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全国に広がる「宿泊税」の導入、自治体にとって新たな財源の行方は?

全国に広がる「宿泊税」の導入、自治体にとって新たな財源の行方は?
下呂温泉(岐阜県下呂市):筆者撮影

下呂温泉が好きである。岐阜県下呂市にあり、日本三大名泉のひとつでもある。定宿も持っている。この春も宿泊したのだが、チェックアウトの際の利用明細書に、従来は見かけなかった新たな項目を見つけた。「宿泊税」である。1名につき金額200円が記入されていた。

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「宿泊税」とは?

宿泊税は、その導入を決めた地域のホテルや旅館に宿泊する際に、「宿泊する」という行為に対して課せられる税金である。2002年(平成14年)に、東京都が全国に先駆けて導入した。地方自治体が、自分たちの条例で設けることができる「法定外の目的税」で、客が泊まる宿が“宿泊料金と共に徴収”して、それを自治体に納める。

観光など使い道は多様

熱海の海岸(静岡県熱海市):筆者撮影

宿泊税を受ける自治体は、それを「観光」などのテーマを軸に活用できる。観光スポットのPRに使うも良し、インフラの整備に使うも良し、また、新たな観光資源の開発に使うも良し。それぞれの自治体が自らの裁量で、その“財源”を使うことができる。使い道は多様である。

とにかく「集めやすい」

自治体にとってのメリットも多い。まず、集めやすい。宿泊料金と一緒に支払ってもらうからだ。航空券の購入時に支払うことが一般的な燃油サーチャージと同じスタイルとも言えそうだ。もうひとつ集めやすい理由は、負担をするのが他所から訪れる人たちであること。住民たちの負担にならないため、地元の反発も少ない。その意味において、宿泊税導入へのハードルは低い。

オーバーツーリズムへの対策費

海外からの訪問客などオーバーツーリズムが、多くの観光地の問題になって久しいが、宿泊税は、このオーバーツーリズム対策の費用としても役立てることができる。観光振興など、使い道が決まっていれば「法定外目的税」にあたるため、税収が増えても地方交付税には影響しないため、自治体の“懐”にとってもマイナスにはならない。実に“柔軟に使える”収入なのだ。

全国に広がる「宿泊税」

熱海の海岸(静岡県熱海市):筆者撮影

宿泊税の導入で、東京都に続いたのは大阪府で、2017年(平成29年)だった。その後に世界中を席巻した新型コロナウイルスの感染拡大があり、導入の動きは止まった。しかし、再び旅の往来が活発になると共に、導入の動きに勢いが出てきた。2026年(令和8年)3月までに、下呂市など19の自治体が導入した。静岡県熱海市や岐阜県高山市など、インバウンドでも人気の観光都市も加わっている。4月からは、北海道をはじめ、岐阜市や三重県鳥羽市など20の自治体が加わった。さらに2026年度中に、新たに16の自治体が導入する予定だという。宿泊税導入の動きは続く。

出張でも受験でも負担

課題もある。宿泊税は、その自治体を訪れる観光客だけでなく、あまねくすべての“宿泊客”が負担するシステムである。仕事の出張、受験生、そして病気療養や治療のために泊まって病院などを訪れる患者、こうした“観光目的ではない”人たちにも一律にかかる。物価高の中、新たな負担が増えることになる。このため、修学旅行については宿泊税を免除する自治体もある。

“ダブル課税”もある

下呂温泉(岐阜県下呂市):筆者撮影

また、温泉地では「入湯税」がある。筆者が下呂温泉に宿泊した時も、以前からの入湯税150円、新たな宿泊税200円、合わせて350円が、一泊二食の宿泊料金に加わった。1人当たりなので、家族の人数によっては、そこそこ大きな負担にもなる。二重の税金はやはり財布に堪える印象がある。さらに、都道府県も、そこにある自治体も、それぞれが宿泊税を導入というケースもあり、このダブル課税については自治体間で軽減の調整も行われている。

京都市では最大1万円

宿泊税をめぐる新たな動きとして、これまでは一律いくらという「定額制」だった宿泊税を、宿泊料金が高額な客には税率も上げるという「定率制」も増えている。2027年2月に導入予定の沖縄県が宿泊料金の2%、東京都も現在の「定額制」から3%の「定率制」を導入する予定である。また、国内外の観光客で混雑する京都市では、これまでの上限1,000円を見直して、最高で1万円という宿泊税を導入した。要するに全国統一の“原則がない”のが宿泊税なのである。

観光地によっては、日々の暮らしを営んでいる地元の人も多く、オーバーツーリズム対策も必要だろう。そのために宿泊税が有効なことは理解できるが、長引く物価高で旅行のハードルが高くなる中、せめて集めた宿泊税はどうか有効に使っていただきたいと願うばかりである。

【東西南北論説風(687)  by CBCマガジン専属ライター・北辻利寿】

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