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立浪ドラゴンズ最下位で前半戦を終了~新監督を襲った最大の誤算とは?

立浪ドラゴンズ最下位で前半戦を終了~新監督を襲った最大の誤算とは?

立浪和義監督が指揮を取る新生・中日ドラゴンズが、2022年ペナントレースの前半戦を終えた。オールスターゲームをひとつの節目とするから、こういう表現になるのだが、すでに89試合を戦い終えている。38勝50敗1分、借金12。目立った戦力補強がない中、新監督の戦いはきびしいものと予想されたが、7年ぶり最下位での折り返しは、竜党にとっては淋しい限りである。ここまで低迷した数々の誤算を考える。

立浪監督がこだわる“二遊間”

「サンデードラゴンズ」より京田陽太選手(C)CBCテレビ

シーズン前に、ドラゴンズOBで野球解説者の川上憲伸さんはこう語っていた。

「セカンドに誰を入れるのかに注目したい。立浪監督にとって二遊間は特別だから」

立浪和義という選手は、PL高校時代はキャプテンとして甲子園で春夏連覇を成し遂げ、ドラゴンズに入団後は高卒ルーキーとして開幕スタメンを勝ち取り、新人王にも選ばれた。そのポジションこそ“ショート”。その後、故障などもあって外野を守ったことがあったが、そこから復帰した内野のポジションはセカンド。それが川上分析「二遊間に注目」の根拠だった。二遊間は、野球で大切なセンターラインの要(かなめ)でもある。落合博満監督が築いた黄金期のセカンド荒木雅博、ショート井端弘和の通称“アライバコンビ”を思い出せば、それは一目瞭然だろう。

二遊間を固定できなかった誤算

「サンデードラゴンズ」より阿部寿樹選手(C)CBCテレビ

残念ながら、立浪ドラゴンズの二遊間が定まらない。シーズン前は「サード石川昂弥」を念頭に、セカンドにはサードから移動する高橋周平選手、ショートは選手会長でもある京田陽太選手、こんな構想だったはずだ。しかし、けがと不振による思わぬ事態によって、立浪采配の根幹は度々の変更を余儀なくされた。開幕直前の高橋選手のけが、それは代わりにセカンドに入った阿部寿樹選手の勝負強い活躍によってカバーできた。しかし、その後に数々の激動が訪れた。京田選手の2軍落ち、根尾昂選手の外野から内野へのコンバートと投手への再コンバート、石川選手の足の大けが、阿部選手のコロナ感染、控えの溝脇隼人選手と三ツ俣大樹選手の活躍があったが、一体、何人の選手が二遊間に関わったことだろう。これでは、落ち着いた戦略も立てられず、思うような采配もふるえないだろう。大きな誤算だった。

3番打者が入れ替わる誤算

「サンデードラゴンズ」より石川昂弥選手(C)CBCテレビ

次なる誤算は不安定なクリーンアップ、中でも「3番」が全く固定できなかった。3番という打順が重要なのは、まず初回の攻撃で必ず打席が回ってくるということだ。1、2番が出塁していれば、一気に先取点を奪う確率も高い。さらに4番につなぐ役割も求められる。ヒットもホームランも打てる、そんな好打者を置きたい。開幕戦で、大ベテランの福留孝介選手を「3番」に起用したところから、彷徨い(さまよい)が始まったというのは言い過ぎだろうか。ペナントレースを迎える時点で、実は確固たる「3番」候補者がいなかった裏返しなのだ。前半戦で最も適役だった「3番」は、実は石川昂弥選手だったと思う。数々のタイムリーにホームランに、高校時代から慣れた打順で、20歳の3番打者が躍動した。しかし、残念ながらその期間は短かった。

石川離脱という最大の誤算

前半戦の最大の誤算は、その石川選手がけがによって離脱したことだろう。5月27日の交流戦オリックスバファローズ戦の走塁で負った「左膝前十字靭帯不全損傷」という重傷、その後、手術も受けた。復帰まで早くても1年かかると見られている。実は立浪ドラゴンズの象徴は、石川選手だった。「サード石川昂弥」を軸として、春季キャンプからチーム作りは進んできた。その打撃力、明るさ、そして若さ、残念ながらすぐに代わりになる選手はいなかった。石川選手がチームを離れた後、交流戦最後の6連戦で、千葉ロッテマリーンズと北海道日本ハムファイターズに6連敗したことが、致命的だった。背番号「2」の長期離脱こそ、立浪新監督が1年目で背負った最大の試練だった。

ベンチの歯車をかみ合わせる大切さ

「サンデードラゴンズ」より(C)CBCテレビ

残り54試合となった後半戦へ。先発陣に不安定さは残るが、鉄壁のリリーフ陣は健在である。前半戦で決められなかった「二遊間」と「3番」を固定できるか。幸い、課題のショートには2年目19歳の土田龍空選手が、その守備力をアピールして起用され続けている。「新しい戦力をどんどん起用する」という監督方針は、貫いてもらいたい。若い選手は時に“大化け”してチームに勢いを与えるからだ。また、前半戦ここまでの戦いを見ていて、立浪監督の勝利に向かう“熱”と、選手たちのプレーの“技量”に微妙なズレを感じることが度々あった。この歯車をかみ合わせることも大切だろう。戦うベンチに温度差は不要である。

首位を走る東京ヤクルトスワローズ以外のどのチームにも、クライマックスシリーズ出場のチャンスは十分にある。ドラゴンズは、新型コロナの影響で前半戦最後の3連戦がなくなり、思いがけない時間もできた。しっかりと戦略を練って、後半戦のスタートに向かってほしい。ここからがいよいよ“立浪竜の逆襲”である。
                                     
【CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】

※中日ドラゴンズ検定1級公式認定者の筆者が“ファン目線”で執筆するドラゴンズ論説です。著書に『愛しのドラゴンズ!ファンとして歩んだ半世紀』『竜の逆襲  愛しのドラゴンズ!2』(ともに、ゆいぽおと刊)ほか。

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