CBC web | 中部日本放送株式会社 / CBCテレビ / CBCラジオ

MENU

パンダが日本から姿を消す日~中国返還へ、また会える時は来るのだろうか?

パンダが日本から姿を消す日~中国返還へ、また会える時は来るのだろうか?
パンダ(シェーンブルン動物園):筆者撮影

オーストリアのウィーンにあるシェーンブルン動物園で、パンダに出合ったのは、2025年(令和7年)の初夏だった。ジャイアントパンダは愛くるしい表情で笹を食べていた。各国から訪れた観光客たちも、自然に笑顔になっていた。パンダの持つ魅力だろう。

関連リンク

【画像ギャラリー】パンダが日本から姿を消す日~中国返還へ、また会える時は来るのだろうか?

双子のパンダが日本を去る

東京の上野動物園にいる双子のジャイアントパンダ、雄のシャオシャオと雌のレイレイが、2026年1月下旬に、中国に返還されることになった。東京都の発表直後から、それを惜しむ声が全国に広がり、上野動物園には、一気に近づいてしまったパンダとの別れを惜しもうという多くの人が、連日殺到している。

2頭の返還は決まっていた

パンダは、「繁殖保護研究」として、中国から海外に貸し出されている。シャオシャオとレイレイの2頭は、日本の上野動物園で2021年(令和3年)6月に生まれたのだが、日本生まれでも“中国からの貸与”という形になっている。もともとの返還期限が2026年2月20日なので、そのルールに合わせての中国への帰国という、言わば“既定路線”なのである。

パンダと日本との半世紀

パンダグッズは大人気(シェーンブルン動物園):筆者撮影

日本に初めてパンダがやって来たのは、1972年(昭和47年)だった。日中国交正常化が実現した年であり、当時の田中角栄総理と中国の周恩来首相が正常化に合意した、そのわずか1か月後に、雄のカンカンと雌のランランの2頭が来日した。まさに日中友好の“象徴”だった。当時の“パンダ・ブーム”はとにかく熱かった。テレビでは連日、2頭のパンダの表情が大きく報じられて、パンダのぬいぐるみは売れに売れた。大変なフィーバーだったことを、半世紀余りたった今でも思い出す。

続々と来日したパンダたち

パンダ(シェーンブルン動物園):筆者撮影

その後、上野動物園に続いて、和歌山県白浜町のアドベンチャーワールドや兵庫県神戸市の王子動物園など、中国からパンダが次々と来園した。多くの日本人が各地で、パンダとの“愛くるしい時間”を過ごしてきた。しかし、シャオシャオとレイレイの親であるリーリーとシンシンという2頭が2011年(平成23年)に来日して以来、中国からパンダはやって来ていない。その一方で、返還だけが進んでいた。アドベンチャーワールドからは、2025年6月に4頭のパンダが揃って返還されたため、上野動物園の2頭が返還されれば、日本からパンダが姿を消すことになる。

日中の緊張関係の中で・・・

パンダ(シェーンブルン動物園):筆者撮影

新しいパンダは日本にやって来るのか?東京都と上野動物園は、かねてから新しいパンダを雄雌ペアで貸し出してほしいと中国側に要請しているが、未だに正式な回答は「ない」と言う。そんな中、高市早苗総理の台湾有事に関する国会での発言をめぐって、日中関係は緊張状態に突入した。とても「パンダをよろしく」と外交ルートなどで言える状態でないことは、理解できる。半世紀ぶりの「パンダが国内ゼロ」の時が近づきつつある。

パンダとのお別れ近づく

パンダを撮影する観光客(シェーンブルン動物園):筆者撮影

アドベンチャーワールドの4頭が中国へ返還される時も大混雑だったが、上野動物園では多くの人を受け入れるため、自由観覧は中止した。行列に並べば1頭について1分間ほど観覧できるが、クリスマス前からは、事前のWEB申し込みが必要になる。年末年始の上野動物園は、日本生まれのパンダ、シャオシャオとレイレイとの別れを惜しむ人で、にぎわいを見せることは必至だろう。

冒頭のウィーンで出合ったパンダ、実は中国から2頭で来園した直後のタイミングだった。つい先日、マクロン大統領が訪中したフランスには2頭のパンダが送られることになった。日中の“パンダ外交”の扉は再び開くのだろうか。防衛問題とはまた違った面から、大きな関心を集めることになる。日本と中国、隣り合わせの国はそれだけ関係が深いことを、パンダの愛くるしい笑顔を見て痛感する。
          

【東西南北論説風(655)  by CBCマガジン専属ライター・北辻利寿】

この記事の画像を見る

オススメ関連コンテンツ

PAGE TOP