今年のサンマの味と値段は?まさかのウクライナ情勢が影響する理由

今年のサンマの味と値段は?まさかのウクライナ情勢が影響する理由

サンマの水揚げの便りが届くようになった。宮城県の気仙沼港には、青森県の八戸沖で獲れたサンマおよそ5トンが到着。記録的な不漁で、初水揚げが1トンにも満たなかった1年前の2021年に比べると上々の初日となったそうだが、大きさは1匹80グラムと小ぶりだったようだ。ここ数年、秋の味覚サンマが食卓に届くまでに“異変”が起きている。

サンマは今年も小ぶり

サンマの漁獲量は、1990年以降はおよそ20万トンから30万トンで推移してきたが、数年前から減り始めて、2019年には4.5万トンと過去最低になり、その後、2020年は2.9万トン、2021年は1.9万トンと、ついに2万トンを割り込んでしまった。水産庁は2022年7月末にサンマ来遊量についての予想を発表したが、それによると、2022年の漁獲量は過去最低だった1年前を上回るものの、平年よりは低い水準という。大きさも1匹100グラムから110グラムと小ぶりとのこと。かつて生サンマと言えば、体調30センチにも達するかという大きさで、重さも200グラムほどの立派なものだったことが遠い昔のように感じられる。

漁に押し寄せた新たな問題

ここ数年、サンマは不漁に悩まされてきた。中国などの外国船によって早めに獲られたり、地球温暖化によって稚魚が十分に成長しなかったり、泳ぐルートが変わったり、様々な要因によって影響を受けてきた。そんな中、2022年のサンマ漁に影を落としそうな新たな事態が起きている。ウクライナ情勢と石油高騰である。

ウクライナ情勢と石油高騰

CBCテレビ:画像『写真AC』より「ウクライナ情勢」

水産庁によると、9月いっぱいの漁場は、北方領土の択捉島の東にある公海や、排他的経済水域(EEZ)の境界線近くになるという。日本列島に比較的近い三陸沖に群れがやって来るのは10月下旬になる見込みで、例年よりも1か月近く遅くなりそうとのこと。漁場が遠いとなると、漁船はそこまで行かなければならないが、ロシアによるウクライナ侵攻によって日露関係が緊張状態のため、国境付近にはあまり近づきたくない漁船が多いそうだ。そして、そこに長く続く石油の高騰が拍車をかける。遠くの海に行くということは、船の燃料も余計にかかる上、世界的な原油高によって燃料費は高い。ウクライナ情勢と石油高騰で漁に行かなくなるということは、サンマの漁獲量は減り、当然のように値段も上がる。かつて、日本が世界のサンマ漁獲量の7割を占めていた時代が懐かしい。

美味しいサンマを待ちながら

CBCテレビ:画像『写真AC』より「サンマと大根おろし」

サンマの塩焼きは、秋が深まっていく中でたまらなく美味しい。脂ののった身を大根おろしと共に頬張る瞬間に、季節を感じるという人も多いことだろう。また大きく膨らんだ腸(はらわた)も酒の肴には格別である。しかし、どうやらサンマの「少ない」「小さい」「高い」という三拍子ならぬ三重苦は続きそうな気配である。海の環境が少しでも変わって、列島近くにサンマの大群が押し寄せてくれる日が、一日も早く訪れることを願うしかない秋かもしれない。
          
【東西南北論説風(372)  by CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】

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