133年ぶりに修復される屏風に幽霊伝説が?
青森県むつ市には、幽霊伝説のある屏風があります。平家物語の名場面を描いた豪華な屏風でありながら、かつては夜な夜な合戦の音が聞こえるという噂があったという「一ノ谷・屋島合戦図屏風」。1972年に市の指定有形文化財に登録された同作は133年ぶりとなる大規模修復を行うために、5月に所蔵している常念寺から運び出されました。6月19日の『CBCラジオ #プラス!』では、常念寺副住職の関明應さんが出演し、「一ノ谷・屋島合戦図屏風」を紹介しました。聞き手は天野ななみと竹地祐治アナウンサーです。
関連リンク
この記事をradiko(ラジコ)で聴く一ノ谷・屋島合戦図屏風
関さんによると、「一ノ谷・屋島合戦図屏風」は17世紀半ばに制作されたと推定されており、「紙本金地着色」という技法で描かれています。紙を支持体とし、金箔などを用いた豪華な背景に彩色が施された作品です。
屏風は左右一対の六曲一双で、それぞれ縦176センチ、横378センチという大型作品。
竹地「畳で表現すると、畳が4枚ぐらい並んでる感じですか」
関「はい。それが六曲ですから、パタパタ折られるような形で」
屏風に描かれているのは『平家物語』に登場する有名な戦の場面で、右隻には一ノ谷の戦い、左隻には屋島の戦いが描写されています。
一ノ谷の場面では、源氏の武将・熊谷直実が平敦盛を討つ場面が描かれているといい、この出来事をきっかけに熊谷が出家したことでも知られています。
一方、屋島の場面には、那須与一が船上の扇の的を射抜く有名な逸話が。
歴史に詳しくない人でも物語の名場面を楽しめる作品となっているようです。
幽霊伝説、副住職は…
この屏風が注目を集める理由は、その歴史的価値だけではありません。
長年にわたって語り継がれてきた“幽霊伝説”も存在します。
関さんによると、屏風はもともと常念寺の檀家が京都を訪れた際に持ち帰ったものでした。しかし自宅に飾るようになると、夜になるたびに不思議な音が聞こえるようになったといいます。
聞こえてきたのは、武将たちの声や馬のいななき、さらには甲冑がぶつかり合うような音だったそうです。
そうした出来事から、「お寺で供養してもらおう」という話になり、常念寺へ奉納されたと伝えられています。
ここで気になるのが、実際に聞こえたのかどうか、ということ。
竹地「どうですか?関さんもこれ、試されたんですか?」
毎年展示の際に屏風を見ているという関さんですが…。
関「1人でこう、後ろからそっと見たりはするんですけど、私は聞こえたことないですね」
さらに寺は夜になると閉まるため、伝説が語る“夜な夜なの音”を確かめる機会はほとんどないとのことです。
竹地からは修復後に希望者向けの体験企画を行ったら面白いのではないかという話題も飛び出し、関さんも「そういったこともやってみると面白いかもしれないですね」と笑いながら応じます。
なぜ133年ぶり?
現在、この屏風は133年ぶりとなる大規模修復が進められています。
関さんによると、本来こうした屏風は100年ごとを目安に大きな修復を行うのが理想とされているそうです。
しかし常念寺では昭和40年代に大きな火災が発生したほか、先代住職が若くして急逝するなどの出来事もあり、修復に関する情報や計画が十分に引き継がれなかった可能性があるといいます。
今回の修復は、むつ市生涯学習課の協力によって実現しました。専門家による調査や助言を受けたほか、出光美術館や朝日新聞文化財団から助成を受けることができ、さらに檀家からの支援も集まったことで修復に踏み切ることができたそうです。
地域の文化財を未来へ残そうとする、多くの人たちの支えがあって実現した事業だといえます。
3年後の公開にも期待
番組では、修復によって新たな発見が生まれる可能性についても話題になりました。
竹地は、修復の過程で屏風を分解したり裏側を調べたりすることで、新たな資料や記録が見つかる可能性があるのではないかと指摘。
これに対し関さんは、屏風を収めている箱には「明治26年修復」と記されているものの、それ以前に修復が行われていたのかどうかは分かっていないと説明。今回の作業によって制作や修復の歴史が明らかになる可能性があるとの見方を示します。
竹地「そしたら3年後ぐらいに新発見とか出てくるかもしれないんで、期待したいですね」
修復完了まではおよそ3年を予定しているとのこと。これまではお盆の時期に1週間だけ公開されていましたが、今後は修復に協力してくれた多くの人々への感謝も込めて、より広く公開する機会を設けたい考えも明かされました。
歴史的価値の高い文化財でありながら、不思議な伝説も語り継がれる一ノ谷・屋島合戦図屏風。3年後、美しくよみがえった姿とともにどのような新発見が明らかになるのか、今から楽しみに待ちたいところです。
公開の機会が設けられた際は、ぜひその迫力を現地で体感してみてはいかがでしょうか。
(ランチョンマット先輩)
番組紹介
読んで聴く、新しい習慣。番組内容を編集した記事からラジオ番組を聴いていただける”RadiChubu”。名古屋を拠点とするCBCラジオの番組と連動した、中部地方ならではの記事を配信する情報サイトです。



