沖縄で平和の大切さを語るガイドがピンチ!コロナ禍で修学旅行が激減

沖縄で平和の大切さを語るガイドがピンチ!コロナ禍で修学旅行が激減

緊急事態宣言は解除されたものの、新型コロナウイルスの影響は国内に今なお暗い影を落としている。この2年間、コロナ禍に翻弄された学校行事に修学旅行がある。県をまたぐ移動をストップされて多くの学校が修学旅行を中止、延期、または近隣への行き先変更という対応を余儀なくされている。

沖縄の修学旅行が8割減った

修学旅行先として人気なのが沖縄県である。青い海と空、美ら海水族館、景勝地の万座毛、そして火災からの復興に歩む首里城などの観光地に加え、平和の礎、ひめゆりの塔などから戦争の歴史を現地で体験して、平和の大切さを学ぶという目的もある。ところが、コロナ禍による修学旅行の異変は、その沖縄県を直撃した。県の観光政策課が発表した2020年1月から12月まで1年間に、沖縄県の修学旅行に訪れた学校数は全国から395校だった。コロナ禍前の2019年が2398校なので、実にマイナス2003校、約84%減ったことになる。

平和ガイドを直撃したコロナ禍

筆者撮影:沖縄那覇の国際通り

沖縄の町から修学旅行生の姿が消えた。2021年に入っても、本格シーズンの春以降、沖縄県には「まん延防止等重点措置」続いて「緊急事態宣言」が出された。沖縄県は20年前のアメリカ同時多発テロの際、米軍基地が狙われるという風評から修学旅行が見送られるということがあったが、この時でも前年比35%減。今回のコロナ禍の影響はあまりに大きい。修学旅行のキャンセルによって、頭を痛めているのが平和ガイドたちである。かつての沖縄戦の時に人々が避難した「ガマ」と呼ばれる自然洞窟など戦跡を案内して、修学旅行生たちに戦争の悲惨さと平和の大切さを語ってきた。しかし、今は語る相手がいないのである。

戦禍を語る機会が失われる

県内で最も大きな平和ガイド団体「沖縄県観光ボランティア友の会」(豊見城市)に話を聞いた。登録メンバーはガイド30人と語り部10人の、合わせて40人。たてよこ100メートルの巨大ガマ「轟豪(とどろきごう)」や「沖縄陸軍病院・山城本部豪」など戦跡に修学旅行生を案内する活動を続けている。コロナ禍前の2019年度は1070校を担当し、のべ3240人のガイドを派遣してきたが、2021年春から緊急事態宣言が続いた9月末までに受け入れた学校はわずか4校だけ。予約のほとんどがキャンセルされた。
深刻な問題は会の運営費である。会の繰越金を切り崩したりして対応してきたが、それにも限界があり、来年4月からは事務所の維持費など活動のメドが立っていないそうだ。

存続へメンバーの模索は続く

沖縄観光コンベンションビューローなどにも窮状を訴えた。しかし、会自体はボランティアによる任意団体のため、新型コロナの支援対象は、まずは法人や個人事業主が優先される現実がある。コンベンションビューロー側も資金援助の可能性がある企業などを、会に紹介しているが、速効性がないのが現状だと話す。「沖縄県観光ボランティア友の会」ではフェイスブックなどによって、全国に支援を訴える活動を始めた。

太平洋戦争の沖縄戦では一般市民9万4000人を含む20万人が犠牲になり、沖縄県民の4人に1人が亡くなったと言われる。悲しい過去を持つ地において、平和を考えることは10代の若者たちにとって、かけがえのない経験になる。コロナ禍を乗り越えて、平和への学びが途絶えないことを願ってやまない。

          
【東西南北論説風(289)  by CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】

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