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写真では伝わらない「ほのかに淡い」光。オーロラ研究25年の学芸員が語る

写真では伝わらない「ほのかに淡い」光。オーロラ研究25年の学芸員が語る

6月19日放送の『CBCラジオ #プラス!』では、名古屋市科学館学芸員の毛利勝廣さんをゲストに迎えて、オーロラの魅力について伺いました。長年にわたりプラネタリウムの演出に携わり、実際にアラスカでの観測経験も持つ毛利さんは、「本物のオーロラ」は写真とはまったく異なる表情を見せると話します。科学的な視点と体験に基づいて、光の正体や観測のヒント、そして静かに心を打つオーロラの奥深い魅力について語っていただきました。

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氷点下48度のアラスカ

名古屋市科学館の学芸員として35年間プラネタリウムに携わってきた毛利さん。空に見えるものを対象に、特にオーロラをいかにプラネタリウムに再現するかに取り組んできたそうです。

25年以上前には当時の文部省の海外派遣でアラスカ大学地球物理研究所に3か月間滞在し、オーロラ研究を行ないました。

真冬のアラスカでは氷点下48度という極寒を体験。「10年ぶりの寒波」と言われる中、車がないと生活できない環境で過ごしました。しかし派遣の補助金は固定額だったため、レンタカー代などで赤字になってしまったという苦労話も。

それでも「本当にありがたい体験をさせていただいた」と振り返ります。

写真と肉眼で見る色の違い

写真と肉眼で見るオーロラの色は違うと毛利さんは説明します。

「目で見た時の動きとか色とか、ほのかに淡い感じがすごくいいんですが。カメラってバキバキに撮ってしまうんですよね」

毛利さんによると、暗いところでは人間の目は白黒っぽく見える特性があり、それが人間の目の見方なのだといいます。まるで7色のように見える写真もありますが、実際のオーロラにはそんなに多くの色はないといいます。

「ほのかな光が綺麗で、動きがすごく良かったりする。プラネタリウムでもそれをできるだけ再現しています」

実際にオーロラを見てきた人が、名古屋市科学館に来館して「こういう色だった」と納得されるそうです。

オーロラの仕組みと色

オーロラは上空約100キロメートルの極めて空気が薄い場所で発生します。太陽から飛んできた電気を持った粒子が、酸素や窒素の原子に衝突し、それらが興奮状態から元に戻る際に光を放つ現象です。これは、ネオンサインと同じ原理です。

ただし、すべての原子が目に見える光を出すわけではありません。例えば水素は紫外線で光るため、目には見えないそうです。

オーロラは、高度の高い場所で酸素原子が光ると「ほのかな赤い色」、100キロメートル付近では「緑や白っぽい色」、エネルギーの強いものが来ると80キロメートル付近の窒素分子が「ピンク色」に光ります。

「ものが動いているわけじゃなくて、ネオンサインとか電光掲示板だと思ってください」と毛利さん。

粒子が飛び込む場所が次々と変わることで、目にも止まらぬ動きになったり、ふわっとした動きになったりするそうです。

地球の外から見ると、オーロラは地球の北と南に天使の輪がかかっているような状態。この輪の中心は地理上の北極(回転軸)ではなく磁石の北極で、カナダ側にずれています。

このリングの下にあたる場所が、アラスカ、カナダ、アイスランド、そして北欧のフィンランドなど。シベリアの方は北極海が広がり観測地点がないため、オーロラを見ることはできません。

9月の北欧がおすすめな理由

オーロラは年中発生していますが、観測には暗い夜が必要です。北欧では夏は白夜になってしまうため、8月末から観測シーズンが始まります。

観測のベストタイミングは「磁石的な真夜中(magnetic midnight)」で、北欧では現地時間の夜11時頃。アラスカでは午前2時頃になるため、北欧で観る方が体への負担が少なくてすみます。

毛利さんは「北欧とカナダとアラスカ、どこのオーロラがいいですか」とよく聞かれるそうですが、オーロラは宇宙空間で起きている現象なので、オーロラ自体は変わらないとのこと。どのタイミングで見るかの違いだけとのことです。

真冬のオーロラツアーが多いのは夜が長いからですが、9月でも十分にオーロラ観測のチャンスはあるそうです。さらに9月は「足元が滑らない」という安心感があり、「いろんな観光もできる」と毛利さんは話します。

オーロラ観測で重要なのは天気です。雲は上空10キロ、オーロラは上空100キロ。雲がかかってしまうとオーロラは見えなくなってしまいます。

今がまさに11年周期のピーク

太陽活動には11年の周期があり、現在はまさにそのピークです。ピークだから見える、見えないということではないとしながらも、爆発的な現象は起きやすいので、「大当たりになったらすごい」とのこと。

オーロラとの出会いは巡り合わせですが、「空のどこかにふわっとしたオーロラが、というのは結構な日数見えてますので」と毛利さんは話します。

リスナーAさんからは「実際に見た時はもう『すげえ!マジですげえ!』しか言えませんでした」というメッセージが寄せられました。

毛利さんも「すごかったり、ちょっとほっとするようなふわっとした感じ、そういう静かなのもまたいいんですよ。どっちもいいんです」と、オーロラの多様な魅力を語りました。
(minto)
 

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