川上憲伸が明かす井端弘和の“間”。マウンドで見せた絶妙な気配り
CBCラジオ『ドラ魂キング』、「川上憲伸、挑戦のキセキ」は、野球解説者の川上憲伸さんが、自身のプロ野球人生を「挑戦」という視点から振り返るコーナーです。11月12日の放送では、現役時代のチームメイト井端弘和さん(現侍ジャパン監督)の先の先を読む洞察力と、マウンドでの絶妙な間の取り方について伺いました。ピッチャーを支えた井端さんの特別な才能に迫ります。聞き手は宮部和裕アナウンサーです。
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強くて、クレバーで、さらに先の先を見通すプレーでチームの勝利に貢献してきた井端さん。「振り返ったらアライバがいた」というような、予測込みのファインプレーは多くのファンの記憶に残っています。
井端さんのプレースタイルについて、川上さんは「準備でしょうね」と即答しました。
「その場その場っていうより、『ああしたらこう来るだろう、だからこう来た時にはこうしよう』というのが、もう全てができてると思うんですよね」
川上さんはこの準備力について、生まれつきの才能であり、性格によるものだと語ります。
学生時代から自分の役割を理解していた井端さん。「この1球は振りに行きたいが、あえて見送ることで野球が変わるのではないか、ピッチャーの心理が変わるのではないか」そんな深い思考ができる選手だったといいます。
マウンドに残る最後のひとり
2002年の東京ドームでの読売ジャイアンツ戦、川上さんがノーヒットノーランを達成した試合でも、井端さんの配慮が光っていました。
マウンドを横切る時、声をかければ川上さんは完全に意識してしまう。意識しすぎている様子なら、あえて声をかけずに近づくだけ。そんな絶妙な判断をしていたそうです。
ピンチの時にマウンドに集まる場面でも同様です。キャッチャーが間を取りに来ただけという時は、井端さんは空気を読んで「詰まらせてゲッツーだ」などの具体的なアドバイスをしていました。
「思い出してみると、マウンドから散る時、意外と一番最後が井端が多いんですよ」
プレートの横にあるロジンバッグを触り、さらに間を作りながら走って戻る。こういったことが一番できる選手だったと川上さんは振り返ります。
ピッチャーの心理を読む名手
ピッチャーは不安になると野手と目が合わなくなるといいます。元気な時は野手と目を合わせていろいろやり取りをするものの、不安になってくると前ばかりを向くようになり、後ろを見る機会が減ってくるそうです。
前ばかり見ていると完全に周りが見えなくなり、呼吸も自分のペースではない速さになってしまいます。そんな時、井端さんが「ちょっとポジションこうだよ」と声をかけてくれることで、川上さんは後ろを向くことができ、落ち着きを取り戻せたといいます。
井端さんはそういうことができる選手でした。
落合博満選手との共通点
この話を聞いた宮部アナウンサーは、ナゴヤ球場での落合博満選手を思い出したといいます。
ファーストの落合選手が今中慎二投手に声をかけるでもなく、「ロジンバッグを触りに行っただけで別にお前に用はないんだぜ」という雰囲気で1塁ベースに戻っていく。これによって今中投手にとっては間ができていたというエピソードです。
状況に応じた声かけと間の取り方。井端さんは、そんな細やかな気配りでピッチャーを支えていました。
(minto)
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