「見る」ではなく「見られる」動物園に。旭山動物園の行動展示が生まれた理由
日本最北の動物園として知られる旭山動物園。動物たちが本来持つ能力や習性を自然な形で引き出す「行動展示」で全国的な人気を集めています。12月25日放送の『CBCラジオ #プラス!』では、旭山動物園広報のチェルネンコさんに、冬の動物園の魅力について詳しく伺いました。
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旭山動物園は1967年に開園した日本最北の動物園です。ただ動物を見るだけではなく、飼育員が餌を与えながら解説する「もぐもぐタイム」や、手書きの解説看板で学びを得ることができる点が特徴です。
パーソナリティの永岡歩アナウンサーは「行く度に発見がある。動物たちも生き生きとしているし、飼育員さんの解説もあるから、本当にそうなんだとか、こんな動きをするんだという驚きがある」と、過去に2度訪れた経験を振り返りました。
結果として生まれた「行動展示」
旭山動物園の代名詞ともいえる「行動展示」ですが、チェルネンコさんによると、最初から行動展示を目指したわけではないそうです。動物たちが本来持つ能力や習性、生態などを自然な形で引き出せるように工夫を凝らしていった結果、行動展示と呼ばれるようになったといいます。
「日々、動物たちもこっちを見て、私たちも動物たちを見ているというのがあるので」と、チェルネンコさんは動物との関係を語ります。
たとえば、あざらし館の「マリンウェイ」と呼ばれる縦の水槽は、アザラシが縦に泳ぐ習性を利用した施設です。アザラシが通っていくときにお腹が見え、かなり近くで観察できるため、ゴマ模様が一頭一頭違うことがわかるそうです。
レッサーパンダの吊り橋では、移動する姿や、絶妙なバランスで木の幹で寝る姿など、樹上生活者としての本来の能力を引き出した施設です。
ホッキョクグマに捕食される体験
ほっきょくぐま館には「シールズアイ」という特別な観察スポットがあります。アザラシ(シール)の目線(アイ)になれる場所で、流氷の下から息継ぎをするために頭を出すアザラシの視点、つまりホッキョクグマに捕食される側の目線を体験できます。
永岡が「えっ、食べられる側?我々が餌になるんだ」と驚くと、チェルネンコさんは「実は見ているようで、動物たちに見られているんです」と説明しました。
冬の風物詩「ペンギンの散歩」
12月18日からはペンギンの散歩がスタートしています。キングペンギンが集団で園内を歩く姿を間近で見ることができ、積雪量によりますが、例年3月中旬頃まで行なわれているそうです。
ペンギンのお腹の白い部分が汚れていたり、自然界では怪我をしていたりする様子も肉眼で確認できます。
園内に設けられたコースをペンギンたちが歩き、雪が積もればぐるっと回る姿や、「トボガン」と呼ばれる腹ばいになって滑るように進む姿も見られるとのことです。
行動展示が生まれるまで
旭山動物園が誕生した1967年は、豊かさや繁栄の象徴として地方都市に動物園が建設された時代。ライオンやゾウなど見たことのない動物が見られることに価値があり、狭い檻が並んで多くの種を次々に見ることができました。
しかし、それではお客さんは次第に飽きてしまい、来園者は減り、予算もつかなくなっていったといいます。
チェルネンコさんは「本来主役であるはずの動物の視点が欠けていた」と振り返り、動物が持つ能力や行動、多様性、感性を自然と発現でき、その動物らしい一生を送れる施設を目指そうというのが始まりだったと説明しました。
来園者を「猫じゃらし」にする発想
そこで生まれたのが「来園者を猫じゃらしにしよう」という発想でした。
ほっきょくぐま館のシールズアイやレッサーパンダの吊り橋も、動物たちが人間を見ている構造です。人の「見たい」「覗きたい」という習性や欲求を満たした上で、動物たちの好奇心をうまく引き出すことを考えているそうです。
動物を「見に行く」のではなく、動物から「見られに行く」という視点を持つと、より一層楽しめる旭山動物園。冬ならではの魅力を体験しに訪れてみてはいかがでしょうか。
(minto)
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