川上憲伸が明かす野村沙知代との秘話!怒りのひと言がカーブ習得の原点に

CBCラジオ『ドラ魂キング』のコーナー「川上憲伸、挑戦のキセキ」では、「挑戦」をテーマに、川上憲伸さんのプロ野球人生を掘り下げています。6月25日の放送では、明治大学2年生の春に野村沙知代さんから受けた“怒りのひと言”が、のちのカーブボール習得のきっかけとなったエピソードを語りました。聞き手は宮部和裕アナウンサーです。
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大学1年生の12月に全日本合宿に選ばれた川上さん。これが大きな転機となり、2年生の春に頭角を表し、その年の秋にリーグ優勝を果たしました。
この時1年生で選ばれたのは川上さんと、慶応の高橋由伸選手のふたりだけ。このことは、川上さんにとって大きな自信となったそうです。
それまで先発経験がなかった川上さんでしたが、全日本に選ばれたことで、エースナンバーではないながらも2戦目の先発として起用されるようになり、2年春のリーグ戦では一定の成績を残したそうです。
2年秋の圧倒的成績
秋のリーグ戦では、エースの選手が肘を壊してしまったことから、川上さんがエースのような立場になりました。
この時、川上さんは5完投3完封勝利、防御率1.61という驚異的な成績を残しました。
「本当に良かったですよね。急にどんどんスピードも上がってきましたし、コントロールも良くなりましたし」と川上さんは振り返ります。
実は川上さんのこの活躍の裏には、ある人からのアドバイスがあったのです。
サッチーからの“怒りの助言”
春のリーグ戦で川上さんとバッテリーを組んでいたのは、2つ上の先輩である野村克則選手。当時ヤクルトスワローズの監督だった野村克也さんの息子です。
試合後、野村監督の奥様の沙知代さんがベンチ裏まで来て、川上さんにこう苦言を呈しました。
「あなたはどんなピッチングしてるのよ」
沙知代さんは野村監督とスタンドで試合を見ていましたが、監督は直接選手と会うことができないため、代わりに川上さんと克則選手のもとを訪れたのです。
「あなた、克則の言うこと聞いてちゃんと投げてるの」
「克則も克則よ、真っすぐのサインばっかり。もっと緩急使いなさいよ」
「カーブ投げられないの、あなた」
川上さんは克則選手と共に叱責を受けたのです。
遅いカーブ習得への挑戦
当時の川上さんは、フォークとストレート、スライダーが中心で、カーブは少し速めの球しか投げられなかったそうです。
「もっと遅いカーブを使って、低めじゃなくて高めのストレートをどんどん投げたり。頭を使いなさいよ」
沙知代さんから数多くの指導を受けた川上さんは、夏の練習で本格的な改造に取り組みます。遅いカーブの練習やストレートを高めに投げる練習を重ねました。
その効果は、秋のリーグ戦で如実に現れました。三振が増え、課題だったカーブも投げられるようになったのです。この投球が秋のリーグ戦での優勝に繋がりました。
「自分がエース格で優勝できたのは信じられないというか。うれしかったですね」と、川上さんは当時を振り返ります。
3年時の試練と復活
東京六大学野球で明治大学がリーグ優勝を果たしたのは、川上さん1年生の春、2年秋、そして3年秋。特に3年秋は完全優勝でした。
3年生の春、川上さんは背番号1を着用していましたが、アトランタオリンピックの影響でプロ野球選手との試合が増える中、調子の良さに乗じてどんどん投げ込んでいるうちに肘を壊してしまいます。その結果、春のリーグ戦では思うような活躍ができませんでした。
背番号1番は「縁起が悪い」ということで、活躍した2年生の秋に着けていた背番号11に戻すことになりました。
3年生の秋には完全優勝を達成。3完投2完封、防御率0.61という圧倒的な成績で、チームを10連勝に導きました。
川上さんが「1つ前の年と違って、なんかあっさり終わっていった感じ」と語るほど、圧倒的だったのです。
聞く耳の力
今回のインタビューでは、川上さんと野村沙知代さんとの意外なやり取りが明かされました。沙知代さんのあの言葉が、川上さんを奮い立たせたのかもしれません。
宮部アナウンサーは、川上さんの「聞く耳があること」を絶賛します。
安藤渚七も、「普通だったら素直に聞き入れられない。しかも、そこから試してみようと思って、実際にあれだけの結果を出せるのは川上さんのスター性」と納得の様子。
野村沙知代さんの「頭を使え」という言葉は、のちに中日ドラゴンズでの背番号11、そして代名詞となる名球スローカーブへとつながっていくのです。
川上憲伸というピッチャーは、多くの人との出会いによって形作られていきました。
(minto)
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