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川上憲伸が語る2007年パーフェクトリレーの真実。「数分が3時間に感じた」

川上憲伸が語る2007年パーフェクトリレーの真実。「数分が3時間に感じた」

CBCラジオ『ドラ魂キング』「川上憲伸、挑戦のキセキ」のコーナーでは川上憲伸さんのプロ野球人生を「挑戦」という切り口で掘り下げています。6月11日の放送は、テーマ「落合博満監督」の最終回。2007年の日本シリーズ第5戦、日本一に王手をかけた試合での山井大介投手から岩瀬仁紀投手への伝説の「パーフェクトリレー」について、当時の舞台裏を伺いました。聞き手は宮部和裕アナウンサーです。

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山井投手の真価

川上さんによると、山井投手はシーズン中の活躍はそれほど目立たなかったものの、日本シリーズや2004年の西武戦といった大舞台では圧倒的な気合いで相手打線を抑える投手で、特にスライダーが切れる印象だったといいます。

2004年の日本シリーズ西武ライオンズ戦で、川上さんが2戦目を投げる前に山井投手が登板し、スライダーで強力打者を圧倒的に抑えました。

川上さんはスライダーを持っていませんでしたが、その時の山井投手を参考にカットスライダーっぽい球を投げるようになり、実際に打者を抑えられるようになったといいます。

山井投手の投球は、川上さんのピッチングにも影響を与えていたのです。

翌日への備えと異変

2007年日本シリーズ第5戦は、中日ドラゴンズが日本一に王手をかけた試合でした。

先発の山井大介投手が8回まで完全試合を続けていましたが、9回に岩瀬仁紀投手に交代。

岩瀬投手も無失点で抑えて、NPB史上初となる継投による完全試合を達成しました。この伝説的な継投劇は「パーフェクトリレー」と呼ばれています。

川上さんは9回が始まる前から、翌日の移動に備え、万が一の登板に向けてロッカールームで準備を整えていました。負ければ札幌に移動しての第6戦があり、川上さんの登板が予定されていたためです。

他の選手たちは完全試合や日本一を期待し、胴上げシーンをイメージしてロッカーからダグアウトに集結していく中、川上さんだけがロッカールームに残っていたのです。

ロッカールームでの決断

この時のスコアは1対0。僅差での緊迫した展開で、山井投手のパーフェクトピッチングが続いていました。

「9回ツーアウトになったら割り切って、胴上げの準備をしよう」と考えていた川上さんでしたが、予想外の出来事が起こります。

「8回裏の攻撃が始まってる頃ぐらいに、ロッカールームに山井大介が帰ってきて。『何が起きたんだろう。なんで帰ってきたんだろう』と思って」

パーフェクトやノーヒットノーランの最中の投手は、普段やらないことはしないもの。ロッカーに戻ってくることも、アンダーシャツを着替えることもないはずでした。

「すぐその後、『ピッチャー準備しろ!岩瀬!』と聞こえてきたので、交代か、と思ってね」

完全試合目前、ヒットを打たれ始めているわけでも、粘られているわけでもない中での継投で、「変える方が勇気がいる」と川上さん。だからこそ、落合監督と森繁和ヘッドコーチには、いろんな思いがあったのではないかといいます。

「本当のところは、ちょっとわかんないですね。一生、わからないままの方がいいかもしれない」

岩瀬投手への重圧

宮部によると、岩瀬投手は全てが終わって日本一になった後、その場で落合監督から「お前が一番大変だったな」という労いの言葉を受けたそうです。

川上さんは、岩瀬投手がマウンドに上がった時の特殊な状況について振り返りました。岩瀬投手にとって、日本一になるプレッシャーというより、むしろパーフェクトのプレッシャーの方が大きかったのではないかといいます。

本来なら「岩瀬コール」で盛り上がるはずが、球場は不思議な雰囲気に包まれ、観客席からは「えー!」という困惑の声も聞こえてきたそうです。

それでも精神的に強い岩瀬投手は、あっさりと試合を終わらせました。

3時間に感じた数分間

川上さんは、この継投を「落合監督らしい」と語ります。

「すべてを語ってくれない方なのでわかりませんけど、“選手を守る”というところがすごく見える監督でした。本当は何があったかわからないですけど、『自分がとにかく変えたかったから変えた』ということで終わらせてるんですけど。本当はなにか違うものがあったかもしれないし」

もしあの継投が失敗していたとしても、すべての責任を負うつもりだったと落合監督は話していたそうです。

日本シリーズ最後のロッカールームでの数分間は、「3時間ぐらいに感じました」と川上さん。

「急いでるんですよ、実際。落合監督、森繁ピッチングコーチ、山井大介っていうこの3人のロッカールームでの一瞬で決断するミーティング。急いでるんですけど、すごくスローに見えるっていうか。言葉は急いでたんですけど、スローモーションのように僕は感じましたね」

川上憲伸ならではの感覚

川上さんは、ペナントレースで読売ジャイアンツ戦でのノーヒットノーランを達成しており、交流戦の千葉ロッテマリーンズ戦でもパーフェクト目前まで経験している投手です。

日本一が決まろうかという試合で、1対0の僅差で先発ピッチャーがパーフェクトピッチングを続けている。しかし、試合の流れは1本のヒットでガラッと変わると、日本一すら取れなくなる。長い日本シリーズの歴史の中で、このような状況はままあることでした。

どちらに転ぶかわからない中で、落合監督と森繁ヘッドコーチ、そして見守る川上さんと山井投手本人、それぞれの葛藤があったはず。この一瞬が川上さんには3時間にも感じられたのです。

川上さんの挑戦「落合博満監督編」は今回で終了。次回からは東京六大学リーグ時代へと移ります。
(minto)
 

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