチームの指揮を取った落合博満監督が開幕投手に指名したのが川崎投手だった。FA宣言をしてドラゴンズに入団したものの、肩の故障から過去3年間で1度も登板がなかった。その名前が場内アナウンスされた時の、ナゴヤドーム(現バンテリンドーム)のどよめきが、昨日のことのように思い出される。川崎投手は打たれて降板したが、試合はドラゴンズの大逆転勝ち。そのシーズン、ドラゴンズは5年ぶりのリーグ優勝を果たしたのだった。開幕戦からチームに勢いをつけた、落合采配の戦略的中だった。
勝負は「勝てば官軍」である。柳がきっちりと最終調整をして、開幕戦で見事な投球を見せれば、すべての懸念は雲散霧消するだろう。10年目の右腕に期待しながら、広島での開幕プレーボールを待つことになる。
【CBCマガジン専属ライター・北辻利寿】
※中日ドラゴンズ検定1級公式認定者の筆者が“ファン目線”で執筆するドラゴンズ論説です。著書に『愛しのドラゴンズ!ファンとして歩んだ半世紀』『竜の逆襲 愛しのドラゴンズ!2』(ともに、ゆいぽおと刊)『屈辱と萌芽 立浪和義の143試合』(東京ニュース通信社刊)ほか。











