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嶋基宏ヘッドコーチへの大いなる期待~ドラゴンズ歴代“参謀”列伝

嶋基宏ヘッドコーチへの大いなる期待~ドラゴンズ歴代“参謀”列伝
嶋基宏ヘッドコーチ(C)CBCテレビ

井上ドラゴンズの2026年シーズンに向けて、新たな参謀が加わった。嶋基宏ヘッドコーチである。野村克也さんや星野仙一さんら名監督の下でキャッチャーとして活躍した経験があるだけに、チームの作戦面や戦略面など、その手腕に幅広い効果が期待される。

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近藤ヘッドは巨人V10を阻止

「ヘッドコーチ」というと、筆者にとって真っ先に浮かぶのは、近藤貞雄さんである。1974年(昭和49年)に、ドラゴンズは長嶋茂雄さんや王貞治さんを擁した讀賣ジャイアンツの10連覇を阻止して、20年ぶりのリーグ優勝を果たした。その時に、与那嶺要監督を、ヘッド兼投手コーチとして支えたのが近藤さんだった。「投手分業制」をいち早く推奨して、その年には初代セーブ王を星野仙一投手が、翌年には鈴木孝政投手がそれぞれ獲得するなど、ドラゴンズの「良い抑え投手を持つ」という伝統の歩みを始めた功労者でもある。

島野ヘッドは“闘将”の右腕

2期11年にわたって、ドラゴンズの監督をつとめた星野仙一さんの横には、必ずこの人がいた。島野育夫さんである。“闘将”というイメージで、時として激しい気性を前面に出した星野監督を、どっしりとした空気感で支えた名参謀だった。カラオケの持ち歌『浪花恋しぐれ』の歌詞を「星野のためなら女房も泣かす」と替えて歌うことでも知られていた。
星野さんがドラゴンズを去って、阪神タイガースの監督に就任した時も、後を追うように関西へ。とにかく2人の絆は深かった。

森ヘッドは黄金時代に手腕

8年間でリーグ優勝4回、日本一1回と、ドラゴンズの黄金時代を築いた落合博満監督には森繁和さんがいた。最初は投手やバッテリーのコーチとして仕えていたが、最後にはヘッドコーチとして球団初の連覇に貢献した。外国人選手の獲得についても長けていて、数多くの“助っ人”を入団させた。森さんは2025年(令和7年)秋に『回想』(株式会社カイゼン刊)という著書を出版したが、その中でも落合監督との揺るぎない信頼関係が述懐されている。まさに勝利の“実績を挙げた”参謀だった。著書のラストページには落合さんとのツーショット写真が掲載されていて、それを目にすると竜党としては、強かった時代を懐かしんでしまう。

3人はいずれも監督に就任

近藤、島野、そして森、この3人のヘッドコーチの時代、ドラゴンズはいずれもリーグ優勝を果たしている。近藤さんと森さんは、その後に、監督としてもドラゴンズを率いた。島野さんも「代行」とは言え、1995年(平成7年)髙木守道監督がシーズン途中で休養した際には、監督に就いている。3人共、それだけの能力を兼ね備えていた大物参謀だった。井上ドラゴンズ同様に、藤川球児監督1年目はヘッドコーチが不在だった阪神タイガースも、来季はヘッドコーチを置く。和田豊さん、過去のタイガースで監督を4年間つとめた経験を持つ。リーグ優勝した球団も“参謀”の大切さを考えたということだろう。

巨人に奪われた名参謀

ドラゴンズにとって、初のリーグ優勝と日本一を達成した1954年(昭和29年)に、エース杉下茂さんのバックでショートを守っていたのは牧野茂さんだった。そんなドラゴンズ一筋だった名選手が、現役引退後は、川上哲治監督に招かれて、ジャイアンツのヘッドコーチとして9連覇を支えた。その後、藤田元司監督時代にも、再びヘッドコーチに就任した。これだけの名参謀が、他球団に“流出”してしまったことは、ドラゴンズにとっても残念な歴史である。

ヘッドコーチという存在の重さ

嶋基宏ヘッドコーチ(C)CBCテレビ

残念だと言えば、最近では、与田剛監督の下で2019年(平成31年)から3年間、ヘッドコーチを務めた伊東勤さんである。西武ライオンズ(現・埼玉西武)の捕手として、パ・リーグ優勝14回、日本一8回を経験。その後はライオンズなど2球団で監督も経験した。それだけの大物が、ヘッドコーチとしてドラゴンズにやって来たことに、ファンの期待は高まった。

しかし、与田・伊東体制は3年で終わった。その間には、野手を使い果たし「投手の代打に投手」という何とも苦しい采配に陥ったことがあった。与田監督に批判が集中したが、参謀として横に控える伊東ヘッドコーチの責任も重いはずだ。なお、その後、立浪和義監督と片岡篤史ヘッドコーチという“PLコンビ”の時代もあったが、当時の戦績が物語っているので、ここでの記述は差し控えておく。

嶋ヘッドコーチは、名古屋そして高知と、秋季キャンプで始動した。井上監督と嶋ヘッドコーチが、過去に頂点を極めた“名監督と名参謀”のコンビになってくれるよう、期待せずにはいられない。
                                                           
                     【CBCマガジン専属ライター・北辻利寿】

※中日ドラゴンズ検定1級公式認定者の筆者が“ファン目線”で執筆するドラゴンズ論説です。著書に『屈辱と萌芽 立浪和義の143試合』(東京ニュース通信社刊)『愛しのドラゴンズ!ファンとして歩んだ半世紀』『竜の逆襲  愛しのドラゴンズ!2』(ともに、ゆいぽおと刊)ほか。


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