要注意!安易な「遺産の共有」はトラブルの元

少子高齢化により、中小企業や小規模事業者の後継者難が大きな経営課題となっています。そして、元気なうちに資産の管理や、次世代へのスムーズな承継について考えていく必要性も高まっています。CBCラジオ『北野誠のズバリ』「シサンのシュウカツにズバリ」では、事業承継と資産承継について専門家をゲストに学んでいきます。7月2日の放送では、遺産分割の際の「不動産の共有」について、北野誠と松岡亜矢子が三井住友トラストグループ三井信託銀行株式会社 名古屋営業部 財務コンサルタント山崎豊さんに尋ねました。
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今回山崎さんが取り上げたのは、ある家族の遺産分割の際の「不動産の共有」について。
「不動産の共有」とは、どのようなことでしょうか?
山崎「ひとつの不動産を複数の相続人が所有者として登記されている不動産が、共有名義の不動産。家族仲が良くて、平等意識の強いご家庭で時折見られるのがこの『共有名義』です」
「みんなで共有する形のほうが、波風が立たず穏便に事が進むだろう」という判断から「共有名義」を選択する家族が多いそうですが、「これが後々問題になることがある」と山崎さん。
北野「この家族の選択が間違いだったということですか?」
山崎「そうなんです。残念ながら今回のケースでは失敗でした」
このケースでは、母親の死後、父親も亡くなり、父親が保有していた2ヵ所の不動産を、娘2人が1/2ずつの共有名義で相続しました。
長女と二女は「お母さんの相続の時も法定相続どおり3人で分けたから、今回も財産は仲良く半分ずつにしよう」と、この不動産を安易に共有名義としたそうです。
二つの不動産は価額に格差があって、一つは商業地域内の収益性もある賃貸アパート兼自宅、もう一つは小規模の郊外の賃貸駐車場でした。
長女は不動産から上がる収益を生活費に充てたいとの思いがある一方、二女は早期に売却して資金化したいとの考えを持っていました。
この意見の相違から、姉妹間の関係もぎくしゃくしたものになってしまったとのこと。
不動産の共有時に必要なこと
北野「あらら。この姉妹はどうすれば良かったんでしょうか?」
山崎「親の相続の際には、ひとつの不動産を兄弟姉妹間では極力共有名義にしないことです」
相続後に売却することが合意できているのであれば共有もやむなしですが、先々において売却か継続保有かで意見が合わなくなったり、売却価額で折り合いがつかなくなったりします。そのため、ひとつの不動産は単独保有が望ましいとのこと。
山崎さんは「二つの不動産の価格に格差があれば、相続する金融資産で調整することもできる」と提案しました。
安易な共有は避けるべき
北野「既に兄弟姉妹間で共有にしてしまっている場合は、どうしたらいいでしょうか?」
山崎「その場合、不動産はできるだけ速やかに整理するのが得策」
ある程度広い土地なら、中間に線を入れて共有物を分割する選択もありますが、狭い土地ではそれができません。
また、共有者の一人が亡くなると、その相続人に持分が引き継がれてしまいます。従妹同士で共有などという事態も将来生じかねません。
さらに「第三者への売却以外にも、親族間での売買、持分の交換、贈与などの手法が用いられることがある」と山崎さん。
北野「安易な共有は避けるべきなんですね。亡くなったお父さんが二人の娘さんへ財産分与も考えてくれていれば、意見対立も起こらなかったはずですよね?」
山崎「そうです。お父様が遺言書を遺していれば」
例えば、「長女には価値の高い方の不動産を相続させる代わりに、二女にはもう一方の不動産と長女よりも多い割合の金融資産を相続させる」などの意思表示をされていれば、姉妹の間にしこりは残らず、円滑で円満な関係が維持できた可能性があります。
北野「不動産を共有、これは要注意ですね」
(野村)
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