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根尾に続き石川を獲得!ドラゴンズ与田監督の右腕が描く「未来予想図」

根尾に続き石川を獲得!ドラゴンズ与田監督の右腕が描く「未来予想図」

ドラフト会議の“華”は指名が競合チームによる抽選である。
それは1位指名選手のみに限られ、そして複数球団が「欲しい」と思う選手に対してのみやって来る舞台である。球団にとっては抽選に「参加することに意義がある」などとはとんでもない。くじ引きに勝ってこそ“花”を手にすることができる。
そして中日ドラゴンズは2年連続“華”舞台で“花”を手にした。

突然の1位指名候補変更

半世紀以上、ドラゴンズのドラフトを見守ってきたが、2019年は球団史の中でも「珍しいドラフト」だったという印象だ。
会議3週間前のスカウト会議で決めたのは「1位指名候補は投手」。奥川恭伸(やすのぶ)投手(星稜高)や佐々木朗希投手(大船渡高)ら4人の投手の名前が挙がった。
ところが会議前日になって「投手1位指名」という方針は「右の打者」に変わり、与田剛は「石川君で行きます」と地元愛知県・東邦高校のスラッガー石川昂弥(たかや)選手の1位指名を公表した。
1年前、大阪桐蔭高校のスーパースター根尾昂選手についても早い段階で1位指名を公表、抽選で見事獲得したのだが、ドラゴンズは過去にあまりこうした「指名公表」を積極的にしてこなかった印象がある。それが2年続く事前公表である。おまけに「投手指名」が「右の打者」に変わってのドラフト会議前日の突然の公表だった。

石川「一本釣り」かと思ったが・・・

今回のドラフト会議は、奥川・佐々木という超高校級の2人に加えて、東京六大学のエースである森下暢仁(まさと)投手(明治大)の3投手が注目され、いずれも抽選必至と予想されていた。ドラゴンズの本命も地元に近い北陸の奥川投手かと見られていた。
しかし、石川選手の1位指名を公表したことによって、抽選なしの「一本釣り」の可能性も出てきて、正直ドラフト会議を迎えるワクワク感がなくなってしまったことを吐露したい。なぜならドラフト会議の目的は2つあると思っているからである。
ひとつはもちろん「戦力補強」、そしてもうひとつ「チームに勢いをつける」。チームやファンに対してはもちろん、堂々と当たりくじを引き当て、全国の野球ファンにチームの勢いをアピールすることである。その点で複雑な気持ちだったのだが、“野球の神様”はそうはさせなかった。

与田監督2年連続の「神右腕」

2018年ドラフト時の根尾昂選手(C)CBCテレビ

“野球の神様”は「抽選」という土俵にドラゴンズを押し上げた。それも佐々木投手の4球団に次ぎ、奥川投手と並ぶ3球団の競合という厳しい土俵に・・・。
会場で各チームの1位指名が読み上げられる。ドラゴンズの直前であるオリックス・バファローズが石川選手を指名した時は驚いた。さらに福岡ソフトバンクホークスである。王貞治球団会長は「公表したら面白くない」と指名選手を明かさなかったが、結果としてドラゴンズは、前年の根尾選手の4球団競合に続き、思いもかけない3球団での抽選に臨むことになった。
ホークスの工藤公康監督が手を滑らせて封筒を落とした直後に、中央にいた与田監督は「交渉権確定」のカードを右手で掲げたのだった。高らかと。
2年連続日本一の球団が指名してきた選手を獲得できることは「お墨付き」をもらったようで喜びも増す。「戦力補強」と「チームに勢いを与える」ダブル成功である。

野球の神様が微笑んだ!

これまでも当コラムで書いてきたが、北海道日本ハムファイターズのドラフト戦略は実に潔い。「その年の一番いい選手の獲得をめざす」という方針の下、今回も佐々木投手の1位指名を早々の6月に公表していた。結果的に抽選に敗れたが、ドラゴンズが当初1位指名候補のひとりに挙げていた即戦力左腕・河野竜生投手(JFE西日本)を獲得するなど、着実な成果を収めた。
そして、石川選手のドラゴンズはじめ、抽選となった3選手は、千葉ロッテマリーンズが佐々木投手、東京ヤクルトスワローズが奥川投手、と事前に指名選手を公表したチームが引き当てた。広島東洋カープも指名を公表していた森下投手を単独指名できた。
“野球の神様”は「潔さ」がお好きなのかもしれない。

根尾そして石川「竜の未来予想図」

石川選手は指名直後の記者会見で、選手としても監督としてもドラゴンズに大きな歴史を刻んだ落合博満さんの名前を挙げて「目標は三冠王」と宣言した。その言も潔し。
石川選手の交渉権を獲得したドラゴンズは、ドラフト会議前に「3番・根尾、4番・石川によって将来のチームを作りたい」と方針を明らかにしている。
2019年シーズン、チーム打率はリーグトップ、前年は12球団最下位だった防御率はリーグ3位に上昇、さらに失策数も少なく守備率もリーグ新記録を更新、それでもチームは5位だった。現有戦力での7年連続Bクラス、そこから脱出するには、思い切ったチーム改革が必要だろう。
2020年シーズンはドラフト会場以上の“大輪の花”をナゴヤドームで咲かせてほしい。

【CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】

※中日ドラゴンズ検定1級公式認定者の筆者が“ファン目線”で執筆するドラゴンズ論説です。著書に『愛しのドラゴンズ!ファンとして歩んだ半世紀』『竜の逆襲  愛しのドラゴンズ!2』(ともに、ゆいぽおと刊)ほか。

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