なぜ?旧日本軍の人体実験がテーマの映画『731』が公開延期へ

中国で公開予定だったある映画が、急遽公開延期となりました。その映画のタイトルは『731』(監督:趙林山)。公開3日前になってなぜ上映を取りやめてしまったのでしょうか?7月30日放送のCBCラジオ『つボイノリオの聞けば聞くほど』では、つボイノリオと小高直子アナウンサー、重盛啓之アナウンサーがこの件について話題にします。
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『731』がタイトルにちなんで7月31日に公開される予定でした。
広告からも「7月31日公開」の文字が消えてしまっているとのこと。
さらにチケット購入アプリでは公開日が「7月31日」から「2025年内」に変更されているようで、突然すぎる公開延期に戸惑いの声が挙がっています。
映画の内容は、日中戦争中に旧満州(現在の中国東北部)に滞在していた旧日本軍の「731部隊」について明らかにするというもの。
「関東軍防疫給水部」とも呼ばれた731部隊は、旧満州で細菌兵器を製造し、人体実験を行なっていたとされています。
今年中国では「抗日戦争勝利80年」として各地で記念イベントが開かれていますが、延期の背景には日本との関係悪化を避け、反日感情を煽らないよう配慮があったものと思われています。
被害者であり、加害者でもある
つボイ「私たちとしても、どんな内容が描かれているのか興味がありますよね」
重盛「『731部隊』と言いますと、森村誠一さんが『悪魔の飽食』という作品の中で書いて、それが大ベストセラーになったので広く知られるようになりましたよね」
『悪魔の飽食』は、小説家森村誠一氏によって書かれた1980年代の著作です。重盛は大学生の頃に読んで、その内容にとてもショックを受けたそう。
その後アナウンサーとなった重盛は、CBCテレビ『ニュースワイド』でキャスターをしていた頃、731部隊について森村誠一氏に取材した経験があるとか。
重盛「そのインタビューの中で『どこの国においてもそうだが、戦争というのは被害と加害の両面がある。その両面をしっかり記憶に残して、教訓にしなくてはならない』とおっしゃっていて」
その言葉が今でも強く心に残っているという重盛。
重盛「日本でも戦争によって本当に多くの方が亡くなっていますけど、その日本によってとても苦しんだ方たちがいるという事実。被害と加害両方のことを忘れてはならないと思います」
事実は何か
小高「映画の内容も気になりますけど、題材にしたということなので、ドキュメンタリー的な要素が一体どこまであるのか、という部分は気になりますね」
事実を基にした映画につきものなのは、どこまでがノンフィクションでどこからがフィクションなのか、ということ。
小高「やはり公開されれば、それによって中国の人達の感情は左右されちゃいますよね。そういうことを考えると、実際に起こった出来事っていったい何だったんだろうって、まずは私たちが知る必要がありますよね」
本作品は特に過激な描写や直接的な暴力シーンが多いようで、中国で予告編が公開された時も、「全編の公開は不適切」との声もあがっていたとか。
そのため中国国民の対日感情が一層悪化することが懸念され、中国在住の日本人も不安を露にしていたようです。
歴史と向き合う
小高「本来は日本人として、我々がしっかりと事実を把握しておかないと」
歴史的に何があったのかを明確に知ることができるよう、記事やインタビュー、ドキュメンタリーが、もっと広く周知されるべきであると説く小高。
つボイ「一部では『731部隊はなかった』という発言をする人もいましたからね。森村さんも小説を書くにあたって随分いろんなことを調べたでしょうし、事実がなかったらどこにも証言もないし」
小高「まだ生存していらっしゃる関係者の方のインタビューなんかもあるみたいですしね」
「中国人捕虜に対する細菌兵器の使用や人体実験」という内容は、我々にとっても非常にショックです。だからこそ事実を知る必要があるのではないでしょうか。
今回映画の公開は延期されましたが、中国で再び公開となる前に、日本人として一度歴史を紐解く必要があるのかもしれません。
(吉村)
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