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井上竜は覚悟の一敗?CS争いに水を差す“藤浪vs左打線”のモヤモヤ感

井上竜は覚悟の一敗?CS争いに水を差す“藤浪vs左打線”のモヤモヤ感
井上一樹監督と松中信彦打撃統括コーチ(右から)(C)CBCテレビ

勝てば采配的中、負ければ奇策失敗。2025年(令和7年)8月31日、夏休み最後の日の横浜スタジアムは、いつもとは違う空気に包まれた。中日ドラゴンズは、またしても左打者ばかりを並べる“特別な”打線を組んだ。(敬称略)

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右打者への死球に警戒

事の発端は2週間前にさかのぼる。米メジャーリーグから日本球界に復帰した藤浪晋太郎が、横浜DeNAベイスターズの先発マウンドに立った。対する井上ドラゴンズは、1番から9番まで全員左打者を並べた。もともとコントロールに難があり荒れ球で知られる藤浪に対する策だった。藤浪は直前のイ-スタン・リーグの讀賣ジャイアンツ戦で7四死球、この内の2つがデッドボールだった。藤浪の抜け球による、右打者への死球を警戒しての左打線。井上一樹監督も松中信彦打撃統括コーチも理由を明言していた。結果、藤浪に5回を1点に抑えられて、その後同点にしたものの、試合は延長12回の末に敗れた。

再びの“左打者”打線

井上一樹監督(C)CBCテレビ

藤浪は再び、ドラゴンズ戦に先発してきた。前回登板から2週間空いたが、1軍で投げることはなく、またしても竜の前に姿を見せた。ベイスターズの三浦大輔監督は「ローテーションの関係」と語った。そして、井上監督は、適任者がいなかった「7番・ショート」以外、今回も左打者をずらりと並べるスタメンを組んだ。直前にハマスタで行われた2試合、ドラゴンズ打線は絶好調で、いずれの試合も9得点を挙げていた。ここ数年の“貧打竜”を忘れさせる猛打ぶりだった。しかし、あえてその打線を替えてまで、藤浪による死球を警戒したのである。

好調なブライトも使えず

結果は、藤浪に見事に抑えられた。2週間前よりも2イニング長い7回を投げられて、4安打9三振の無失点だった。試合も0対2で敗れた。横浜に来てから2試合打ちまくった打線も沈黙し、今季21度目の零敗を喫した。藤浪がマウンドを降りた後に、右打者も打席に立ったが、代打のタイミングもあって、機能したとは言い難い。前夜に決勝の3点2ベースを打ったブライト健太にいたっては、打席に立つ機会がなかった。そんなもったいない試合運びにならざるを得ない“いびつな”打線なのである。試合前、3位のベイスターズに0.5ゲーム差に迫っていた大切な試合だったが、その差は再び開くことになった。

堂々と勝負してほしかった

藤浪に対する2試合に左打者ばかりの打線を組んだドラゴンズのベンチ采配には、野球評論家やファンの間にも賛否両論がある。それを踏まえた上で、ドラゴンズファンのひとりとして言わせていただくならば、堂々といつも通りのメンバーで勝負してほしかった。死球を警戒することも理解できる。それを恐れて右打者が打撃の調子を崩す可能性もあるだろう。右投手の藤浪に対して左打者がプレッシャーをかけるという戦略もあったのだろう。しかし、目の前の敵を倒すためには、最善のメンバーで臨むべきである。ましてやドラゴンズの立場は“挑戦者”であり、待望久しい13年ぶりのクライマックスシリーズ(CS)出場がかかっている。

最高のプレーを見せてこそ

井上一樹監督と松中信彦打撃統括コーチ(右から)(C)CBCテレビ

藤浪が先発した2試合、ドラゴンズは目の前のライバルチームに2敗したことになる。この奇策を取る以上は、勝たなければならなかった。死球は大きなケガに直結するリスクもある。しかし、それも含めてのプロ野球なのである。多くのファンに、磨き抜かれたプロの技を、そしてプレーを見せる場なのである。前回の試合後に藤浪はこう語った。「勝手に嫌がってくれる分には好きなだけ嫌がって下さい」。竜党としては実に腹立たしい言葉だが、それがプロなのだ。「これが今季のドラゴンズ打線だ」という最高のメンバーを揃えて、堂々と完膚なきまで藤浪を打ち砕いて、あのコメントを後悔させてやってほしかった。

戦い済んで残ったものは、藤浪の日本球界復帰後の初勝利、そして井上ドラゴンズの今季63つ目の敗戦。もし勝っていれば3位に浮上していた。この日の采配の成否、それはペナントレースに残された24試合の戦いが証明することになる。
                                                           
                     
【CBCマガジン専属ライター・北辻利寿】

※中日ドラゴンズ検定1級公式認定者の筆者が“ファン目線”で執筆するドラゴンズ論説です。著書に『屈辱と萌芽 立浪和義の143試合』(東京ニュース通信社刊)『愛しのドラゴンズ!ファンとして歩んだ半世紀』『竜の逆襲  愛しのドラゴンズ!2』(ともに、ゆいぽおと刊)ほか。

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