相続税が制定されたきっかけは日露戦争!控除額の変遷と今後の見通しは?
昨今、少子高齢化で中小企業・小規模事業者の後継者難が大きな経営課題の一つとなっています。「人生100年時代」の今だからこそ、元気なうちに資産管理やスムーズな承継を考えていく必要性が高まっているのです。CBCラジオ『北野誠のズバリ』「シサンのシュウカツにズバリ」では、事業承継と資産承継について専門家をゲストに学んでいきます。12月24日の放送では、「相続税の歴史・変遷」について北野誠と松岡亜矢子が税理士法人 日本税務総研 税理士 富永生志さんに伺いました。
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今回は、「相続税の歴史・変遷」についてです。
北野「相続税って、日本ではいつから施行されたんですか?」
富永「日本の相続税法は、明治38年(1905年)に施行されました。120年ほどの歴史があることになります」
そもそも、その年に相続税が創設された理由は、日露戦争です。
日露戦争にかかった戦費総額は18億円ほどでしたが、当時の日本の1年間の収入は はるかに少ない2.6億円。戦費調達が重要な課題でした。
イギリスやアメリカでの外債発行とともに、国内では所得税や酒税、関税など様々な税金が引き上げられました。その中で、ヨーロッパの国々が古くから用いてた相続税を導入しました。
減税された理由は土地の価格が上昇
相続税が導入されて、その後どうなっていったのでしょうか?
時代にあわせて様々な改正が行われていきましたが、最近の大きな改正について取り上げると。
富永「昭和62年まで、基礎控除額は『2000万円+400万円×法定相続人』でした。 これが平成6年まで幾度も改定され、最終的に『5000万円+1000万円×法定相続人』まで引き上げられた」
基礎控除額が増えるという事は相続税の減税が行われるということになると続ける富永さん。
減税された理由は、昭和の終わりから平成最初の時期がちょうどバブルの時期だったことと関係しています。
土地の評価額は、昭和58年から平成3年頃までに約4倍も上昇しました。それに伴って、相続税の算出額も跳ね上がったのです。相続税総額も7861億円から、2兆5830億円と3倍以上になりました。
納税者側は制度が変わっていないのに、税負担が急に増えたように感じます。
そこで国は減税を考え、基礎控除額の引き上げが行われたのです。
今後の相続税の見通しは?
しかし、地価はバブル崩壊の影響を受けて平成3年を境に下落へ転じますが、基礎控除の水準は据え置かれたままでした。ところが平成27年に基礎控除額を『3000万円+600万円×法定相続人』とする引き下げ、すなわち増税が実施されました。
これは低下した「資産再分配機能」を回復させるためと説明がなされています。
北野「『資産再分配機能』とはなんですか?」
富永「別名『富の再分配』とも呼ばれ、財産や所得の多い世帯から少ない世帯へ財産や所得を移転させ、貧富の格差を是正・所得格差を抑える機能です」
平成24年に「社会保障・税一体改革大綱」が決定され、世代間・世代内での公平の実現が強く望まれたことが、基礎控除額の見直しになったと言われています。
北野「今後、相続税はどうになっていくんでしょうか?」
富永「日本は少子高齢化によって、所得税を主に負担する現役世代(労働人口)が減少傾向です。また、国の借金にあたる国債も増加し続けています」
富永さんは、このような状況で国が目をつけるのは相続税。増税される可能性が考えられると推測しました。
国の制度を理解し、資産の終活を含めて相続や相続税負担の準備が必要なことと、これからは相続税をより理解することが大切になるという話題でした。
最後に「相続税に関して質問や相談がある方は、気軽に問い合わせて欲しい」と呼びかける北野でした。
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