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江戸の下級武士の赤裸々な記録!禁断の日記『鸚鵡籠中記』

江戸の下級武士の赤裸々な記録!禁断の日記『鸚鵡籠中記』

CBCラジオ『北野誠のズバリ』の「松岡亜矢子の地元に聞いちゃうぞ」のコーナーでは、今から300年以上前に書かれた、尾張藩の下級武士の日記『鸚鵡籠中記』(おうむろうちゅうき)を紹介しました。この日記は、内容がほぼ“週刊誌状態”で、当時の生活が赤裸々に記録されている貴重な史料です。

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記録魔の下級武士

この日記を綴ったのは、朝日文左衛門重章(あさひぶんざえもんしげあき)。畳の発注や管理、整備などを行なう「御畳奉行(おたたみぶぎょう)」を務める下級武士です。

毎日やらなければならないことも少なく、政治に関わるような仕事でもない、ありふれた武士でした。

しかし唯一、他の人と違っていたのは、無類の記録マニアだったことです。18歳から亡くなる前年までの26年8か月、毎日欠かさず日記を書き続けました。

帳面の数で言うと37冊。40代で亡くなる前年まで生涯書き続けたのです。

内容は、日頃自分の身の回りに流れてくる噂話や殺人事件、盗難事件などから、天気まで細かく記録されています。

ありのままを、オウム返しのように書き綴ったことから、籠に入ったオウム『鸚鵡籠中記』と名付けたといわれています。

本音だらけの禁断日記

他人に見せるつもりのない文章だけに、内容は本音で好き放題書かれています。
武士の身分では本来、藩の悪口など書くべきではないのですが、日記だからと遠慮なく記録し、「藩主の生母が浮気三昧だった」ということまで全部書き綴っていました。

亡くなってから日記が見つかった際に、その赤裸々な内容から「決して世に出してはいけない」ということになり、結果的に昭和中期、戦後20年まで誰の目にも触れることはなかったのです。

町民目線や下級武士目線で当時の生活をリアルに記した長期間の記録はほかに存在しないことから、研究者や作家が掘り起こし、それぞれお気に入りの事件やワイドショーのような噂話にフォーカスして、本にまとめています。

浮気は暗号で記録

松岡のお気に入りのエピソードは、「下級武士、出張先で接待を受ける」という話です。

現代と違い、出張は1回につき2ヶ月ほどかかっていました。藩の命を受けて上方へ行くため、取引先の商人たちから「あごあしまくら状態」の接待を受けて、一銭も払わずに2ヶ月過ごせたといいます。

文左衛門は「芝居が見たい。料亭に行きたい。遊郭に行ってみたい」など、欲望の赴くままに要求していました。記録マニアの彼は、遊郭で自分のお気に入りの女性と過ごした夜についてもしっかり書いていましたが、自分にしかわからない変な暗号を使って記録していたそうです。

奥さんに見つかることを警戒したのでしょうが、それほど凝った暗号でもないため、松岡も読んでいるうちにパターンがわかって読み解けてしまいました。

本妻と妾の芝居小屋乱闘

『鸚鵡籠中記』によく出てくる話題として、「情けない男と気の強い女」という構図があります。気の強い女というのは「本妻対妾」「嫁対姑」など。女が小刀を持ち出して大乱闘する姿に、男たちがおろおろしている様子が書き記されています。

中でも強烈なエピソードは、「文左衛門が見に行った芝居小屋で、ある人のお妾さんふたりが大乱闘した」という話です。

先のお妾さんは以前から新しく入ったお妾さんが気に入らず、芝居小屋で見つけた瞬間から喧嘩を売りに行きました。新しいお妾さんも気が強く、着物をはだけさせながらその場で取っ組み合いの喧嘩が始まります。

お付きの人が慌てて必死にふたりを止めて外に出したものの、先のお妾さんがさらに追いかけて行き、路上で場外乱闘を続けました。

文左衛門は、松岡いわく「放送では言えないような」ひどい悪口雑言も全て書き留めており、芝居そっちのけで大乱闘を見物していたと記録されています。

今と似てる?世相も記録

また、大乱闘や浮気の話だけでなく、「米の値段が10倍に上がってしまった」「賭博に興じる者が多い。今日は何人捕まった」「幕府の悪政のせいで世の中がめちゃくちゃになっている」など、当時の世相も記録していました。

松岡は「今の時代と共通することが多い」と感じたといいます。

『鸚鵡籠中記』は気取りのない元禄時代の記録として、当時の生活を知る貴重な史料です。各出版社から様々な現代語訳が出版されています。

「なかなかおもしろいので、ぜひぜひ皆さん読んでみてください」と呼びかけた松岡でした。
(minto)
 

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