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【取材】卵子凍結のリアル──費用はいくら?成功率は?働く女性の選択と葛藤

【取材】卵子凍結のリアル──費用はいくら?成功率は?働く女性の選択と葛藤
CBCテレビ me:tone編集部

ロールモデルではなく、身近な「隣の女性」が持つリアルな本音を取材することで、「今」を生きる女性たちを応援したい――。 そんな思いから、CBCテレビは「me:tone編集部」を立ち上げました。 
        
今回取材したのは、名古屋市・池下にある「まるたARTクリニック」で開催された“卵子凍結”をテーマにした対談セミナー。

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卵子凍結についてセミナー画像は【こちら】

前半では、同院の丸田院長が「プレコンセプションケア」をはじめ、「医学的に健康な出産ができるタイムリミット」や「凍結卵子でも妊娠率」など、卵子凍結に関する日本の現状や正しい知識を解説。

後半では、40歳で卵子凍結を決断し、42歳で移植・妊娠・出産に至ったA子さんと丸田院長による対談が行われました。A子さんのリアルな体験談を通して、卵子凍結の決断から出産までの道のり、そしてこれからの生き方について語られました。さらに「me:tone編集部」では、セミナーに参加された方々への独自取材も実施しました。
(取材・報告;me:tone 編集部 小島)

卵子凍結セミナーの様子

39歳で卵子凍結を決断。独身当時の自分にできる最大の“妊活”

司会:「参加者も一番気になるところだと思いますが、卵子凍結をしたきっかけはなんだったのでしょうか?」

A子さん:「39歳の当時、まだ結婚をしていませんでした。結婚を含めて自分はどう生きていきたいか答えを出せない中で、家庭をもち子どもを授かる選択肢を将来に残しておきたいと思ったためです。」

当時、結婚や出産はまだ現実味を帯びていなかったA子さん。しかし、年齢を重ねるほど妊娠・出産が難しくなる現実に、焦りを感じていたといいます。「家庭を持ち、子どもを授かる選択肢を残したい」――その思いで、A子さんがたどり着いたのが“卵子凍結”でした。

もともとは「ハリウッドセレブや芸能人だけのもの」というイメージを持っていたそうですが、東京のセミナーへの参加やSNSでの情報収集を通じて、自分の年齢で採卵できる卵子数や流れを学習。最終的に、地元・名古屋で実施している「まるたARTクリニック」に出会いました。

卵子凍結セミナーの様子

司会:「色んな情報やセミナーがある中で、実際どのように正しい知識を付けていったらいいのでしょうか?」

丸田医師:「一つのクリニックだけではなく、複数の情報を比較することが大切です。そのうえで、どの病院・どの先生に任せるのか、費用や通いやすさ、治療実績などを含めて判断してほしいと思います。」

A子さんも、排卵の手順・費用・通いやすさ・必要な卵子数などを整理しながら検討。当時の仕事は忙しかったものの、半日休みを数回とることで通院を両立させました。「やれることを最大限やって、もしダメだったらその時は諦めがつく」――そんな覚悟で臨んだそうです。

卵子凍結セミナーの様子

妊娠の保証はない“卵子凍結”。それでも多くの女性が選択する理由と現実

司会者:「実際に採卵に進んだ時に、気を付けたことや工夫したことなどありましたか?」

A子さん:「仕事は続けながらも、なるべく睡眠をしっかり取り、出張などは極力減らしてデスクワーク中心にしました。」

採卵前には卵子を誘発するために、自己注射や薬の時間管理など、細やかな対応が必要。忙しい日々の中で、会社の上司や同僚などに理解を求めて協力を得る方法もありますが、職場には詳細を話さず、有給を取って通院を続けました。「頻繁に休まなくても済んだし、有休の理由を聞いてくる人もいない職場環境だったから良かった」と振り返ります。

丸田医師は「仕事と不妊治療、卵子凍結を両立できる環境づくりが理想」と語り、現代の働く女性に寄り添ったサポートを心がけていると話しました。

自己注射のイメージ

司会者:「実際は何個採卵して、いくつ凍結できましたか?」

A子さん:「先生と相談して目標を40個に設定し、5回の採卵を行いました。毎回手術なので、緊張しましたが看護師さんが優しく声をかけてくれて落ち着けました。」

手術時の麻酔は必ずしも使うわけではないですが、A子さんは麻酔を使用しました。気づいた時にはベッドの上。術後は重い生理痛のような痛みが1~2時間続きましたが、午後は少し動けるほどに回復。採卵結果はすぐには分からず、後日の診察で報告されるため、「思っていたよりも少なくて落ち込むこともあった」と話します。

丸田医師:「採卵の回数や目標数は明確に伝えるようにしています。将来に“確約に近い妊娠の可能性”を残すためです。ただし、どこまで続けるかはご本人の判断になります。」

まるたARTクリニック提供:オペ室の写真

司会者:「実際に凍結してみて、どんな気持ちでしたか?」

A子さん:「卵子40個の卵子を獲得できた時は、“今できることはやりきった”という安心した気持ち。でも、それで将来必ず妊娠、出産できると決まったわけではないですし、保険も効かないので費用はかなりの額になりました。」

「数は取れたけど、質は受精してみないと分からない」と先生からも言われたそうです。そのうえでA子さんはこう話します。
「何が正解かは人それぞれ。私は結果的に報われたけど、全員に100%おすすめできるものではありません。自分で正しい情報を納得のいくまで調べて、理解したうえで判断することが、その人なりの“正解”だと思います。」

※まるたARTクリニックで採卵した凍結卵子は、原則としてグレイスバンク(卵子凍結保管サービス)でのお預かりになります。

まるたARTクリニック提供:卵子の状態を表す写真※成熟卵のみ凍結可能

キャリアも子どもも諦めない――卵子凍結を選ぶ働く女性たちの本音

今回、セミナーに参加された女性の協力を得て「me:tone編集部」では独自にインタビュー取材を行いました。

最初に話を聞いたのは、オシャレな雰囲気の34歳・独身の女性。卵子凍結を検討している理由を尋ねると「来年は仕事が忙しくなるのが分かっていて、年齢のことも考えると、今年のうちに卵子凍結をしておきたいと思った」と話してくれました。費用については「名古屋は助成金がないので確かに高いと思う。でも、将来“子どもが欲しい”と思った時にお金でなんとかできるなら…」と、現実と希望のあいだで冷静に考えている様子。また、年下の友人がすでに卵子凍結をしていたことを知り、「意外と身近にやっている人がいるんだ…」と感じたそうです。

次に話を聞いたのは、凛としたたたずまいの女性。既にAMH(卵巣予備能)検査を受け、採卵のタイミングを相談するためにセミナーに参加されたとのこと。彼女は24歳で大学院を卒業後、36歳までドイツでバイオリニストとして活動していました。結婚や出産を見据え、苦渋の決断で日本に帰国。日本で卵子凍結をしている友人の話を聞き、「もう特別なことじゃない」と感じたそうです。「子どもが欲しいという思いがある。38歳で婚活も頑張りながら、同時に妊活も視野に入れて卵子凍結を決めました」と語ってくれました。

今回の取材では、“卵子凍結”を選択した女性たちの率直な思いや、現実的な体験談を聞くことができました。キャリアも子どもも諦めたくない女性にとって、結婚や出産はとてもセンシティブなテーマ。だからこそ、自分の経験を語ることは勇気のいることです。

セミナーで体験を共有してくれたA子さんも、「同じように悩む人の役に立てたら」という思いで登壇を決意したといいます。正しい情報を知り、自分の人生をどう選ぶか――。その一歩を考えるきっかけとなるセミナーでした。

後編では、A子さんが卵子凍結から実際に妊娠・出産に至るまでの実体験と、その先にある思いをお届けします。

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