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前編|妊活は“個人の問題”じゃない。企業が向き合うべき「働き続けられる環境」のつくり方

前編|妊活は“個人の問題”じゃない。企業が向き合うべき「働き続けられる環境」のつくり方
CBCテレビ me:tone編集部

名古屋に本社を置く企業で、社員向けに「妊活・不妊治療」をテーマとしたセミナーが開催されました。

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一見センシティブにも思えるテーマが、なぜ企業の中で取り上げられたのでしょうか。

その背景には、妊娠・出産を個人の問題にとどめず、「男性も女性も心身ともに健やかに働き続けられる職場環境をつくりたい」という企業の姿勢がありました。

「隣の女性」のリアルな本音を伝え、「今」を生きる女性たちを応援したい――。そんな思いからCBCテレビが立ち上げたのが、「me:tone編集部」です。

今回のテーマは妊活・不妊治療と仕事の両立。
豊通ヒューマンリソースの社内セミナーで、産婦人科医の丸田医師(まるたARTクリニック院長)が、「働き方とライフプランセミナー〜妊活・不妊治療と仕事の両立を知る〜」と題して登壇しました。

男女問わず、役職や年齢もさまざまな社員や、グループ会社の人事担当者も参加。会場では多くの社員が真剣に耳を傾けていました。

前編では、「働く女性の“妊娠”の選択」について、
後編では「豊通ヒューマンリソースの健康課題への取り組み」についてお届けします。

CBCテレビ me:tone編集部

日本の不妊治療の現状について

少子化が深刻化する中、日本の出生数は減少を続けています。
2024年の出生数は68万6,061人となり、初めて70万人を割り込みました。

丸田医師はこう語ります。

丸田医師:「日本は世界的に見ても、不妊治療の件数は非常に多い一方で出生率は低い。“世界有数の不妊治療大国”とも言える状況です」

その背景には、昔から日本では性教育をはじめとした“正しい知識”を学ぶ機会が男女ともに十分でないことがあると指摘します。知識があってこそ、選択ができる。男女ともに正しい知識を持ち、将来を考えられる環境づくりが必要だと話しました。

CBCテレビ me:tone編集部

プレコンセプションケアとリプロダクティブヘルス

将来の妊娠を見据えた健康管理を「プレコンセプションケア」と言います。

丸田医師は「“プレコンセプションケア”は、男女ともに将来を見据えて妊娠を考えながら“健康でいること”を考える視点へ広がってきている」と話します。

ここでいう“健康”とは、“体が元気”という「肉体面」だけでなく、「精神面」や社会的な安定(仕事や生活)、この3つすべてが満たされた状態を指します。

CBCテレビ me:tone編集部

もうひとつ重要な概念が「リプロダクティブヘルス(リプロダクティブライツ)」です。これは、女性の「産みたい時に産み、産みたくない時には産まないという選択(権利)」のこと。

例えば、将来は妊娠を希望しているが今は仕事に注力したいという女性や、健康面や家庭の事情などで妊娠のタイミングを考えたいという女性の意思を尊重するということです。妊娠や出産は、周囲の期待に合わせるものではなく、自分の意思と健康のもとに決めてよい。その権利を尊重した上で、男女ともに生活や健康と向き合うこと(プレコンセプションケア)が、これからより重要になると丸田医師は語りました。

CBCテレビ me:tone編集部

いちばん大切なのは「自分の状況を知ること」

丸田医師が繰り返したのは、「知識を得ること」と、「自分の状況を知ること」の大切さ。

年齢や体調によって、妊娠の可能性は変わります。卵子は年齢の影響を受けやすく、数も質も変化していきます。

「妊娠しやすさは“母体の年齢”よりも“卵子の年齢”が大きく関わります」とと丸田医師は説明します。そうした事実を知ることで、検査や治療を早めに検討するなど、選択肢を広げることができます。

CBCテレビ me:tone編集部

AMH検査(血液検査で卵巣予備機能を調べる検査)は、自身の“卵巣年齢”を知ることができる検査です。
「まるたARTクリニック」では、多くの女性に受けてほしいという思いから、比較的受けやすい価格設定にしているそうです。

もし年齢に反してAMHが低い場合、早めに妊活を始めるという選択や、独身だとしても将来の妊娠に向けて“卵子凍結”という選択もあります。
キャリアを築きたい女性にとって、妊娠のタイミングは簡単ではありません。
丸田医師は、卵子凍結もひとつの有効な手段だと説明しました。

不妊治療とキャリアの両立の現実

不妊治療は通院回数が多く、長期に及ぶこともあります。その結果、約4割の女性は退職を選んでいるという現実もあるそうです。丸田医師は「夫婦で授かりたい赤ちゃんのために、女性だけが仕事を犠牲にするのは健全ではない」と語気を強めました。不妊治療に向き合う女性に対して必要なのは、男性も会社自体も正しい知識を学んで理解し、休みなど仕事の調整をしやすい制度や環境を整えること。

企業が学びの場を設けることは、働き続けられる環境づくりの第一歩だと評価しました。

CBCテレビ me:tone編集部

セミナーに参加した男性管理職のリアルな声

今回のセミナーには、社長をはじめ、多くの男性社員も熱心に聞いている姿が印象的でした。40代管理職の男性社員はこう話します。

me:tone編集部:「センシティブなテーマですが、男性の管理職の立場として、どんな思いでセミナーに参加されたのでしょうか?」

男性管理職(40代):「私自身も不妊治療のために通院した経験があります。もし部下が同じ状況になったとき、理解できる上司でありたいと思い、参加した。会社がこうした機会をつくってくれることはありがたい。上司が学ぶことで、社内全体で相談のしやすさは確実に変わると思う。」

また、30代の女性社員は、

女性社員(30代)「自分も不妊治療経験者であり、知識はある程度あったものの改めて学び直したいと思って参加した。治療内容に踏み込むのではなく、『仕事は大丈夫?』と寄り添える存在になりたい。うちの会社は、個人の事情がきちんと尊重される雰囲気があるので、その安心感を土台に、学びを日々の関わりに少しずつ生かしていけたらと思った。」

と語りました。

豊通ヒューマンリソースでは以前、男性も参加できる「生理痛体験」セミナーを実施。体験を通して理解を深める取り組みを続けています。

後編では、実際の制度や今後求められる企業の健康支援についてさらに掘り下げます。

(まるたARTクリニック院長 丸田英先生)
久留米大学医学部卒業。名古屋大学医学部附属病院産婦人科を経て、2012年3月より生殖医療専門に従事。2020年3月に「まるたARTクリニック」開業。日本産科婦人科学会認定専門医。
不妊予防も生殖医療の一環と捉え、「プレコンセプションケア(妊娠前の健康管理)」の普及に注力している。

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