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出生率1.15で過去最低を更新。背景にある価値観の変化とは

出生率1.15で過去最低を更新。背景にある価値観の変化とは

2024年に生まれたこどもの数は68万6061人で、統計がある1899年以降初めて70万人を割り込みました。厚生労働省が公表した人口動態統計によると、女性1人が生涯に産むこどもの推定人数を示す合計特殊出生率は1.15となり、過去最低を更新しています。6月5日放送の『CBCラジオ #プラス!』では、CBC論説室の石塚元章特別解説委員と永岡歩アナウンサーが、少子化の背景について詳しく解説しました。

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働く女性が直面する現実

出生率は15歳から49歳の女性が生んだこどもの数を、それぞれの年齢別の人口で割って合算したものです。少子化は政府の推計より15年早く進んでいて、回復のきざしはなかなか見えてきません。

特に深刻なのが東京都の状況で、合計特殊出生率は0.96です。

永岡は、東京で働く女性の状況を踏まえ「働き方改革で女性も働き続けることが当たり前になっている。こどもを産んだ後の職場復帰を考えると、何人産むかをいろいろ考えるところは出てくると思います」と分析しました。

実際に、こどもを持たない理由として、妻が35歳未満のケースでは「自分の仕事に差し支えるから」と回答した割合が2割に上っています。職場復帰や自分のキャリアを優先する傾向です。

男性の育休取得率向上も課題

毎日新聞では、子育てと仕事の両立には男性の家事・育児への積極的な参加が不可欠と報道しています。実際、CBCでも男性社員の育児休暇取得が増えている状況だそうです。

2023年度の民間企業における男性の育児休暇取得率は、過去最高の30.1%。しかし、取得期間は1か月未満が58.1%を占めており、1週間、10日間、2週間といった短期間での取得が多い状況です。

永岡は「そうするとあまり意味がないのかな。1か月ぐらい取らないと、ふたりで育てるという意味では、なかなか難しい部分も出てくる」と実感を込めて語りました。

根本にある価値観の変化

石塚は、経済的負担を軽減する施策について、政治の世界では与野党がそれぞれの政策を打ち出して一生懸命議論しており、それは重要なポイントだと認めます。

しかし、それよりも根本的な問題として、「若者の価値観の変化」がベースにあるのではないかと考えを示しました。

結婚しなければいけないという考えを持たず、ひとりでいることの気楽さや夫婦ふたりだけの生活を選ぶ人たちも確実に存在しています。
つまり、仮に経済的な保障が十分にあったとしても、それだけで結婚や出産が増えるわけではないということです。

晩婚化が2人目出産を困難に

結婚そのものが遅く、1人目を産んだ時点ですでに年齢が高いため、2人目については「いる、いらない」の問題ではなく、時間的に難しいというケースもあります。

海外では晩婚化を前提として、1人目出産後に2人目を生みやすいよう、なるべく間を詰められるような働き方のバックアップを行なっている国もあるといいます。
このように、これまで想像できなかったような新たな知恵の出し方が求められています。

永岡は、仕事ができるようになって楽しくなってくる年代と、こどもを生む適齢期が重なりやすいのが現実。現代は仕事や社会にやりがいを見つけやすく、出産との優先順位をつけるのは自然な流れだと述べました。

政策転換の必要性

年金減額の話も出ており、出生率1.64までの回復を目指すような議論もありますが、永岡は「もはやそうではない保証の方を考えた方がいいのではないか」と疑問を投げかけました。

価値観が変わって出生率が下がるのであれば、「お金をあげるので産んでください」という従来の方向性ではなく、別の方向にお金の使い道をシフトしていく時期に来ているのではないかというのです。

石塚は「正解がなかなか見えないけど、従来の考え方ではダメだということが見えてきた感じですよね」と応じました。

興味深い歴史的データがあります。第1次ベビーブームと第2次ベビーブームの間で、1966年だけが大きく減少しています。

1966年は丙午の年で、この年に生まれた女性は「火のように激しく夫を食い殺す」という迷信があり、女性の縁談には悪い条件とされていたため出生数が減少しました。
前回の丙午にあたる1906年も同様に出生数が減っていました。

次の丙午は2026年で、来年にあたります。迷信とはいえ、一粒万倍日で財布を買いに行く人が多くいることを考えると、一概に迷信だからでは済まされないかもしれません。

永岡は、「政府としての考え方を変えるポイント、そんな岐路に立っているような気もします」と締めくくり、従来の出生率向上策とは異なるアプローチの必要性を示唆しました。
(minto)
 

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