ベンチ采配の“すき間”に潜んでいた悪夢、井上竜まさかの開幕3連敗
投げ合った相手投手に祝福の拍手を送る高橋宏斗(※「高」は「はしごだか」)。その清々しい姿に感動すら覚えながらも、現実に立ち返った。井上ドラゴンズは開幕シリーズで3連敗。実に8年ぶりの屈辱である。(敬称略)
勝ったと思った開幕ゲーム

悪夢の始まりは、2026年(令和8年)3月27日、マツダスタジアムで広島東洋カープに喫した、痛恨のサヨナラ逆転負けだった。ドラゴンズの開幕投手だった柳裕也は、オープン戦での不振を払拭する見事な粘投を見せた。打線も好調で17安打、2回表の2点先制に続いて、9回表には、この日4安打の石伊雄太による2点タイムリーなどで5対1のリード。「勝った」と確信した。しかし・・・。
抑えのアブレウが「まさか」
脇腹の肉離れで開幕に間に合わなかった松山晋也に代わって、抑えのマウンドに上がったアルベルト・アブレウが大乱調だった。4点差を追いつかれて、あっという間に同点にされた。延長に入った10回裏に、後を受けた勝野昌慶が広島のドラフト3位ルーキー、勝田成にサヨナラ安打を打たれて、開幕ゲームを落とした。打たれたアブレウは、試合後、自力で歩くことができずに、両脇を支えられて球場を後にした。ぎっくり腰だと言う。そんな状態で投げていたのか。
なぜ、異変に気がつかない?
深刻な要素が詰まった開幕戦でのまさかの逆転負けだった。「おかしいという異変があるなら早めに言ってほしかった」と井上一樹監督はコメントした。しかし、アブレウだけの責任ではないだろう。WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)のドミニカ代表で投げたアブレウ、その体調面をチームとしてしっかり分析できていたのか。
ましてや今季から新たに加わった助っ人である。セーブがつかない4点差でのマウンドを、本人はどう受け止めていたのか。そもそも、4点取られるまで、竜ベンチも捕手も、ぎっくり腰という重症に気づかなかったのか。そこには「勝てる試合を落とす」という、昨季までと変わらない残念な竜の姿があった。
ルーキー櫻井、圧巻のデビュー戦

開幕2戦目は、ドラフト2位の櫻井頼之介がプロ初登板初先発だった。オープン戦で16イニング無失点だったルーキーは、ここでも快投を見せた。前夜の痛い負けを吹き飛ばしてくれる新風の勝利に期待した。7回を投げて三振9個を奪う力投、7回裏の押し出し四球で1点を与えたが見事なデビュー戦だった。
しかし打線の援護がない。昨季、好投を続けながらも初勝利が遠かった金丸夢斗を思い出した。新人が頑張っているのに、先輩たちは何をしているのか。1死満塁のピンチを迎えたマウンドの櫻井に、誰も歩み寄って声をかけにいかないことも気になった。
新人投手リレー実らず
それでも田中幹也のタイムリーで1対1の同点に追いついた。ここでドラゴンズベンチは、育成ドラフト1位から支配下登録したばかりの牧野憲伸をマウンドに送った。春季キャンプで牧野の投球を目の当たりにしたが、育成とは思えないほどの完成度だった。しかし、開幕2戦目、同点の終盤戦、あえてルーキーによる投手リレーを選んだ真意とは?ここは経験豊富な投手の起用でもよかったのでは?
「早めに登板させたかった。使えるコマは増やしたい」井上監督は、牧野の初登板をこう語ったが、結果的に牧野は2つのフォアボールから決勝点を奪われた。開幕2連敗。
宏斗でも勝てなかった

必勝をめざした3戦目は、高橋宏斗と、今季に抑えから先発へ転向した栗林良吏の、手に汗握る投手戦だった。共に2020年(令和2年)のドラフト1位、共に愛知県出身、栗林もドラゴンズのドラフト指名候補だっただけに、因縁めいたものを感じる。しかし、そんな感傷に浸るよりも、とにかくドラゴンズは勝たねばならないゲームだった。結果は、細川成也の1安打のみ、栗林の引き立て役になって、チームは開幕早々に借金3を背負った。竜打線の無策ぶりが浮き彫りになった。
相変わらず「勝ち切れない」
開幕3連戦で気になったことは、ドラゴンズ野球の“変化のなさ”である。ベンチ采配に、昨季までと同様の“すき間”を感じてしまった。ようやく整い始めた戦力を縦横無尽に使う“参謀”として、新たにヘッドコーチという役を設けて、経験豊富な嶋基宏コーチを招いた。すでに捕手コーチとして、大野奨太コーチがいる。嶋と大野、日本代表“侍ジャパン”でも活躍した2人の“名捕手”がベンチにいながら、特に開幕戦での采配などはあり得ないと思った。コミュニケーションは大丈夫なのか。
この3連戦、3人の先発投手はゲームを作り、素晴らしいピッチングを見せた。打線も沢山ヒットを打った。しかし、山のような残塁の数が目立った。戦いのチグハグさを心に澱のように残して、井上竜は開幕ダッシュに失敗した。
阪神タイガースに対抗するのは中日ドラゴンズ。そんな下馬評が高かっただけに、あまりにショックな開幕3連敗。同じように3連敗した北海道日本ハムファイターズの新庄剛志監督はこう語った。
「下を向くことはない。3連敗があったから、てっぺんを取れたシーズンにしたい」
他チームの指揮官ながら、この素晴らしい言葉を井上監督と竜のベンチに送りたい。その上で、本拠地バンテリンドームでの讀賣ジャイアンツとの3連戦、チケットを手にスタンド応援に駆けつける。
【CBCマガジン専属ライター・北辻利寿】
※中日ドラゴンズ検定1級公式認定者の筆者が“ファン目線”で執筆するドラゴンズ論説です。著書に『愛しのドラゴンズ!ファンとして歩んだ半世紀』『竜の逆襲 愛しのドラゴンズ!2』(ともに、ゆいぽおと刊)『屈辱と萌芽 立浪和義の143試合』(東京ニュース通信社刊)ほか。











