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裁判で勝っても1円も返済なし!弁護士が教える債権回収の極意

裁判で勝っても1円も返済なし!弁護士が教える債権回収の極意

身近な疑問・質問・お悩みを解決する『北野誠のズバリ』(CBCラジオ)の「ズバリ法律相談室」のコーナー。6月18日の放送では、簡易裁判で勝訴判決を得たにもかかわらず、相手が一切返済に応じないという深刻な問題を取り上げました。オリンピア法律事務所の原武之弁護士が、強制執行の実態と効果的な対処法について解説しました。

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判決後1円も返済されず

リスナーAさんは、地元の友人に貸したお金を返してもらうため、1年半前に簡易裁判を起こしたそうです。

「当日、本人は出頭しませんでしたが、今までのLINEでのふたりのやり取りや、通帳上でのお金の流れなどのスクショを証拠として提出し、2年間未返済になっている40万円を返済しろとの判決を出していただきました」(Aさん)

しかし、判決後も一度も返済はなく、彼の実家に電話をかけても母親は「滅多に帰ってこず何をしているのかわからない」と答えるばかり。内容証明郵便も簡易裁判の判決も完全に無視されている状況だといいます。

「相手に何のデメリットもないなら、判決とは一体何なのでしょうか。よく無保険の車にぶつけられた人が相手方に支払い能力がなく泣き寝入りみたいな話をよく聞きますが、被告側に甘くないでしょうか」(Aさん)

Aさんは原弁護士に、強制執行の申し出を行なった場合の費用負担と、効果の有無を尋ねます。また、彼に財産がない場合、実家からの差し押さえは可能なのかも知りたいそうです。

簡易裁判所が扱う案件とは

原弁護士によると、簡易裁判所は比較的軽微な少額の民事事件を扱う裁判所で、民事では140万円以下という具体的な金額が決まっているとのこと。書面で審査する「支払い督促」という手続きも扱っています。

しかし問題は、判決が出ても相手は無視できるという点です。「これが今、日本の問題点」と原弁護士は指摘します。

裁判で判決が出ても、その後の回収は勝訴した側が自力で行なわなければならず、判決を任意に履行するかどうかは本人たちの自由とされています。

相手が判決を無視した場合は「強制執行」という手段があり、給料、預貯金、不動産、最近では暗号資産など、財産価値があるものは基本的に何でも差し押さえが可能です。

財産開示命令にも限界が

ただし、相手が無職で住所を転々としている場合は事情が異なります。財産を持っているかどうかも、どこにあるかもわからない状況では、差し押さえ自体が極めて困難になります。

財産の調査方法について、原弁護士はまず複数の差し押さえを試みて、それでもヒットしなければ「財産開示命令」という制度を利用すると説明しました。これは最近制度変更されて罰則付きになった手続き。裁判所に来て財産を開示しなさいと命じるものです。

しかし、この制度にも限界があります。開示に応じなければ罰則がありますが、開示に応じて「財産はあります」と言っても、それ以上のペナルティはないのが現状です。

北野誠が「なんで日本って無視したやつの方が強くなるんでしょうかね」と疑問を呈したように、制度の矛盾が浮き彫りになっています。

情報分断の課題

原弁護士は日本の情報管理システムの問題点も指摘しました。

マイナンバーができて情報の紐付けが可能になりつつあるものの、現状では情報が分断されており、裁判所も積極的に関与しません。判決を得た人が自分で相手の財産を探して執行しなければならないという、個人には極めて困難な作業を強いられているのです。

北野が「それができないから裁判をしているのに」と憤ると、原弁護士も「情報の統一や開示をもっと便利にすべき」と同意しました。日本では情報の秘匿が重視される傾向があり、それが債権回収を困難にしている一因となっています。

強制執行の費用は、預貯金や給与の差し押さえなら手続き書類だけで済むため、5万から10万円程度で引き受ける弁護士もいるとのこと。

しかし不動産や動産、車などは調査が必要で手続きも煩雑になるため、費用はさらに増加するそうです。

長期戦という現実的な戦略

北野が「40万円を取り替えすために40万円くらいかかりそう」と指摘すると、原弁護士も「状況によってはかかるため、“泣き寝入り”という言葉が出てしまう」と認めました。

しかし原弁護士は、おすすめの戦略を提案します。それは、すぐに押さえようとせず、時間をかける方法です。

原弁護士「例えば5年後とかであれば、定職についてるかもしれない。判決を得たら諦めずに2、3年に一度差し押さえをしてみるとか。しつこくやるっていうのがすごく重要だと思います」

判決には時効がありますが、差し押さえをすれば時効は止まるため、何回でも実行可能です。若い時は定職に就いていなくても、30代、40代になれば定職に就いたりこどもができたりして、隠れられなくなる可能性があるといいます。

原弁護士「時間をかけてでも回収するという、しつこさが結構重要です」

相手が忘れた頃に再度差し押さえを行なうという戦略は、現行制度下での数少ない有効な手段といえます。日本の法制度の問題は、まだ解決されていないのが現実のようです。
(minto)
 

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