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40歳で卵子凍結!42歳で妊娠・出産を叶えた体験談

40歳で卵子凍結!42歳で妊娠・出産を叶えた体験談
CBCテレビ me:tone編集部

ロールモデルではなく、身近な「隣の女性」が持つリアルな本音を取材することで、「今」を生きる女性たちを応援したい――。 そんな思いから、CBCテレビは「me:tone編集部」を立ち上げました。
         
今回取材したのは、名古屋市・池下にある「まるたARTクリニック」で開催された、“卵子凍結”をテーマにした対談セミナーです。

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卵子凍結についてセミナー画像は【こちら】

前半では、同院の丸田院長が「プレコンセプションケア(妊娠前からの健康管理)」をはじめ、「医学的に健康な出産ができるタイムリミット」や「凍結卵子での妊娠率」など、日本における卵子凍結の現状と正しい知識を解説。

後半では、40歳で卵子凍結を決断し、42歳で移植・妊娠・出産に至ったA子さんが登壇。
卵子凍結から出産までのリアルな体験談、そして今の思いについて語られました。

さらに「me:tone編集部」では、セミナー参加者への独自取材も実施。
(取材・報告;me:tone 編集部 小島)

卵子凍結セミナーの様子

A子さんは、丸田医師の指導のもと40歳で40個の卵子を凍結しました。年齢に応じて、妊娠の確立を少しでも高めるため、卵子の目標数を決め、治療方針を固めていったのだそうです。1回の採卵でどれだけ卵子が取れるかはやってみないと分からず、しかも保険適用外。回数を重ねるほど治療費は高額になります。それでも妊娠が100%保証されるわけではない――だからこそ、卵子凍結を「する」「しない」の判断は人それぞれ。
「100%皆さんにおすすめできるとは言えません。それでも、将来の子どものために今できることは最大限やっておきたかった」A子さんはそう語ります。

前編では、卵子凍結を決断した背景や思い、実際に経験した感想を伺いました。後編では、その後の「妊娠・出産」までのリアルな体験を伺います。

卵子凍結セミナーの様子

出産は奇跡の連続⁉40歳で卵子凍結、42歳で母に

司会者:「実際に凍結した卵子を受精・移植した時のお気持ちを教えてください。」

A子さん:「いよいよこの時がきたんだ、というドキドキ感を覚えています。うまくいっても、いかなくても、まずはやってみよう!という気持ちでした」

移植前、看護師さんから「もう痛いのは終わりで、移植は痛くないから大丈夫」と言われて「痛くないんだ!やった!」とほっとしたことを今でも鮮明に覚えているそうです。

丸田医師はこう語ります。
「卵子凍結は“将来の妊娠の可能性を残す”ための大切な手段。ただ、実際に精子を受け入れて受精できるかどうかは、また別の大きな壁。卵子凍結を行う人の多くは独身の方なので、将来のパートナーや精子の状態が分からないまま保存することになります。いざ使うとき、精子が卵子の中に入れる力があるか、そして受精卵が成長していくかは誰にも分からない。その段階を乗り越えて受精卵ができた時、ようやく妊娠への第一歩が見えます。」凍結卵子が受精し、胚盤胞まで育った瞬間、A子さんも丸田医師も「すごくほっとした。大事なステップをクリアできた」と非常に嬉しかったと当時を振り返ります。

まるたARTクリニック提供:胚盤胞のイメージ

司会者:「妊娠から出産までの経過を教えてください。」

A子さん:「年齢的に何度もトライしなければ難しいと覚悟していたので、体外受精1回目で陽性反応が出た時は本当に驚きました。先生に“妊娠してますよ”と言われた光景は、今でもはっきり覚えてます。」

妊娠中はつわりで仕事を休む日もありましたが、入院するほどではなく、産休に入るまで仕事を続けたそうです。そして無事に出産。取材時には、生後11カ月になるまで育っていました。

丸田医師:「卵子凍結から受精、妊娠までを支えるには、高い技術を持った医療機関であることが大切です。経験や実績がものを言う領域ですから、実績の少ない施設では結果が出にくいこともあります。卵子凍結や不妊治療を検討する際は、受精・培養・妊娠までの技術を備えたクリニックをしっかり見極めてほしいですね。」

イメージ写真

司会者:「最後に、第二子に向けて今思うことについてお聞かせください。」

A子さん:「実は、第一子妊娠のために凍結した受精卵と卵子がまだ残っていて、保管してあるんです。だから次は、その卵を使って移植からスタートできるというのが、すごく心強いし、気持ちが楽です。」

現在、2人目のタイミングについては、夫婦で話し合いを重ねている最中だそうです。「もし40代でまた採卵から始めることになっていたら、もっと焦っていたと思います。受精卵が残っているという状況で2人目を考えられるのは、すごくありがたいことです」とA子さん。

対談の最後に、丸田医師が力を込めて語りました。「僕は男性なので、卵子凍結をしたくてもできません。A子さんも本当に大変だったと思いますし、費用も決して安くはなかったでしょう。妊娠して出産するというのは、命を懸けること。男性にはできない、尊いことです。今できることを、自身の信念にもとづいて熟慮し、将来の妊娠の可能性をどう残すか――。そのために正しい情報を得て、納得のいく選択をしてほしいと思います。

※まるたARTクリニックで採卵した凍結卵子は、原則としてグレイスバンク(卵子凍結保管サービス)でのお預かりになります。

イメージ写真

今回の「卵子凍結セミナー」は、男性や家族にも広く知ってもらいたいというクリニックの意向から、パートナー同伴での参加者も見られました。

ある40代の夫婦は、すでに不妊治療の真っ最中。卵子凍結をしたばかりなので、凍結卵子から出産された方の話を聞きたくて参加したそうです。「僕自身、まだまだ知識が足りないと感じています。夫婦の将来のために、こうしたセミナーを通じて正しい知識を得たいと思っています。」さらにご主人は費用の負担や治療の長い道のりに不安を抱きつつも、「夫婦で力を合わせて、できる限りのことをしていきたい」と前向きな言葉を残しました。

【まるたARTクリニック 院長からのコメント】
不妊治療や生殖医療に携わって感じるのは、命を懸けて治療に臨む方が多いということです。その思いに応えられるよう、私たちも全力でサポートしています。それでも結果的に妊娠に至らない方もいます。皆さんが口をそろえておっしゃるのは、「もっと早く自分の身体や妊娠の知識を知っていれば、行動できたのに」ということです。

卵子の老化や減少は、知識として理解していても、自分ごととして捉えられない――。そうしたギャップを埋めるために、知識を社会全体で共有していくことが重要だと思います。

妊娠は、個人の問題ではなく社会全体で考えるべき課題です。家族だけでなく、会社や地域など、周囲の理解を得られる社会づくりが必要だと思います。知っていれば得られたはずの幸せを、知らないがために逃してしまうことは本当に残念です。妊娠への第一歩は、治療ではなく“正しい知識を持つこと”。それが最も大切だと感じています。

(まるたARTクリニック院長 丸田英先生)
久留米大学医学部卒業。名古屋大学医学部附属病院産婦人科を経て、2012年3月より生殖医療専門に従事。2020年3月に「まるたARTクリニック」開業。日本産科婦人科学会認定専門医。
不妊予防も生殖医療の一環と捉え、「プレコンセプションケア(妊娠前の健康管理)」の普及に注力している。

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